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182.出世魚のふしぎ〜なぜ名前が変わるのか〜

ごきげんよう。
最近頻度の高い、「ふと気になったので調べてみた」シリーズです。
今回は「出世魚」について。

出世魚とは

そもそも出世魚って何?
という方がいるといけないので、そこから始めましょう。

しゅっせ‐うお〔‐うを〕【出世魚】

成長するにつれて名が変わる魚。ボラではハク、スバシリ・オボコ、イナ、ボラ、トドと呼び名が変わる。スズキではセイゴ、フッコ、スズキ。ブリの場合、関東地方ではワカシ、イナダ、ワラサ、ブリ、関西地方ではツバス、ハマチ、メジロ、ブリ。
デジタル大辞泉

上記の通り、大きくなるにつれて名前が変わる魚です。例にもあがってるように、ブリ(鰤)とかは有名ですよね。

しかし、よく考えてみると変じゃないですか?

「成長につれて名前が変わる」って、まるで魚が自分で名乗りを変えたかのように言ってますが、名付けてるのは人間なわけです。

同じ生物なのに、人間側で勝手に名前を変えて、出世だなんて言ってるという……

一体どこからこの文化が発生したのでしょう。

発祥と由来

なぜ名前が変わるのか

そもそも、なぜ同じ魚で名前が変わる(変える) のでしょうか。

たとえば虫なら、イモムシが蝶になったり、カブトムシになったり、あれくらい劇的な変化をしたらまあ名前も変わるよな、と納得がいきます。

しかし、魚がそんな姿形が激変することってない気がします。

だとしたら何故?
ということで調べてみると……

答えは、ざっくり言うと「商売上の都合」でした。

出世魚の名前が変わるのは、成長とともに姿が変化し、味わいも変わるため。ブリのように成長に合わせて釣り方が異なるものもあり、店頭でも違う魚として扱われます。
株式会社マルイチ産商 Webサイト


大きさや外見だけでなく、身の味や扱いなども変わってくるのが出世魚の特徴。商品として異なるのですから、名前が変わった方が便利ですよね。

また、漁師さんの間では、その魚の年齢と大きさを区別するのに役立ちます。

成長の早い魚類は、一年で体の大きさが一回り以上大きくなります。そのため、同じ時期にとれた魚でも、年齢によって大きさが全然違うなんてことは当たり前。

そこで、「大きいブリと小さいブリ」なんて呼ぶよりは「ハマチとブリ」と呼んだ方が、その大きさの違いがすぐに分かります。名前を区別することには、こういった利便性もあるのですね。
魚河岸ウォーカー


要するに、魚は年齢によって大きさがグッと変わり、味も変わるため、別の魚として扱った方が都合がいいから-
ということのようです。
なるほどね。

なぜ「出世」?

名前が変わるのはわかったところで、いつから、そしてなぜ、それを出世と呼ぶようになったのでしょうか?

出世魚の「出世」とは、日本ならではの風習と関わりがあります。江戸時代まで武士は出世や元服に伴って名前を変えていました。

成長とともに名前を変える魚は、この慣例に倣って出世魚と呼ばれ、縁起の良い魚として祝いの席で振舞われるようになったとされています。
「umito.」海と魚がもっと好きになるウェブマガジン


名前が変わると、なぜ「出世」(=地位が上がること、世間に名が知られる身分になること)になるのでしょう。それは明治に戸籍法が制定されるまで続いていた武士や学者の風習と関係があります。
当時、武士や学者は今の成人にあたる元服を迎えると、名前を幼名から大人の名前に改め、着るものも替えて社会の仲間入りをすることを大いに祝いました。また出世の折々で身分に応じた改名をする風習もありました。そこから、名が変わる魚は「出世魚」と呼ばれて縁起物とされ、お祝の贈り物としても使われるようになったといわれています。
株式会社マルイチ産商 Webサイト

なるほど。
江戸時代以前の日本の文化に結びついた呼び方だったわけですね。

いまの日本では成長や出世に応じて名前が変わるなんてことはありませんが、だからこそ今に残ることばの由来を調べてみると、昔の文化に触れられて面白いですね。

そして、なんだか魚が食べたくなってきました笑

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