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『キングダム エクソダス〈脱出〉』感想メモ。

前作の感想はこちら。

感想は、鑑賞しながら右手でとったメモをもとに、再構成しています。
物語の設定など、思い違いをしている部分があるかもしれません。記事をご覧になるさいには、善も悪もあることを心得よ🤟


第9話 ハーフマー

25年ごしの続編。主要キャスト数名が亡くなるほどのブランクを、監督はどう埋めるのか。『キングダム エクソダス』の主人公は、前作でスウェーデンからやってきたヘルマーでも、仮病使いのドルッセ夫人でもない。カレンと呼ばれる夢遊病患者のおばさんだった。新キャラである。

しかもドラマはカレンが、自宅で『キングダム』のDVDを鑑賞しているというメタから入る。ラストを見終わり「これじゃオチがないわ…」とつぶやいて、ドラマのオチを確認しにいくため、キングダム病院へと向かうというオープニングで始動する。のっけから全開すぎる。すげぇドラマだ。

カレンが外に出ると、かぼちゃの馬車よろしく外にタクシーが待機しており、それに乗り込むと、冥界下りの様相でキングダムへとたどりつく。カレンが病院の回転扉をくぐり抜ける瞬間、色調がセピアへ変わっていく! 25年待たされたファンはここでテンション爆上がりだと思います。そして前回いい忘れてたけど、『キングダム』は雰囲気が『サイレントヒル』っぽい。この病院へ入るシーンも、サイレントヒル的で、だんだん異世界へ侵入していく感じがそれ。トリアー監督はたしか(『ドッグヴィル』だったと思います)メイキング映像で『サイレントヒル』をプレイしているみたいな発言を聞いたことがあるので、前作はともかく(キングダムの方がサイレントヒルより先)今作では、影響も多少あるかもしれません。

そしてOPへ。25年経ってもかわらない主題歌。キングダッ〜♪

いったん物語は、カレンからキングダム病院へ。ヘリでスウェーデンから名医がやってくるらしい。まさか。ヘルマーの息子、ヘルマーJrである

父と同じくスウェーデンを愛し、スウェーデンを誇る男で、デンマークを軽蔑する男。1話目は、まだ「笑顔だ 笑顔だぞ」と、愛想をふりまく余裕もあったが、しだいにデンマークに対する憎悪を露出させていく。オフィスに、届けられた家具がIKEAだったことに狂喜乱舞するシーンは、爆笑する。『ファイトクラブ』でもIKEAがいじられてたの思い出す。岡山はIKEAが一店舗もないデンマーク以下の国なので、家具の品質がどんなもんかはわかりません。

今作ではスウェーデンvsデンマークのディス合戦が、露骨に強化されていて、誰がいったか『翔んで埼玉』かよ、という感想があまりに的を得ている。翔んでデンマーク。

ヘルマーJrは、キングダム脳神経外科の新人歓迎の儀式に巻き込まれ、お互いにデンマークとスウェーデンで有名作家の名前を挙げていって、よりビッグネームを出したほうが勝ち。負けたほうは酒を一杯飲むというゲームになる。🇩🇰アンデルセンvs🇸🇪ストリンドベリとか、交互に名前を出していく。一番ウケるのは、🇩🇰カール・Th・ドライヤーvs🇸🇪イングマール・ベルイマンを、どっちも退屈な映画を撮る監督だが……みたいにディスるところ。笑 どっちも好きだよ俺は。こういうギャグをかましつつも、13話目でおもいっきりベルイマンの『第七の封印』のオマージュをやってたりする。笑

勝負に負けて酒にベロンベロンに酔ってしまったヘルマーJrは、ハーフマーというあだ名をつけられてしまう。

そしてカレンですが、前作の主人公ドルッセ夫人には霊能力があったのに対して、カレンにはテレキネシスが備わっているようです。パッシブな発動条件ですが、プチポルターガイストを起こすことができるようです。(でも後半、特にこの能力活用されてないような…)カレンはドルッセ夫人の後を継ぎ、ブルザー(本名はバルダーだが、ドルッセ夫人の息子役の男に似ているため、その役名であるブルザーがあだ名になってしまった)男とともに、病院内の探索を行います。コンビ再結成です。二人は、前作でユディットが産み落とした息子である、通称リトルブラザーを探し、キングダムの呪いを解くことに。

