ぶり返す膀胱炎症状は、市販の薬でなんとかなるものなのでしょうか。

 尿路感染症は抗菌薬による治療を行うことが一般的ですよね。それゆえ、医療機関を受診して医師の診察を受けることがすすめられるわけですけども、ドラックストアなどで、膀胱炎症状を相談されることも少なくないように思います。特に膀胱炎症状を繰り返しやすい人では、そのたびに医療機関を受診するのは、時間的にもなかなか難しい……というケースもあるでしょう。

 OTC医薬品の中には「繰り返す排尿痛、残尿感に」あるいは「膀胱炎やむくみに」などといったコピーで販売されている漢方薬があります。夜間など医療機関の診療時間外に膀胱炎症状を相談された時には、これらの薬で短期的に様子を見ていただく……という判断はまずまず妥当かもしれません(むろん、発熱している人や症状が長期に持続している人など、腎盂腎炎のハイリスク者ではその限りではありません)。今回はぶり返す膀胱炎について、服薬説明に役立つエビデンスを紹介します。

膀胱炎症状に効くとされるOTC漢方薬、そのエビデンスは?

 OTC漢方薬の種類は豊富ですが、膀胱炎症状に効果が期待できるとされている主な薬剤に「猪苓湯」「五淋散」「腎仙散」などがあります。結論から言うと、これら漢方薬について、膀胱炎症状に対する有効性を検証した質の高いランダム化比較試験は報告されていません【1】。ただ、OTC医薬品の多くが「質の高いエビデンス」という意味において、有効性に対する科学的根拠は限定的です。エビデンスがないからといって、「膀胱炎症状に効く薬はないので、なるべく早めに医療機関を受診してください……」なんて説明するのであれば、たいていの健康問題について、OTC医薬品で対処すべきではないという極端な結論に陥ってしまうでしょう。

 そもそもの前提としてOTC医薬品の効果は、「全くない」と「ほとんどない」の間にある、ふわふわした何かです。そのふわふわを、まるで「綿飴」のように頬張れば思わず「甘くて美味しい」と笑顔になってしまう服薬説明が肝要だと思うわけです。ちなみに「綿飴」の美味しい作り方(💦)は以下の書籍にまとめてありますので、ご参照いただければ嬉しいです( *´艸`)

 OTC医薬品を取り扱う際、薬剤師もしくは登録販売者は、薬そのもの有効性がごくわずか(あるいはプラセボとほぼ同等)であったとしても、薬を介することによって、どれだけ患者(相談客)の生活に豊かさに資することができるか、という視点で説明方法を模索した方が建設的だと思います。むろん、病状を考慮して、適切なタイミングでの受診勧奨はその前提です。

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