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【コラム】なぜ?に対する答えを知らずとも、僕たちは生活を豊かにできる

 医療や健康情報に対する素朴な関心は、「なぜ?」に対する答えではないでしょうか。マスメディアを賑わせている紅麹サプリメントの健康被害においても、原因として疑われているプべルル酸が、「なぜ健康に悪影響をもたらすのか?」という思考をめぐらすことは、極めて常識的な振る舞いのように思えます。
 一方で、「なぜ?」思考が見つめているのは、物事の道理であり、物事そのものではありません
 
 OTC医薬品の有効性についても、「なぜ効くのか?」という関心は根強いものです。しかし、治療に対する効果の大きさが論じられる機会は少ないように思います。どんな薬であれ、どんな食品であれ、端的には効くのです(それはしばしばプラセボ効果と呼ばれます)。
 「なぜ?」に対する答えは大事です。なぜなら、whyから始まる疑問は背景疑問だからです。

(参考)エビデンスを調べようとする前に行うべき2つのポイント

  一方で、実生活という観点において、「なぜ?」に対する答えは、ある種の概念にすぎず、より簡単な言葉でいえば「もっともらしい仮説」にすぎません。
 大事なことは、もっともらしい仮説を知らなくても、つまり物事の道理を厳密に知らずとも、物事に対する合理的な判断が可能であるということです。
 
 今回の【コラム】では、イギリス人医師のジョン・スノウと、感染症予防に関するエピソードをご紹介しながら、「なぜ?」思考から脱却することの大切さをお伝えできればと思います。

産業革命の只中のロンドンで……。

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