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第31回 ボーアも核分裂の理論を知る。

丸太が横たわっている所にリーゼは座って、持ってきた紙に計算を始めました。アインシュタインのE=mc²にあてはめて計算すると、1つの原子核から約2億電子ボルトというエネルギーが出る事が分かりました。ウラン1グラムで2千万カロリー。同じ量の石炭のざっと250万倍です!1kgのウランのの中には10の24乗という莫大な原子核が存在するのです。

リーゼはこの莫大なエネルギーが悪用されるかもしれないという思いがまた脳裏をかすめましたが、科学者の性(さが)で、ウランへの情熱がそれに勝ちました。
リーゼはベルリンのハーンに手紙を書きました。手紙を読んだハーンは腑に落ちた様でした。早速、「核分裂」という言葉は使いませんでしたが、「ウランがバリウムに変化する」という内容の論文を出版社に送りました。

翌年1月3日にリーゼと共に核分裂を連想した甥のフリッシュがコペンハーゲンに帰り、リーゼと電話で連絡を取ったりして、自分たちの論文を完成させようとしました。
同じ研究室の長、ニールス・ボーアはちょうどアメリカに行く予定でしたが、フリッシュの原稿の草案を見、説明を聞いて仰天しました。頭に手をやり、
「私達は愚かだった。そういう事か!原子核が一番小さい筈だから分裂なんてないと思い込んでいた!!」
そう言って下書きの原稿を食い入る様にボーアは読んだのでした。そしてまたアメリカ行きの準備を始めました。(続く)


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