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酒場カウンター図鑑

一般的な飲食店は純粋に食事の美味しさやコストパフォーマンスが評価軸になりますが、酒場の場合は情緒感が加わります。ここで言う情緒感は、そこにいて「あぁ、いいなぁ」と心を動かすなにか。

「emotional(エモーショナル)」のひとつだと思うものの、最近の"エモい"とは違います。いまの"エモい"は、新海誠アニメやジブリアニメ的な画や、レトロ感、黄昏的なものを表しますが、酒場で感じる情緒感は、そこに人が集まり、長い年月酔いを共有してきたことで蓄積された独特な熱量を含んだより人間味が強いものです。

そんな情緒感に浸りたくて日々酒場を巡っているわけですが、個人店とチェーン店では全然情緒感が違います。家業としてやっている店主や女将、そして通い慣れた常連さんの存在が大きいのだと思います。そして、もうひとつ、カウンター席も大事な要素だと気づきました。

チェーン店は一人飲みではなくグループ利用を想定したビジネスモデルが一般的ですから、宴会に対応した個室やボックス席を中心としたつくりです。カウンターがあったとしても、それはスペースの都合や席数を増やすための工夫で用いられる程度ということが多いですよね。かたや町に根付いた大衆酒場は、座敷での宴会も受け付けて入るものの、メインのお客さんは一人・二人客で、カウンターが店の中央に鎮座しています。

酒場において最もコアになる部分は、大将や女将が目の前にいるカウンター席であり、ここにこそ、情緒感の真髄がある、私はそう考えています。

「酒場巡りの醍醐味は、カウンターを愛でることにあり」

ということで、今回は、大衆酒場という空間を最も凝縮した場所であるカウンターにフォーカスします。どこでも同じように見えて実は奥深いカウンターの魅力をみていきましょう!

無垢のカウンター

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