【小説】 S先生に憧れて -心理学生の葛藤と楽しさの4年間と2ヵ月- 大学心理学 公認心理師科目
・S先生
霧渡る、朝日が照らすころ、僕は悶えていた。自分は何物にもなれない、苦しんで死んでいくだけなのだと天を見つめ、心が闇に浸食される。
「ああ、もう死のう。」
そんなとき、手を差し伸べてくれたのがSという名のカウンセラーだった。彼とは、父の知り合いの紹介でつながった。
そして、オフィスを運営していて、絶望で満ちた僕に生きる希望を教えてくれた。
「しゅんすけくんにできないことは多いかもしれない、でも、好きなことを努力すればいいんじゃないかな。」
その瞬間、何もできない自分を受容し、自分らしく生きていいのだと、がんじがらめになったイトがほどけた気がした。彼は、世間の価値観という呪縛から解放するきっかけをくれた。
「僕もS先生のようなカウンセラーになりたい。」
そう思い、必死に退屈な点取りゲームの攻略をして、なんとか入学にこじつけた。都会に進む僕の気持ちは浮き上がっていて、脳の神経が麻痺していたのだと思う。
自分が、故郷を離れて苦しむなど、幼稚な頭脳では予想できなかった。
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