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(36) 日産 Be-1/スーパーターボ(1988年)


日産Be-1にマーチRのMA09ERTエンジンとクロスミッションを搭載し、ヒルクライム競技やサーキット走行で活躍しました。

日産 Be-1/スーパーターボ(1988年)
所有期間 2002年10月~2017年5月

外部リンクに詳細を掲載しています。
https://www7b.biglobe.ne.jp/~k5855/be-1/be-1.html

<概要>
■Be-1について
昭和62年から63年までの2年間、限定1万台で生産された日産パイクカーシリーズ第一弾。
もともとはモーターショーで参考出展されたコンセプトカーであったが、その斬新さと懐かしさが融合したスタイリングと手軽でありながらも存在感のあるイメージが評価され、限定車として生産された。
ベースには初代マーチ(K10型)を用い、エンジンはノンターボ仕様のマーチをエンジンをそのまま流用する一方、ボディは部分的に樹脂パネルを採用するなど、ショーカーにほぼ忠実な内外装で市販された。
カラーバリエーションは発表当初は黄色、白、赤、青の4色で、ノーマルルーフとキャンパストップの2車種を用意。ミッションは5速マニュアルと3速オートマを用意した。
販売価格はパワステ/エアコン/カーステ無しのノーマルルーフで5MT/129.3万円であり、これは当時のマーチコレット(ほぼ同一装備のマーチ)の81.8万円に比べ割高であったが、発表と同時に注文が殺到し、約2ヶ月で完売となった。
また、月生産台数は当初400台であった(のちに600台に増産)ため、流通市場ではプレミアが付き、一時は300万円を越える価格で売買されるなど、その人気はとどまるどころか拍車をかけることとなった。
また、若い女性や若年層に支持されたBe-1は、Tシャツ、パーカー、バッグ、時計、財布といったグッズも販売され、青山には「Be-1ショップ」が開店、その知名度を一気に広げることとなった。
 
■マーチ・スーパーターボについて
平成元年にデビューしたマーチのホットモデル。 それまでマーチには「マーチターボ」というスポーティーモデルがラインナップされていたが、日産が国内ラリー向けに販売していた「マーチR」を流用する形で「マーチターボ」より更にスパルタンなモデルとして販売を開始した。
マーチスーパーターボは、その名前のとおり、「スーパーチャージャー」と「ターボチャージャー」のツインチャージャーエンジンであるMA09ERTを搭載している。
このエンジンは国内ラリーのBクラス(1600cc未満)に参戦すべく開発されたエンジンで、当時のレギュレーション(規定)でツインチャージャー搭載エンジンの排気量変換が1.7倍であったため、もともとの4気筒987ccエンジンをボアダウン(内径を細くする)して排気量を930ccとしている。(930cc×1.7=1581cc であるため、Bクラスとなる)
マーチスーパーターボは競技用というわけではないため、競技用車であるマーチRと異なった味付けをしている。
具体的には、ショックアブソーバ、スプリング、ギヤ比などであるが、これらを一般ユース向けにした反面、外観や内装などについては他のマーチと一線を画すスパルタンなものになっている。
(もともとマーチRはスーパーターボは後期型で、マーチRは中期型(外観や室内の品質が若干異なる)だったため比較しても始まらないが)
特にフロントフェイスは特徴的なデザインを採用しており、見るからにスパルタンなイメージを演出していた。

<実車紹介>
Be-1へのMA09ERTエンジン換装
Be-1(E-BK10)は初代マーチ(E-K10)と基本コンポーネントを共用するパイクカーであるため、最初に搭載されているMA10エンジンからマーチスーパーターボ(E-EK10)に搭載されているMA09ERTエンジンを載せ換えた車体は結構多い。
エンジンのマウント部や基本的な構成は同じであるため、ある程度の知識と設備があれば可能であるものの、実際の載せ換えでは、エンジンルームがマーチより狭いことや、電装系(ハーネス類)、バキューム配管関係をそっくり入れ替える必要があり、結構やっかいである。
このため、実際に載せ換える場合、中途半端にエンジン&補器類を移植するのではなく、エンジンルーム内をそっくり交換するイメージでおこなうと良いようである。
Beostの場合、エンジン載せ換えにあたり、エンジン本体&補器類だけではなく、燃料タンクやマフラーも一緒に移植している。
また、トランスミッション、デフケースもエンジン載せ換えの一環として一緒に載せ換えるのだが、このとき、ドライブシャフトがMA10とMA09ERTで異なるため、ドライブシャフトと共にナックルアーム&フロントブレーキASSYも移植することになる。
早い話、エンジンを載せ換えるというより、スーパーターボ(マーチR)にBe-1の車体を差し替えるといった感じになるようだ。
また、MA09ERTはターボ&スーパーチャージャーのため、ボンネット下にインタークーラーがあり、スーパーターボ(マーチR)のボンネットにはフードバルジが装備されている。
このため、インタークーラーがBe-1のボンネットに干渉するため、Be-1のボンネットにインタークーラーを逃げる加工が必要になる。
Be-1スーパーターボの多くはボンネットにフードバルジを設置するか、あるいはインタークーラーの位置を変更するなどして、ボンネットとの干渉を避ける処理をしている。
 