エンディング。また監督の挨拶があるのか!?と思ったら、ちゃんとあった。でも、虚栄心に満ちた若いころのように人前に出て喋ることができないので、カーテンの後ろから喋りかける監督。しおしおな感じ。

前作に登場していたダウン症患者らしき皿洗いの二人は、なぜか片方がロボットに。

第10話 学会のダンス

トリアー作品の常連であるウィレム・デフォーが出演。歩くたびに蝿の音をさせる悪魔として登場する。最初かれがベルゼブブなのかと思ったが、いやそうなのかもしれないが、とにかく大公グラン・デュークと呼ばれる。フクロウに変身したりもできる。

ハーフマーは初日から、スウェーデンいじりを受けてしまい、意気沮喪するが、SAというスウェーデン人医師たちによる地下組織に勧誘され、グループのセッションに顔をだします。別に地下組織くらいキングダムには当たり前。

カレンは、脳神経外科にハッカーの協力を得て、偽造カルテで潜入しますが、ネイヴァーという医師に絡まれて、前頭葉を切除するハメに。しかし、ハーフマーがポリコレに配慮したカルテを作らせた結果、ブルザーが別の患者のカルテと取り違え、カレンは前頭葉を切除するのではなく、電極を埋め込まれてしまう。(リモコンスイッチで電流が流れる仕組み)他にも宇宙が感じている痛みの総体とコンタクトしようとする医学生たちのグループにも絡まれ、脳に電気ショックを受けたりもします。

ハーフマーは同じスウェーデン人の同僚である女性から、なぜか度々セクハラを受け、それをかれのせいにされてしまいます。ハーフマーは女子トイレの一角で開業している弁護士のもとに相談などしに出向くのですが、これはヤバイ。トリアー監督といえば、ビョークにセクハラして訴えられたこともある人で、この後も続くハーフマーのセクハラ冤罪の、疑似ドキュメント感はヤバイ。ヤバすぎるよ。

前作の登場人物の一人であるリーモア(ヘルマーの愛人)が再登場し、片足を失った患者として入院していた。ヤホー!が口癖。ハーフマーは彼女から、父の遺品のありかを聞き出して、デンマークの地に埋葬された父を発掘しようとする。ついでに使ってなかった父のロッカーから、ゾンビ薬の解毒薬も入手します。まだあった笑。リーモアは父をスウェーデン式に埋葬したと言いますが、スコップで掘り起こしたら、ヘルマーの遺灰がテトラパックに収められている笑。スウェーデンギャグ

第11話 ビッグブラザー

前作でヘルマーの医療ミスで被害にあった少女モナは、運搬リフトで闇のなかに運ばれていき、以来消息不明だったのですが、カレンが勇敢にもモナの後を追って運搬リフトに乗り込む。リフトは別次元と接続しており、通路に肉の襞のようなものが張り巡らされいる。やっぱりサイレントヒルなのか。リフトがたどり着いた場所は、かつてキングダムが存在する前にあった、洗濯池だった。そこで、行方不明だったモナと、ドルッセ夫人の遺体、ユディットの息子リトルブラザーと邂逅する。リトルブラザーは今や遥に巨大化し、頭部のみが池から顔を出しているという有様で、ビッグブラザーと名称を改めている。ビッグブラザーはキングダム病院と一体化していて、死者の国の門番をしているという。かれの心臓が病院内に存在し、それを治療しなくてはならないらしい。あ、そうそうユディットは生きていて、息子とちゃんと再会を果たします。泣けるシーンなのかな?

ポリコレカルテを製作して、オペを混乱させたハーフマーはネイヴァーに殴り飛ばされてしまい、その件で内部裁判が開かれる。そこに集められた阿片窟の老人たち(後述)。なぜかブレランのロイ・バッティのセリフを口走るのですが、詳細は不明。

カレンはビッグブラザーの心臓を手術するために、阿片窟へ。阿片窟は、一線を退いた医師たちが、余生を快楽漬けで過ごすための部屋で、そこにはゾンビ化したままのクロウスホイがいた。25年越しにゾンビを解毒したクロウスホイは正気に目覚め、ビッグブラザーの手術を行う。しかし、ビッグブラザーは心停止してしまい、摘出した腫瘍からはキングダム病院のミニチュアスノードームが出てくる。

