見出し画像

第9回「守るべきもの」(動画集)

■時代考証担当・小和田哲男先生

■歴史学者・呉座勇一先生

■歴史家・濱田浩一郎先生のYouTube歴史塾

■いっぺい解説どうする家康(田中一平先生)

■戦国BANASHI

■高橋学長のむさしのチャンネル

■日本史サロン

■前田慶次さんの戦国時代チャンネル

■かしまし歴史チャンネル

https://twitter.com/rGDfU0KgzH2ankI

■G-yu〜檜尾健太〜さん

■松村邦洋さんのタメにならないチャンネル

■資料提供者・市橋章男先生「なるほど!歴史ミステリー」

■小川さなえワールド

■歴女のモトコマ 大河ドラマ「どうする家康」感想動画

■大河じゃーなる・どうする家康 史実考察/描写考察

■時代考証・平山優先生のツイート

大河ドラマ「どうする家康」第9回「守るべきもの」はいかがでしたでしょうか?さて、今回に関する時代考証のポイント解説をしましょう。

(1)戦国の乱取り

 戦国時代は、合戦があると、その周辺の村町、寺社に対して雑兵たちが様々なものを略奪することが横行していました。これを「乱取り」といいます。後の、小田原出兵を行った豊臣秀吉は、この乱取りを「東国の習い」とまでいいましたが、事実ではありません。これは日本全国でみられた現象です。戦国大名の軍隊には、大名から知行を貰い、余裕があった者はごく一部で、ほとんどの兵卒は生活に苦慮していました。『三河物語』には、その苦しい生活ぶりがよく出てきます。特に、足軽として雇われた人々や、村町から動員された在村被官、村町から徴発された夫丸(荷物運びの人夫役)などは、戦場での略奪で懐を暖めるしかなかったのです。その実態は、私の恩師藤木久志先生の著書『雑兵たちの戦場』をお読みください。今回は、幼い本多弥八郎と玉の残酷な別れが、乱取りによるものという表現がなされました。もちろん脚色ですが、物語の展開に重要なサブストーリーとして扱われていました。こうした史実を知っていると、なるほどと思いますね。
(参考文献)藤木久志『雑兵たちの戦場』『飢餓と戦争の戦国を行く』『戦う村の民俗を行く』『土一揆と城の戦国を行く』

(2)一揆と家康の仲介者水野信元

 今回は、家康の伯父水野信元が登場し、一向一揆と和睦せよと勧告に来た場面が描かれました。水野信元が、一揆鎮定や和睦斡旋に一役買っていた可能性は非常に高いです。なのにあまり語られることがないのは、『三河物語』『松平記』に、水野信元がまったくといってよいほど登場しないからです。ただ『三河物語』は、水野信元が家康のもとに陣中見舞いとしてやってきて、会見をしたとの記事があります。残念なことに、会見の詳細は記されていません。ところが、一揆側だった渡辺守綱が語り残したとされる『守綱記』に「一揆御和睦、水野下野殿扱ニ而相済申候」(一揆と〈家康が〉御和睦した。水野信元が仲介役〈扱い=仲裁〉となり落着した)とあるのです。この他に、『参州一向宗乱記』などには、水野信元が軍勢を率いて家康に加勢し、一揆勢と戦ったことが明記されています。『三河物語』『松平記』などは、大久保一族が家康を説得して和睦にもっていったとか、一揆側から和睦の申し入れがあったなど、和睦に至る過程は不明といわざるを得ませんが、私は一揆側だった渡辺守綱の証言である水野信元の仲介に魅力を感じます。

(3)望月千代の登場

 ドラマが進むなかで、千代がかの「望月千代女」で、武田信玄の指しがねとして三河に送り込まれた歩き巫女ではないか、との予想が飛び交っていましたね。お見事な推理でした。このドラマでは、今後も登場し活躍することでしょう。望月千代女は、信濃国禰津郷(長野県東御市)で歩き巫女を統括し、諸国の情報を集め、武田信玄に報告していた人物としてゲームなどでも著名ですね。ただ、夢を壊すようで心苦しいのですが、望月千代女は架空の人物です。長野県に伝承と史料が伝わっていますが、少なくとも武田氏関係のものは、当時のものではありません。望月千代女架空説は、すでに三重大学の吉丸雄哉氏により提起されています。今回、登場人物名が「千代」→「望月千代」であり、「千代女」ではないことに異論が出てくることが予想されます。恐らく、「千代女」の「女」は、女性名の下に付けられる「女」(じょ)でしょう。なので読みは、「ちよじょ」です。これは、男性名の下に「男」と付け、「おのこ」と読むのと同じです。例えば「太郎男」と史料に登場すれば、「たろうおのこ」→太郎という男子という意味です。名前の下にある「男」「女」の字を、「息子」「息女」と勘違いすることがありますが、それは系譜類の史料にほぼ限られ、文書や記録では男性や女性を指す言葉です。そういえば、私が愛読していた山本周五郎の小説には、女性名の下に「女」が付いて、「~じょ」って読ませていましたっけ。
(参考文献)吉丸雄哉「望月千代女伝の虚妄」(吉丸雄哉・山田雄司編『忍者の誕生』勉誠出版・2017年)、平山『戦国の忍び』角川新書・2020年

以上で、第9回の解説を終わります。また次回をご期待下さい。では、バイナラ。

https://twitter.com/HIRAYAMAYUUKAIN

記事は日本史関連記事や闘病日記。掲示板は写真中心のメンバーシップを設置しています。家族になって支えて欲しいな。