狩猟銃の基礎知識 狩猟のスタイルと銃の種類
空気銃
銃の種類は、「空気銃」「散弾銃」「ライフル銃」の3つに大きく分けることができる。そのうち、直径4.5㎜ から7.62㎜の小さな単弾を空気の圧力で発射するのが空気銃だ。水面や地面にいる鳥や、木に止まっている鳥を撃つ「居鳥猟」に多く使われる。
飛んでいる鳥を撃つことはできないが、射撃時の反動がほぼないに等しく、発射音はすべての銃種中、一番小さい。そのくせ、現在の主流であるプレチャージ式なら、100m先のカモを撃ち獲ることも可能だ。
その精度の高さから、最近では、罠にかかった獲物の止めに使うという罠猟ハンターも増えている。頭部などをピンポイントで狙撃することで、肉の荒れを最小限に抑えられるからだ。
所持許可取得までの行程は、射撃教習(実技試験)を受ける必要がなく、猟銃等講習会を受けて考査(筆記試験)に合格すれば、すぐに所持許可申請ができる。
所持後は弾の保管庫が必要ない(銃の保管庫は必要)ため、初期投資が安く済み、弾代も一発5〜8円と安い。その手軽さゆえ、ここ数年、空気銃の所持者数はますます増加傾向となっているようだ。初心者ハンターにとって、空気銃は最も現実的な選択肢だといえるかもしれない。
散弾銃
粒状の散弾を、火薬の爆発力で発射するのが散弾銃である。獲物に対し「面」で制圧できるため、飛ぶ鳥を撃ち落とす「飛鳥猟」に多く使われる。
散弾には粒の大きさが何種類もあり、標準的な口径12番33グラム猟用装弾の場合、中近距離でのカモやキジ撃ち用5号弾で、直径3㎜の散弾が約200粒ほど飛んでいく。カモの遠射用に使われる1号弾なら、直径4㎜の散弾が100粒ほどだ。散弾の直径は大きくなるほど射程距離と威力が増すが、その分、粒数が少なくなってしまう。
散弾銃は撃てる弾の種類が最も多く、したがって、対象となる獲物の種類も多いのが特徴だ。
散弾以外にも、スラッグという単弾を撃つことで、シカやイノシシなどの大物猟にも使うことができる。スラッグにはライフルドスラッグとサボットスラッグの2種類があり、前者は散弾用のスムースボア(滑腔)銃身からそのまま撃つことが可能だ。
サボットスラッグも、スムースボア銃身を使って撃てなくはないが、狙い通りの所へ当たらない。本来の精度を出すためには、銃身長の半分(ハーフ)に旋条(ライフリング)が入った、専用のハーフライフル銃身が必要となる。サボットスラッグは回転しながら発射されるので、かなりの命中精度と威力を発揮し、大物を仕留められる可能性が広がるのだ。
散弾銃は鳥から大物まで万能に使えるので、ある意味、狩猟銃の基本ともいえる。
ライフル銃
ライフル銃は、火薬の爆発力で単弾を撃つという点で散弾銃のスラッグ弾と同じだが、精度と威力がまったく違う。
驚くなかれ、一般的な30口径で約4㎞(仰角をつけて撃った場合)もの最大射程距離があるといわれており、500m以内であれば一発でシカを倒すことも不可能ではない。北海道など開けた土地での大物猟や、本州でも高い命中精度が要求されるような猟場で威力を発揮する。
ライフル銃は、猟銃(装薬銃)を10年間継続所持した者にしか所持許可が下りないので、初心者ハンターにはとりあえず関係ないだろう。
注意したいのは、法律上、空気銃は猟銃のカテゴリーに入らないことだ。たとえば、最初に空気銃で狩猟を始めて、3年目に散弾銃を所持した場合、ライフル銃を所持できるのはそこから10年後、ハンターになってからは13年後になる。
将来的にライフル銃で大物猟をやってみたい、と考えている初心者ハンターは注意が必要だ。
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Writing 小堀ダイスケ
※当記事は『狩猟生活』2017VOL.1「狩猟銃の基礎知識」の一部内容を修正・加筆して転載しています。