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月経前症候群って何??

女性の健康(勿論男性もですが)は個人のQOLの維持だけでなく、
会社や家庭など様々な組織における多様性や強さを維持する上で
重要であることは周知の事実かと思います。また、
月経随伴症状などによる社会経済的負担は
国内で年間6828億円と言われており、経営や国の運営においても
重要な項目と考えられています。

今回はその中でも、
月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)について
お話ししていきます。

まとめ


・女性には月経に関連した身体、精神の不調があることを男性も女性も知ること=それにより仕事のパフォーマンス、スポーツパフォーマンスなど低下します
・まずは産婦人科等の外来へ受診すること=その時の月経周期、月経量、気になる点を記録しておくとgood!
・月経前症候群かも、と思っても他の疾患(甲状腺機能異常、貧血、うつ病)の場合もあるため注意
・低用量ピルや生活習慣の改善、記録をつけることが症状へ有効
・社会においては、ヘルスリテラシー教育、学校や会社の環境改善が鍵を握る

月経前症候群 PMSとは、


日本産科婦人科学会の定義によると、『月経前3~10日の黄体期の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減退ないし消失するもの』を言います。
腹痛・乳房緊満感・腰痛・易疲労性・食欲亢進・にきび・吹き出物・眠気などの身体症状、
イライラ・易怒性・意欲減退・不安感などの精神症状が症状として挙げられます。
原因は不明ですが、社会的不安説、卵巣ホルモンと黄体ホルモンの不均衡説、精神的葛藤説、などが考えられ、40歳から更年期にかけて多いとされています。米国産科婦人科学会の診断基準では、日常生活に支障を来すような身体症状または精神症状が少なくとも一つ、月経前に毎月あればPMSと診断されています。医学的には、上記症状により日常生活に支障を来し、治療が必要な状態をPMSと呼ぶことが多い状態です。症状の発現頻度は月経のある女性の中で約40%程度といわれていますが、軽いものも含めると、さらに多くの女性が月経前の心身の変化を自覚しています。


精神症状が主体で強い場合

月経前不快気分障害(premenstrualdysphoricdisorder:PMDD)であり、米国精神科学会では抑うつ障害群の一病態と考えられており非常に重要です。
症状として特に抑うつ症状が顕著であり、些細なことで怒りが爆発する、集中力の低下により仕事ができない、悲しくて泣きたくなる、不安感、パニック状態などの精神症状です。
PMDDの頻度は3〜8%程度にあたり、20〜30代で発症することが多いとされています。

PMS症状への対応

①生活改善②非薬物療法③薬物療法に分けられます。
(必ず医療機関等への受診を行なった上で対応の検討が必要です。
今回の記事はあくまで知識を持っていただくものですのでご注意ください)

軽症から中等症のPMSには非薬物療法、生活改善が推奨されています。
生活指導やカウンセリング、認知行動療法などがこれに該当します。
ありきたりではありますが、規則正しい生活、適度な運動、栄養などライフスタイルの改善です。
栄養面では塩分やカフェインを控え炭水化物摂取を増やすことも改善手段として示唆されています。
認知行動療法のように、日記やアプリケーションで症状記録をつけることで、症状と月経周期との関連を認識して症状の受容が促され、本症の改善をみる場合もあります(認知行動療法は本来は専門家と一緒に行うものです。しかし本格的な認知行動療法の手前の対策として、自ら取り組むことも可能です。 具体的には、不安感や不快感を抱いたときの状況・自分の行動・考えを記録していくことです。日記帳やアプリケーションを利用して行うことが可能です)。

薬物療法としては対症療法、経口避妊薬(oralcontraceptives:OC)あるいは低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(lowdoseestrogen-progestin:LEP)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、漢方薬などが挙げられます。
OC/LEPは排卵を抑えるための最小必要量のホルモン含有量となっており、「低用量ピル」と呼ばれています。OC/LEPによる排卵抑制は一般的にPMSに対して有効であり、月経痛が和らぎ経血量も減少するため、避妊以外の目的を期待して用いられることも多いです。
初経発来前、50歳以上または閉経後、前兆のある片頭痛の既往、血栓症の既往などが内服禁止な点は注意が必要であり、初めて処方する場合や普段と症状が異なる場合は医療機関を必ず受診する必要があります
(ネット通販などでの購入機会があるため、今後のOTCとなった際についても非常に注意が必要です。基本的には医療機関受診→処方が必要ですし、安全です)。
PMDD、特に自殺念慮やトラウマ関連症状がある場合などの重症症例は、精神科に適切に受診、紹介すべき状態です。症状の変調が大きく月経周期に連動しない場合は、双極性障害など他の精神疾患との鑑別も重要になります。

その他、漢方療法として、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遥散などが用いられています。
多彩な症状を呈するPMSに標準的治療では対応不可能な症状を改善させる場合もありますが、個人差が多く詳細な診察や薬剤調整の必要が場合もあります。
これらの薬剤は国内においてPMSで保険が通ってないため医療機関での処方の場合は、月経困難症を併発しているかなどの確認が必要となってきます。


今回は、月経前症候群に関して、お話ししてきました。
まずは知ること、記録をつけてみること、
そして症状に応じて医療機関を受診することが大切
なことがわかっていただけたかと思います。

日本産婦人科学会ほか(編・監);産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020、2020:118‒119
武田卓:思春期の月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)HORMONEFRONTIERINGYNECOLOGY2020、27:187‒190
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13
経済産業省ヘルスケア産業課.健康経営における女性の健 康 の 取 り 組 みについて . 平 成 31 年 3 月 . h t t p s : ///www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/ downloadfiles/josei-kenkou.pdf

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