抱擁。

抱きしめたい、と思った。
ハグとかそういうのでなく、抱擁のような。
そしてそれは恋とか愛とか言うものでもなく、例えるなら酷く気分が悪い時に背中をさすって貰うような、そんな。

僕は誰にそうされたいのだろうと思った。
母?姉?妻?それとも知らない誰か?
答えはすぐに思いついた。
父だ。
父からそうされたかった。抱擁が照れくさいなら、握手とか頭をぽんぽんとか、そういうので良い。
そういうのでいいから、「心配かけたね、もう大丈夫ぞ」って力強く諭してほしい。

夢だろうか。
もう、そんな事さえ望めないのだろうか。

街は度重なる雨を受け容れて、季節を春に変えようとしている。
僕ら家族の中に吹き荒れる冷たくて厳しい風や雨も、今をピークにじんわりと止み、濡れた地面を太陽が乾かすように、と祈る。

そしたら僕は、父と抱擁しよう。泣きながら、笑いながら。

2018.3.3

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