キップル

99年生まれ。SF小説と映画を楽しむ者。読んだ本の書評と劇場鑑賞した映画の時評で遊んで…

キップル

99年生まれ。SF小説と映画を楽しむ者。読んだ本の書評と劇場鑑賞した映画の時評で遊んでいます。好きな作家は伊藤計劃、ジョン・ヴァーリィ、ウィリアム・ギブスンなど。映画監督だと、ドゥニ・ヴィルヌーブ、スコット兄弟、押井守などです。小島秀夫監督なども好きです。

マガジン

  • 映画時評2024

    2024年に劇場公開した映画のレビュー記事をまとめたものです。

  • 《書評》SF小説

    “テクノロジーが社会と個にどのような作用を及ぼすのか、そして社会はテクノロジーをどのようにかたちづくるのかというダイナミクスのもつ面白さ”

  • 映画時評2022&2023

    2022年10月から2023年12月に劇場公開していた映画の感想記、時評をまとめたものです。

  • マンガ体験記

    洋の東西を問わず、マンガ、コミック、バンド・デシネ、なんでも読んだ感想をここに置いておきます。

  • 《書評》ノンフィクション

    小説じゃない本でも、娯楽として読むよー。

最近の記事

色々見てきたけれどこの瞳は永遠にきらりだった『ソウルフル・ワールド』

この映画、公開は2020年ですがパンデミックのため、やむなく配信限定となり、劇場でかかったことのない映画でした。それが今年になって、同じく配信限定となった『私ときどきレッサーパンダ』『あの夏のルカ』とともに、劇場公開することになり、今作だけなんとか見ることができたので感想。 見事な映画だった。近年のピクサー映画の中でも屈指のクオリティ。 テーマに対するアプローチの明快さ、深度、ともにハイレベルな完成度で、見応えがあり、傑作だと思う。 僕はこの映画を、眠って見る「夢」と、憧れ

    • 20代男、BLを読む。

      前回好評を博したSFマガジンの『BLとSF特集』、その第二弾。 やっぱりというか当たり前かもしれないが、自分の部屋を見渡してもBL本は一冊も見当たらない。萩尾望都の短編集に、一個だけそれっぽいやつがあるが、それだけだ。 知識は皆無といってよい。なので特集記事で基礎から勉強することに。 そもそもBL、ボーイズラブというのは90年代くらいに“JUNE”とか“やおい”とか呼ばれていたものが、ボーイズラブに統一されたのが始まりとのこと。 初期はまだジャンルが未分化で、活字媒体では、

      • 最近の映画はなぜ長いのか【映画時評】『デューン 砂の惑星PART2』

        原作は1965年出版のフランク・ハーバートによる小説で、幼いときにこれを読んだ監督が、ずっと映像化したいと心に念じていた一作である。 過去に二度の映像化と、一つのボツ企画が立ちあがったことがあり、初めは1976年に『ホドロフスキーのDUNE』として結実するはずだったが、未完のプロジェクトとなってしまった。 ホドロフスキーといえば、『エル・トポ』や『ホーリーマウンテン』といった、シュルレアルなアート映画を撮る監督で、その監督が急にSF超大作を撮るという暴挙に出るわけですが、こ

        • ひとりぼっちの宇宙交流『中継ステーション【新訳版】』クリフォード・D・シマック

          『中継ステーション』は『デューン 砂の惑星』(雑誌連載版)とカート・ヴォネガットの『猫のゆりかご』などを押しのけて、1964年のヒューゴ賞長編小説部門に選ばた小説で、錚々たるメンツを下した当時の傑作です。 著者のクリフォード・D・シマックはアメリカのウィスコンシン出身で、緑の裾野が広がる大自然のなかで生まれ育ち、新聞記者をしながらSF小説も執筆していたという人物です。 『中継ステーション』もかれの生まれ故郷であるウィスコンシンが舞台の小説で、SFとは似つかわしくない、牧歌的

        色々見てきたけれどこの瞳は永遠にきらりだった『ソウルフル・ワールド』

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        • 映画時評2024
          2本
        • 《書評》SF小説
          20本
        • 映画時評2022&2023
          43本
        • マンガ体験記
          2本
        • 《書評》ノンフィクション
          7本
        • 主流文学
          1本

