狩猟のためのナイフ考 PART2
ハンドル材とブレード鋼材
ナイフを使うとき、人の手に直接触れる部分がハンドルだ。どんなによく切れるナイフでも、ここがしっかりと手に馴染まなければ、道具としては失格である。ハンドル材は天然素材と人工素材とに分けられるが、実用性の点で狩猟には人工素材が向いている。なかでも定番のマイカルタは、軽く、水に強く、価格も安い。薄く削った木や布などを合成樹脂で固めた物なので、それなりに風合いもある。
また、ここ数年、マイカルタに取って代わりつつあるのが新素材のG10だ。ガラス繊維をエポキシ樹脂で固めた物で、マイカルタより少々重いが、硬度や耐久性が高い。天然素材では、木、革、動物の角や骨などがハンドル材に使用される。重厚で存在感があり、風合いや雰囲気といった点では最高だ。しかし、こまめなメンテナンスが必要なため、道具としての利便性を求めるハンターには不向きかもしれない。
ハンドルの種類
①ウッドハンドル
②スタッグ
③レザーワッシャー
④マイカルタ
⑤ラバー
⑥G10
次に、ナイフの命ともいえるブレード材だが、ハンティングナイフに最も多用されるのは錆に強いステンレス系の鋼材だ。なかでもポピュラーなのが440Cで、切れ味と研ぎやすさのバランスがほどよく、価格も安い。
鋼材の硬度を表す数値にロックウェル硬度(HRC)という単位があり、数値が上がると硬度も上がるが、440CはHRC58ほど。高級なカスタムナイフなどに使用されるATS34になると、これが60くらいになる。
もちろん、硬度が高ければよいというものではなく、狩猟用ナイフとしてはこのくらいがちょうどよいだろう。あまり硬すぎると、刃こぼれや使い方次第では折れてしまうこともあるため、注意が必要だ。
例えば、究極の硬さをほこるZDP189やカウリXなど、HRC硬度が68以上にもなり、切れ味の鋭さでは他の追随を許さない。しかし、硬すぎて普通の砥石では研ぐこともままならず、また欠けや折れを防ぐため、ブレード自体を厚くしなければならないという欠点もある。
最近ではS30Vなど、高い耐摩耗性がありながら研ぎやすいという鋼材も出てきている。様々なナイフを実際に使ってみて、自分好みの鋼材を探そう。
ブレードの種類
※当記事は『狩猟生活』2017VOL.1「狩猟のためのナイフ考」の一部内容を修正・加筆して転載しています。
Profile
こぼり・だいすけ
27歳で散弾銃を所持し、その後、狩猟免許を取得。 第一種銃猟・わな猟・網猟と3種の狩猟免許を持つ。これまでに扱ったナイフは200本以上、所持した銃の合計は30丁と、豊富な知識と経験を活かし2013年からライターとして活動を開始。国内ではほぼ唯一の狩猟・銃・ナイフの専門ライターとして、狩猟専門誌などで執筆を続けている。現在、一般社団法人栃木県猟友会の事務局長を務める。趣味はオートバイ。共著に『狩猟用語事典』(山と溪谷社)がある