見出し画像

草鹿砥公宣の詠歌

  霧や海山のすがたは島に似て 浪かときけば松風の音

(雲海に浮かぶ鳳来寺山は、海に浮かぶ島のようである。聞えてくる音は、波の音かと思ったが、松の枝を渡る風の音であった。)

 これは、草鹿砥公宣の和歌とされていますが、夏目可敬『参河国名所図絵』に政宗や管公(菅原道真)の和歌に似ているとあります。

■夏目可敬『参河国名所図絵』
「彼卿の歌也」とある「海」というふは、『藩翰譜』『武者物語』『塩尻』等には仙台中納言政宗卿より七代の祖・大膳太夫政宗の前とし、『塩尻』には「屋代峠にて詠」とあり、又、『菅公瑠璃壷百首』には、「山あいのあしたの」として管公の御歌とせり。よく考へるべし。
■太田白雪『反古探し』
○此山詠歌
霧や海山のすがたは島に似て 浪かときけば松風の音勅使公宣公の歌也と云ひ伝ふ。
此の歌は、摂州有馬の薬師縁起にもあり。其の外にも有る由聞く。信用せず。

※有馬温泉の薬師:有馬山温泉寺薬師堂(兵庫県神戸市北区有馬町)
有馬ふじ麓の霧は海ににて なみかととへば小野の松風(小野小町)
■新井白石『藩翰譜』(7下)「伊達」
系図並びに世に伝ふる系譜等に曰く、『新続古今集』撰せられし時に、此政宗、
 かきすつる藻塩なりとも此度は
 かへさでとめよ和歌の浦人
といふ歌よみて、二首の歌をたてまつる。
其の山家霧に
 山あひの霧はさながら海に似て
 浪かときけば松風の音 
■佐久間洞厳『伊達便覧志』
或時羽州と合戦の有しに、その敵、長井に有しを攻めんとて、大森の城に向ひ給ふ時、屋代峠といふ所に至って白霧朦朧として山川を弁ぜず、皆人途に迷ひたるが、折りふし所から山深く渓暗ふして、大軍呼号の音、夥(おびただ)敷く聞こえたれば、味方の軍士、皆、戦慄しけるを、政宗、解倶の術を設け、しばらく兵卒をはげまさん為に和歌を吟じて曰く、
 山間の霧はさながら海に似て 浪かと聞けば松風の音
時に山風俄かに吹き来り、白霧すでに散じぬれば、先に大軍の声と聞こへしも、四方に人なく、ただ古松の万株、渓風に響けるにてぞ有ける云々。永享帝命じて此の歌を『新続古今』に入られけるとぞ申し伝へ侍りける。
■『池田光政公遺芳』
谷あいのきりはさながら海に似て 浪かときけば松風の音 (池田光政)
■佐久間洞厳『伊達便覧志』
山間の霧はさながら海に似て 浪かと聞けば松風の音   (9代政宗)
■『菅公瑠璃壷百首』『天神百首』
山間の朝の霧は海に似て 浪かと聞けば松風の音     (菅原道真)
■『多紀郷土史話』
山間の霧はさながら海に似て 浪かと思う峰の松風    (花山院)
有馬富士麓の霧は海に似て 浪かと聞けば小野の松風   (花山院)
■仙台市の伝説「壷中の大名行列」
かきならす灰は浜辺の潮に似て 波かと聞けば松風の音
http://www.taihakumachikyo.org/taihk/taihk0134/index.html

記事は日本史関連記事や闘病日記。掲示板は写真中心のメンバーシップを設置しています。家族になって支えて欲しいな。