        記事

          これは読むドラッグであrrrrrrr。『ソフトウェア』『ウェットウェア』ルーディ・ラッカー

          そもそもラッカーとの出会いは、伊藤計劃先生が影響を受けたサイバーパンクの作家の一人ということで、いつか読みたいと思っていたのが始まり。 それが去年の年末くらいに、岡山の丸善で、ゲリラ的に開かれていた古本市でたまたま、『ソフトウェア』と『ウェットウェア』を見つけ、購入。読んでみたというわけです。そのときの古本市の様子を写真に撮らなかったのは一生の不覚。テンション上がりますよねー古本市。 他にもハヤカワ文庫を探してストルガツキーの『波が風を消す』なんかも発見。ラッカーもストルガ

          これは読むドラッグであrrrrrrr。『ソフトウェア』『ウェットウェア』ルーディ・ラッカー

          ここ最近マンガを描いていて忙しかった

          『哀れなるものたち』の記事を最後にぱったり更新がとだえ、2ヶ月なにも更新しませんでしたが、マイジョブに勤しんでおりました。 というわけで、2月3月は、ひたすらマンガ。寝ても覚めてもマンガ、夢もマンガという状態だったので、ギャスパー・ノエの『ヴォルテックス』もカウリスマキの『枯れ葉』も、リバイバル上映の『ヘルレイザー』と『戦場のピアニスト』も見に行けませんでした。泣 ですが『ゴジラ−1.0』と『ボーはおそれている』は見たので、短評を後で記事にします。ちゃっかり二本は見ている

          ここ最近マンガを描いていて忙しかった

          映画時評『哀れなるものたち』

          去年から楽しみにしていたヨルゴス・ランティモスの新作。かれの過去の映画を見ていて感じたのは、キューブリックのような、ドライで突き放した人間描写と、皮肉っぽいユーモアで、ギョッとする映画が多いことだった。『女王陛下のお気に入り』と『聖なる鹿殺し』を初めにみたものの、これははずれだった。それからしばらくして『ロブスター』を観たとき、この監督のことが好きになった。『ロブスター』はラブ(ブラック)コメディとでもいいたい、ディストピア世界で繰り広げられる、バチェラー争奪戦で、独身者は4

          映画時評『哀れなるものたち』

          『キングダム エクソダス〈脱出〉』感想メモ。

          前作の感想はこちら。 感想は、鑑賞しながら右手でとったメモをもとに、再構成しています。 物語の設定など、思い違いをしている部分があるかもしれません。記事をご覧になるさいには、善も悪もあることを心得よ🤟 第9話 ハーフマー 25年ごしの続編。主要キャスト数名が亡くなるほどのブランクを、監督はどう埋めるのか。『キングダム エクソダス』の主人公は、前作でスウェーデンからやってきたヘルマーでも、仮病使いのドルッセ夫人でもない。カレンと呼ばれる夢遊病患者のおばさんだった。新キャラ

          『キングダム エクソダス〈脱出〉』感想メモ。

          【後編】ラース・フォン・トリアーの『キングダム』にハマる。季節外れの感想メモ

          前編はこちらです。お先にどうぞ。 前回のあらすじを簡単に整理すると、デンマーク、コペンハーゲンのキングダム病院は、かつて洗濯職人たちが布を洗い清めるために使っていた洗濯池があった場所に立っており、そこで死者の国の扉が開かれようとしていた。 そんな幽霊病棟にやってきたのは、スウェーデン人のヘルマー主任医師。 かれはいま、モナという少女の手術ミスを責められていて、カルテをなんとか隠蔽しようとしています。 しかし、クロウスホイという若い医師にカルテを奪われます。そこでヘルマー

          【後編】ラース・フォン・トリアーの『キングダム』にハマる。季節外れの感想メモ

          【前編】ラース・フォン・トリアーの『キングダム』にハマる。季節外れの感想メモ

          U-NEXTに独占配信としてラース作品の数々が、ポイント視聴とはいえ、陳列し始めたので、少しずつ見ている。 そのなかの『キングダム』というドラマシリーズを視聴したら、存外に面白かったので感想を共有したいと思いました。 『キングダム』はデンマークで製作されたテレビドラマで、本国では脅威の視聴率50パーセントを記録し、社会現象になったそうです。国民的ドラマ?なの笑 内容は北欧の『ツイン・ピークス』とも例えられ、謎が謎を呼ぶ展開と、全く予想できないストーリーで観る者のド肝を抜き続

