スーパーフロー状態を作るためのゲームデザイン

■フロー状態とは

スーパーフロー状態を説明する前に、まずは前提となる「フロー状態」について説明します。
フロー状態とは「今その瞬間」にとてつもなく集中している状態です。この状態に入ると、我を忘れて作業に没頭し、時間の経過も気にならず作業に集中できます。

作業に没頭できると、充実感を得られ「楽しい」と感じることができるようになります。

■フロー状態に入るためには

フロー状態に入るためにはおおよそ以下の条件があるようです。

* 目標が明確。何をすればいいのかわかっている
* 行動に対して直ちにフィードバックが得られる
* 行動とそれによる結果が自分でコントロール可能
* 過程を楽しめる
* 難易度がちょうど良い。頑張れば達成できる

これらを逆に考えると、以下の場合はフロー状態に入れません

* 何をすればいいのかわからない
* 行動に対して無反応
* 運の要素が強くてゲームをコントロールできない
* 難易度が高すぎてクリア不可能。もしくは難易度が低すぎて退屈

各条件を細かく見ていきます。

▼目標を明確にする

目標を明確にする簡単な方法としては、「目標となる数値を表示する」ことです。例えば、「ゴールまであと○○メートル」「敵を○○体倒せ」というようにクリア条件もしくは "残りどれだけでクリアできるか" という情報を表示するようにします。目標達成に近づくにつれて演出が派手になったり、プレイヤーを褒めるテキストを表示するのも良いかもしれません。

▼行動に対するフィードバックを入れる

行動に対して無反応だと何が起きているのかわからず、考え込んでしまうのでフロー状態に入れなくなります。そのためプレイヤーの何らかの行動(アクション)に対して、対象となるオブジェクトが点滅したり揺れたりするなど何らかの反応を返すとプレイヤーは「何か影響を与えているな」ということがわかって、作業に集中できます。
また結果だけでなく、その結果に至るまでの過程もアニメーションで表示できるとよりわかりやすくなります。例えばブロックが穴に落ちて消える場合に、穴に落ちていく演出を入れるだけで何が起きているかがわかります。

▼行動と結果のコントロールを可能にする

プレイヤーが取りうる行動が適度に用意されていると、考える楽しさもあって作業を楽しむことができます。ただし選択肢が多すぎると、悩んでしまい集中できないので、場合によってはある程度の絞り込みが必要となるかもしれません。
また選択による結果がある程度予測可能であることも大切です。例えば結果が100%ランダムである場合、結果のコントロールができません。これにより運頼みとなってしまい、期待しない結果が出たときにそれを受け入れられず、また「敵は乱数操作でズルをしている」と思い込んで、ゲームをやめてしまう原因になるかもしれません。
ただこれは「運の要素」を否定するものではなく、プレイヤーが納得できるものであれば問題ありません。例えば

* 武器Aは、100% 命中するが威力は 5
* 武器Bは、70%の 命中率で威力は 20

とした場合に武器Bを選んで外したら、武器Aを選ばなかったプレイヤーが悪い、と思わせることが可能となります。つまり運の要素によるリスクをプレイヤーがコントロールできようにします。

▼難易度のバランスをちょうど良くする

プレイヤースキルに対応する適度なチャレンジ(難易度)があるとゲームが楽しくなります。

この図の「フロー」となっている水色の部分がバランスのとれた状態となります。プレイヤースキルが上がりすぎた状態で敵が弱かったりすると「退屈」になります。逆に難易度が高くなりすぎるとプレイヤーへの危険が大きくなり「不安」な心理状況になります。

ゲームバランスを適度に保つには、プレイヤーがどの時点でどれだけこのゲームを理解して操作できているかの目安を決めます。
そしてそれを目標となる難易度に当てはめて、極端なバランスにならないように調整します。

