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第19回 具平(ともひら)親王の事件

恐らく香子25歳の夏の夜、とんでもない事件が起こりました。
父為時と従兄伊祐(これすけ)が家司として仕えている香子にとって再従兄の具平親王(31歳)は愛人の大顔(おおがお)と遍照寺で観月をし、しけこんでいました。大顔というのは為時の妹の夫。平惟将の妹ですから、香子にとって叔母に当ります。
すると突然大顔の調子が悪くなり、急死したというのです。恐らく心臓発作か何かでしょうか、慌てた具平親王は為時や伊祐を呼んで、遺体の処置に当らせます。

これだけなら仕方ないと思うのですが、具平親王は信じられない提案をしてきました。実は親王は大顔との間に男児を儲けていたのですが、正室がいる手前、その子を伊祐に預かって貰えないかというのです。仕方なく丁度同じ年頃の子がいた伊祐は主人の願いなので引き取ります。

香子は、日頃具平親王を教養ある方と、光源氏のモデルの一人にも思っていたのですが愕然とします。そして光源氏の新しい一面のモデルとします。それは大顔改め夕顔の登場です。別邸で夜、物の怪に襲われて頓死する。当時六条院とも呼ばれていた河原院で、源融(この人も光源氏のモデルの一人)の亡霊が現れて、宇多法皇の横で寝ていた京極の御息所という方が失神したという話が伝えられていました。

もちろん親王が生きている間は物語にできませんが、親王が46歳で亡くなってから『源氏物語』に挿入したのでしょう。男の身勝手を書くためにも。
尚、この貰われてきた子は後に藤原頼成となって、何とその娘祇子は頼通の愛人となって、寛子(後冷泉天皇皇后、皇子はなし)、師実(摂関家の後継ぎ)を産みます。歴史って面白いですね。

※11月19日、明石の魚住コミセンの老人大学で「紫式部と源氏物語と明石」という題で90分の講演をしました。前回、「菅原道真の怨霊」でちょっと学問的になりすぎたので、前日にまた作り直して楽しい話に印刷・ホッチキスもし直しました。そしたらたくさん笑いも出て和やかな時間になりました。何事も努力・工夫は必要ですね!

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