第12話 バルバロッサ

ハーフマーはSAで、バルバロッサ計画という、平たくいえば病院内でタチの悪いイタズラをデンマーク人にしかけるという、サボタージュ工作を立案し、実行に
うつす。『ファイトクラブ』のメイヘム計画に匹敵する妙案だと思います。
しかし、ファイトクラブ同様、イタズラは誰にも相手にしてもらえません。最終的にハーフマーは拳銃を入手し、単騎デンマークに反旗を翻します。ミーティングの最中に、拳銃を取り出したハーフマーは病院長にそれを突きつけ、引き金を引こうとする。しかし、うっすら予想はしていましたが、その拳銃はただの水鉄砲であることが判明。そしてその後、別のキャラがまた拳銃を持ってくるのですが、そっちは本物だったというギャグもしっかり入れてくる。

カレンが、モナに再び文字が書かれたブロックを渡し、ヘルマーを告発する文章の続きを書かせるのですが、ついにその内容が明らかになる。その衝撃の内容は、ぜひドラマで観ていただきたい。完全に腹筋をやられます。

『エクソダス』も5時間くらいの内容を1日で消化したため、後半になるにつれてメモの内容が希薄になっていく…。疲れてきた。

第13話 エクソダス

悪魔が放ったドッペルゲンガーによって、ユディットが殺されてしまう。ドッペルゲンガーは、カレンとブルザーにも存在し、お互いが触れたら最後、存在が消滅してしまう。さらに着々とキングダムの呪いを解除しようとするカレンたちに、大公(ウィレム・デフォー)は場を無重力化して妨害する
ここらへんの映像の感じ、ちょっとタルコフスキーっぽいです。

カレンたちはサロモンという霊を、病院の屋上で購入して、そいつから居場所を聞いて、かつて洗濯池があった場所を地図で探します。
ナゾナゾみたいなものを解いていって、儀式を進めていいくのは、本当にサイレントヒルっぽい。しかし、儀式は大公の手下の謀略によって、失敗し、霊たちを昇天させるはずが、逆に死者の国の門が開け放たれてしまう。カレンはそこから、逃亡し、ブルザーに振り返ってはいけないというが、ブルザーは振り向いてしまい塩の柱にされてしまう。旧約聖書におけるソドムとゴモラの街をあとにするロトの話を下敷きにしたものでしょうが、なぜに?

カレンは自宅に帰りつき、ベッドに戻ると、突然そこから炎があがり、焼け死んでしまう。
ハーフマーは、デンマークからセクハラで訴訟を受けている女とともに脱出しようとしますが、スウェーデンに向かう橋で、巨大な石像に阻まれ、車をクラッシュして、死んでしまう。
大公は、地獄からさらに高位の悪魔をヘリコプターで召喚し、悪魔たちは復活するという最悪のバッドエンドで、ドラマ『キングダム』は幕をとじる。

ラストカットはデンマークの残念観光名所、アンデルセンの人魚姫像が映し出され、トリアー監督の“全ては盗まれた”という文言で締め括られる。

全体レビュー

『キングダム』シリーズ。とりあえず最後まで鑑賞してみましたが、確かに25年前の謎のいくつかを回収して、一応は物語を決着させたのは素晴らしいです。シンエヴァ的な感じ。
しかし、物語を決着させるために、いくつかのキャラクターの処理が雑なのは、まあ仕方ないか。ブルザーとボンド教授はあっさり死亡していて、伏線もなにも消滅している。

それでも不条理なブラックコメディにオカルトが融合した作風は、自分の好みのど真ん中を撃ち抜いてくれたようで、気持ちがよかった。
いちばん思ったのは、この人はシリアスなドラマよりコメディを撮るときに、はるかに才能を発揮するということ。
現状これがトリアーの最新作というわけですが、次作は何を撮るのかしら。

そういえばこのドラマ、デンマークで視聴率50パーセントという触れ込みではあったのですが、よく調べるとデンマークには放送局が少なく、チャンネルが2つ3つしかないようです。それで50パーセントというわけでした。ヒットしたのは間違いないですが。そう考えるとチャンネルが多い日本のテレビというのは異常なのかもしれない。2つで十分ですよ。

作品の解釈について、いろいろ考えてみたりしたのですが、結局これはただの爆笑コメディなのではないか。という身も蓋もない結論に落ち着きました。

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