          【前編】ラース・フォン・トリアーの『キングダム』にハマる。季節外れの感想メモ

          映画時評『PERFECT DAYS』

          またもや周回遅れの感想になりますが、ヴィム・ヴェンダース監督の新作『PERFECT DAYS』を観てまいりました。結論からいうと、本作はヴェンダースの最高傑作ではないかと思います。 舞台は東京。押上のアパートに住む平山という男が主人公です。(偶然の一致ですが『東京物語』で笠智衆が演じる役も平山です)平山は渋谷区の公共トイレの清掃員をしていて、家族や恋人はおらず、閑かで慎ましい暮らしを営んでいます。そんな男の日々のルーティーンを描く映画です。 ほかの人の感想を漁ったうえで、

          映画時評『PERFECT DAYS』

          書評『シティ5からの脱出』バリントン・J・ベイリー

          これも去年からちょっとずつ読んでいた本の感想です。 読み途中の本は綺麗さっぱり年末に消化してこそ、気持ちのよい日の出が拝めるというのに……。 今年は2024年。ちょっとSFっぽい響きで興奮する。 せっかく年を新たにしたんだから、アイコンも変更。藤子不二雄先生っぽいミァハに。 「ねえトァン“地球はかいばくだん”って知ってる……」 「知らない、なに……」 「銀河を吹きとばすことができる破壊兵器。大災禍以前は、こうした秘密どうぐが平然とデパートで売られていたの。気がむけばセカイをほ

          書評『シティ5からの脱出』バリントン・J・ベイリー

          正月はこたつで『SFマガジン』を読んでましたという話。

          皆さんは正月をいかがお過ごしでしょうか。私はあいも変わらずこたつで読書でございます。今月も『SFマガジン』が出たようですね。 ミステリとSFの交差点ということですが、私はミステリというものに一向くわしくありません。なので今月号は残念ながらハズレの感を強くする次第でございます。 正月そうそうですが、世の中には不幸な事件が続き、SFマガジンも暗い話が多かったです。おみくじは『凶』でした。踏んだり蹴ったりです。餅でも食べましょう。 ここはすべての夜明け前 間宮改衣あらすじ 〈わた

          正月はこたつで『SFマガジン』を読んでましたという話。

          書評『冷たい方程式』トム・ゴドウィン他

          あけましておめでとうございます! 新年初読書というわけではなく、年末あたりから読み進めていた本の感想になります。本年もよろしくお願いいたします。 本作『冷たい方程式』は元々1980年にハヤカワ文庫から「SFマガジン・ベスト1」として出版された50年代欧米SFのアンソロジーで、そのなかの『冷たい方程式』があまりにも有名かつ人気になったため、新たに収録作品を組み直し、復刊したというのが本書です。といっても内容は『冷たい方程式』とアシモフの『信念』しかかぶっていないので、全く別物

          書評『冷たい方程式』トム・ゴドウィン他

          2023年私的ベスト映画ランキング&目録

          本ランキングは私個人の主観により選ばれた、2023年でもっとも印象的だった映画のランキングです。 客観的な完成度でランキングしたわけではなく、あくまで初見の、印象に残ってる順。二度見したら評価が変わるかもしれません。映画という存在は常に流動的なので。 ここに載ってない映画は、劇場で観なかった映画になります。本当は年内に『PERFECT DAYS』を観に行きたかったのですが、行けませんでした。来年見たら、このリストにそっと加えておこうと思います。 追記:加えました。(2024

          2023年私的ベスト映画ランキング&目録

          映画時評『ナポレオン』

          僕はリドリー・スコットのファンなので、新作公開となればもちろん劇場に駆けつける。それでも観るのが遅くなり、周回遅れになってしまった感がありますが、感想を残したいと思います。 観る前から、賛否両論ある感じが聞こえていたのですが、ファンなのでどんな内容でも全肯定しようという気持ちで座席に座っていました。 本作が今年最後に観る映画になると思います。『PERFECT DAYS』も観たかったですが、年始になりそうです。しかし年の最後を飾るのが『ナポレオン』というのは、ゴージャスでふさわ

          映画時評『ナポレオン』