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チェコ買い付け日記2023⑤「二度あることは」

オストラバへ向かっています。
オストラバはブルノから電車で約2時間。ポーランドのすぐそばで、街の端は国境までほんの200mほどしかありません。

いろんな街に行ってみたいと思い、今回はブルノからオストラバへ、プラハからはパルドゥビツェへ日帰りで行くことに決めていました。

行きの飛行機でチェコの作家をと思い、今回持って行ったのがミラン・クンデラの『冗談』。読み始めると、ブルノとオストラバが出てきて偶然の一致にびっくりしたのでした。
読みにくい本では、と身構えていたのですが、読み始めると意外と面白く(失礼)、帰国した時点で最後の10ページほどのところまで来ていました。なんとなくそのままになっていたのですが、先日ミラン・クンデラの訃報を聞き、やっと最後まで読み終わりました。

オストラバで降り立ったのはきれいで真新しく天井の高いガラス張りの駅舎でした。外に出るとガラスの奥に古い建物があり、古い建物を活かしつつ、新しい駅舎を増築したようです。
電車が着いたばかりだからか行き交う人も多く、各鉄道会社の窓口もわかりやすく並んでいて、明るく活気のある雰囲気です。

オストラバについて調べていると「昔は炭鉱で栄えたが…」という記述が必ず出てきます。そもそもオストラバについての情報が少ないのですが、その少ないところも、観光客が行くような街ではない、何もない街という情報を与えます。
さらに『冗談』でルドヴィークが労働をさせられた街としての描写も、その時の彼の心理と相まって、暗く陰鬱な印象を受けました。
そんなこともあって、電車を降り、駅の真新しさと人の行き交う様子を見た時には、正直にいうと意外でした。

駅前にはバスのロータリーがありますがバスではなくトラムで移動したいので、うろうろと探していると観光案内所があるのに気がつきました。窓口で行きたい古本屋の場所を示して行き方を聞くと、8番のトラムに乗って、この駅で降りれば良いと教えてくれました。トラムは少し先にあるホームセンターのところに駅があるそうです。ホームセンターまでは少し距離があります。街のターミナル駅なのに、駅前にトラムの乗り場がないことに少し不思議な気がしました。

古本屋を巡り、買い込んだ本を背中のリュックと両肩のバッグに担いでブルノに戻ります。
Googleマップで帰り道を調べると、どう考えても朝来た方向と逆の方向のトラムに乗るように表示されました。トラムを待っているお姉さんに聞いてみても、その方向のトラムに乗るようにと言われました。
こういう時、私は自分を信じると碌なことがないことを知っています。今まで何度もそんなことがあり、ほとんどの場合に自分が間違っているのです。言われた通りのトラムに乗りました。

ところが着いた駅は朝の近代的な建物ではありませんでした。
街の延長のような、広々としているけれど、がらんとしたロータリー。トラムから降りた人たちが歩いて行く方向についていくと、同じくがらんとした大きな駅の建物。でもきちんとOstrava hl.n.(オストラバ中央駅)と書いてあります。

朝着いた時は線路の反対側に出たのではないかと思い、わざわざ跨線橋を渡って見に行きましたが、どうやらそんなこともなさそうです。
本当に不思議で、ぽかんとするとはこういうことだろうという顔をしていたと思います。
ブルノまでのチケットを買いたいのですが、窓口がどこにあるかわからず、やっと見つけた窓口は電車の出発時刻の15分前まで休憩中と表示が出ていました。
まさに、来る前に私が想像していた通りのオストラバの駅です。

ようやくチケットを買って電車に乗り込み、1つ目の停車駅に着いたときに気がつきました。私はまた1つ手前の駅(Ostrava-Svinov駅)で降りていたのです。
「また」というのは、前回の滞在でプラハからブルノへ移動した際、ブルノ中央駅のつもりが1つ手前の駅で降りてしまったのです。(詳しくは前回の「チェコ買い付け日記⑲Brno-Kralovo Pole駅」https://note.com/syslovbooks/n/n5a36826564acをお読みください。)

全く学習していない私。そしてそのことに今まで気が付かない私。
もう覚えたぞ、とは思いますが、二度あることは三度あるので自分を信じるわけにはいきません。


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