■フロー状態の理解のために役立つ記事

ここまでの内容はこちらの「フロー理論」の記事がより詳しく書かれています。

今回の記事ではこれを上回る「スーパーフロー状態」についてさらに書いてみます。

■スーパーフロー状態とは

私の造語ですが、フロー状態を上回るハイな状態になれるものです。以下、スーパーフロー状態になれるゲームの例です。

* リズムゲームの高速曲 (BPM 200越え)。もしくは極端に複雑な譜面
* テトリスの 20G モード (テトリミノが出現してから接地するまでが 0フレーム)
* レースゲームにて、極限まで最適なルートに切り詰めたタイムアタック
* アクションゲームの高速スクロールステージ
* 高難易度の弾幕シューティングゲーム
* 制限時間ありのボードゲームでの極端に複雑な局面

思考が追いつかないほど高速で出現する障害を、連続で素早く処理することで脳汁がドバドバ出るとても楽しい状態です。

イメージとしては上記の図の通りです。"極限の難易度" で "超絶に高いプレイヤースキル" を必要とする場面です。別の言葉にすると「スーパープレイ」が正しいのかもしれません。

問題となるのが、難易度が上がりすぎて、思考が追いつかないような状況を繰り返したり、針の糸を通すような精密なプレイを要求するため、必要となるプレイヤースキルが人間には不可能なレベルまで突き進んでしまうことです。

集中しすぎでとても楽しい状態なのですが、それが継続できなければ意味がありません。
個人的には、この「スーパーフロー状態」を作るためには、フロー状態を作るための条件に加えて3つの方法があると考えています。

1. 高難易度のゲームを処理可能な精密な動作が可能
2. 先読みが可能もしくは先行入力が可能
3. ゲーム速度をコントロールできる

まずは高難易度の障害をクリア、回避できるだけの入力精度を反映させる機構が存在していることが前提となります。例えばテトリスの 20G モードでは 0 フレームで接地してしまっていますが、接地後も少しだけ動かす猶予フレームがあったり、多少の壁登りが可能なので、対処方法が全くないわけではありません。

またテトリスでは NEXTブロックの存在により、少しだけ先読みが可能です。「パネルでポン」「GUNPEY」「ZOO KEEPER」のようなアクティブ連鎖可能な落ちものゲームでは、ブロック消去中に次から次へとブロックを入れ替えることで、次に消えるブロックをどんどん流し込みという "先行入力" に近いことができます。それにより、高難易度での高速ブロックせり上がりに対処することが可能です。(「ZOO KEEPER」の場合は制限時間が極端に短くなる)

さらに「パネルでポン」「GUNPEY」では、せり上がりタイミングを自分でコントロールすることも可能です。このような「プレイヤーの力量に応じた情報量と処理速度の制御(早送り)」ができるゲームは、思考を決まった速度に押し付けられずに自分でコントロールできるため、スーパーフロー状態に入りやすいのではないか……と思います。

逆に難易度が高くてもスーパーフロー状態に入れないゲームは以下のものです。

1. 何もできない時間が少しでも存在する
2. 複雑すぎて思考が止まる場面が多く発生する

スーパーフロー状態は、プレイヤーの行動が時間の経過に対して隙間なく詰まった状態で発生しやすいです。

そのため、プレイヤーの行動が「演出」「操作のフィードバック」など何も操作できない状態に阻害される時間が多いと、そこで退屈な時間が生まれスーパーフロー状態に入り込めません。なので、「プレイヤーの行動を妨げるものを取り払う」ということが条件の1つとして考えられます。

もう1つの条件としては、複雑すぎて情報を処理しきれない場合です。例えば「ぷよぷよ」で大連鎖を組むには情報が複雑すぎて入り込みずらいような気がします。「ぷよぷよ」の大連鎖は盤面にあるぷよの情報をほぼ全て把握する必要があり、かなりの "記憶力" を要求するためと考えています。
ただそれも単に「難易度」と「プレイヤースキル」が不一致である、と言えるかもしれません。

■まとめ

今回の内容を簡単にまとめると以下の通りです。

1. 難易度とプレイヤースキルのバランスが取れていれば「フロー状態」に入れる
2. 高難易度でフロー状態に入れると、さらなる楽しさが得られる

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しゅん

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