むやみに解熱すると、風邪を悪化させるって本当ですか?

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、感染症に対する予防意識が高まったためか、風邪に罹る人が少ないように思います。実際、今シーズンのインフルエンザはほとんど流行しないまま終息してしましました。とはいえ、季節の変わり目のこの時期、風邪で体調を崩してしまうこともあるでしょう。

 風邪をはじめとするウイルス性の上気道炎は鼻水、のどの痛み、咳、そして発熱など、多彩な症状が同時的に発症することが特徴です。特に発熱は、倦怠感や寒気を伴うことも多く、辛い症状の一つだと思います。また、お子さんが風邪をひいて発熱しているのであれば、親御さんの心配も大きいことでしょう。解熱剤の存在は、そういう意味では風邪をひいたときのお守りのような薬かもしれませんね。

 他方で、熱が出ていることは体(免疫)がウイルスと戦っている証拠なのだから、むやみに解熱すると治りが遅くなる、あるいは風邪が悪化する、なんて言われることも少なくありません。確かに理屈の上では正論のように思えますけど、そうは言っても発熱は辛いものです。お子さんが高熱を出しているのに、何もしないで様子を見るというのも、親御さんの立場からしたら不安に思うことでしょう。今回の記事では風邪をひいたときの解熱剤について、服薬説明に生かせるエビデンスを紹介します。

子供が発熱したときの親御さんの想いは?

 体がウイルスと戦っている証拠だからとはいえ、子供が熱を出していたら親御さんは心配になると思います。熱が今以上に上がってしまったらどうしよう……。このまま下がらなかったらどうすれば良いのだろう……。 何か後遺症のようなものは残らないだろうか……。そんな思いを少なからず抱くはずです。

 米国の小児科クリニックで行われた調査【1】によれば、発熱した子供の親御さん340 人のうち、56%で発熱による子供への健康リスクを心配していたことが報告されています。また、44%の親御さんが38.9℃の熱を「高熱」と考え、7%の親御さんが解熱せず放置すれば43.4℃以上の熱が出ると考えていました。

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