■エンジン換装に伴う改造車検
MA10SエンジンからMA09ERTエンジンに載せ換えることにより、エンジン型式は当初の「MA10」から「MA09」に変更になり、このままでは車検に通らない。
このため、Be-1スーパーターボではエンジン載せ換えに伴う構造変更の申請が必要になる。
実際の申請では、「原動機(エンジン)」、「動力伝達装置(トランスミッション、デフケース、ドライブシャフト)」の2種類について一緒に構造変更申請をすることになる。
もっとも、マーチスーパーターボ(EK10)とBe-1(BK10)はどちらもマーチ(K10)の同系車種であるため、その旨を記載することで比較的簡単に申請書を作成することができる。
Beostでは2004年3月、改造申請の提出&受理され、無事、車検を取ることができた。
ちなみに、構造変更した車体の型式は従来の「E-BK10」から「E-BK10改」となる。
 
■ミニサーキットでのスポーツ走行や、ヒルクライム競技で活躍
「インチキなBe-1」として、可能な限り外見をそのままに、中身を全力でスポーツ走行に振った仕様として、さまざまな仕様変更を繰り返しながら完成したBe-1スーパーターボ 通称「beost(ベオスト)」。
エンジンはラリー用に開発されたターボとスーパーチャージャーを両方搭載したMA09ERTエンジンをボアアップし、水冷インタークーラー化、インジェクター大容量化、点火タイミングと燃調保積をECU最適化によりカタログスペックに対しカタログ値110psに対しシャーシダイナモ測定で140ps以上(オーテックツカダで測定)。
機械式LSDとクロスミッションでエンジン特性を十二分に発揮し、足回りはビルシュタイン・エルシュポルトの車高調と非線形スプリングで非常に優秀な足回りにするとともに、ブレーキはRNN14の15インチキャリパとAPロッキードのスリットローターに変更。これらの足回りとヒルクライム競技に合わせたホイールアライメント値に変更した。
Sタイヤによりステアリングのアシストが必要であったため、アンフィニRX-7(FD3S)の電動ポンプ式パワステ用パワステポンプを流用し、ステアリングアシスト電圧をMR-2(SW20)のパワステコントローラを流用し、パオのパワステユニットを移植した。
オイルクーラーはマーチR純正を検討したが、容量確保のため社外品と搭載。エアコンレスにしたことでラジエターファンを追加することができて冷却性能を上げた。
内装は安全確保のためマーチレース用の9点ロールバーを装着していたが、これが後のミニサーキットでの転倒に際し効力を発揮した。
転倒事故により全損したが、Be-1を購入し、中身をそっくり差し替えたため復帰した。
また、コンピューターチューンの際に何度かエンジンブローをしたが、これについても予備のMA09ETエンジンを使って何度も作り直している。

Beostの動画を下記ニコニコ動画にアップしている。


フルバケっとシートに変更。サーキット走行時やヒルクライム競技では6点シートベルトを装着。改造申請で2名乗車に変更。9点ロールバーを設置。
カーボンボンネットをボディ色に塗装。エンジンルーム内は水冷インタークーラーが目を引きます
ダッシュボード上にEPROM(コンピューターチューン)のセッティングBOXとA/Fメーターを装着。O2センサーはワイドバンドに交換。
トランクルーム内にパワステ用電動油圧ポンプを配置
FD3Sのパワステポンプを流用しています。制御回路はSW20を流用
ぱっと見はフツーのBe-1です。色はEK11「2代目マーチ」の限定車に採用された「オパールラベンダー」に全塗装
マフラーはリアトーションビームの下を通したワンオフ品。貫通タイプのサイレンサーを出口から1mに配置し、低抵抗でありながら純正マフラー以下の排気音
MA09ERTエンジン。930ccを998ccまでボアアップし、タービンをEVCでコントロール。右の金色のタンクが水冷インタークーラー。レガシィRSから流用
水冷インタークーラーのラジエターはリアトランク下に配置し、電動ファンで空冷
コンピューターチューンは現物合わせのため、A/FモニターとEP-ROMトレーサーで監視しながら添加タイミングと燃調補正を実施。スーパーチャージャーコントロールもEP-ROMで最適化
ブースト計、油圧計、油温計、水温計を空調口に設置。エアコンはオイルクーラー設置のため撤去
パルサーGTI-R(RNN14)の15インチブレーキキャリパに変更し、APロッキード社製のスリットローターに変更
ショックアブソーバーはビルシュタイン・エルシュポルトの車高調に変更。スプリングはマーチR用のラリースプリングなど数種類から、ミニサーキット用に最適化
当初はインタークーラーが空冷だったためボンネットにフードバルジを設置していた
機械式LSDとクロスミッションに変更。その他、サーキット用途およびヒルクライム用途のため改装多数
スポーツランドやまなしでの1シーン。スポーツ走行時はTE37にSタイヤを装着

15年近く所有したこのクルマは思い出もたくさんあり、ヒルクライム競技やサーキット走行イベントなどで、たくさんの友人に巡り合うことができました。多くの人たちに良くしていただいてとても感謝しています。