薬剤投与レジメンの複雑性という複雑な問題

薬剤関連問題をめぐり多剤併用、いわゆるポリファーマシーも、重要なテーマと言えますが、服用する薬剤数のみならず、投与経路や服用タイミング、服薬頻度など、薬剤投与レジメンの複雑さもアドヒアランス低下につながったり、思わぬ有害事象につながる懸念があります。

薬剤投与レジメンの複雑さを定量化するためのツールとしてmedication regimen complexity index(MRCI)と言うものがあります。あまり日本ではなじみのないツールですが、大きく以下の3つのセクションから成っています。

・セクションA(剤形)
►投与経路(経口、局所、点眼、点鼻等)とその剤形(錠剤、液剤、スプレー剤等)
・セクションB(投与頻度)
►1日の服薬頻度やタイミング
・セクションC(投与に必要となる追加の作業)
►漸減、漸増、食事との関連、粉砕など

セクションごとに細かなチェック項目があり、それぞれの項目は重みづけによる点数配分がなされています。例えばセクションAでは錠剤/カプセルであれば1点ですが、液剤であれば2点となります。

チェック項目は65項目設定されており、スコアが大きいほど、より複雑なレジメンであることを示します。その信頼性はすでに論文化されており、現段階で妥当性の高い評価ツールと言われています。
Ann Pharmacother. 2004 Sep;38(9):1369-76. PMID: 15266038

[投与レジメンの複雑性がもたらすもの]

MRCIと患者予後の関連を検討した報告は少ないながら、徐々に蓄積されています。
地域医療の見え方2016.Jun.8;2(71)-ポリファーマシー問題、その薬剤数だけが問題なのか-)

例えば、薬物有害事象との関連では症例対照研究が報告されています。薬物有害事象で再入院した症例(92例)と同疾患を有し、再入院していない対照(228例)を比較したところ、再入院群、つまり症例群でMRCIスコアが有意に高かったという結果になっています。
Ann Pharmacother. 2014 Jan;48(1):26-32. PMID: 24259639
この他にも、もちろん……

ここから先は

1,883字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?