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家を出ることの難しさ / サニーデイ・サービス

8月の初旬、サニーデイ・サービスの映画を観てきた。

高校生の頃読んでいたCDジャーナルという雑誌。読者プレゼントで当選したのが、サニーデイの「東京」だった。懸賞に当たることが嬉しかったし、CDがタダで手に入るなんて最高だと思った。何より「東京」はとても好きな音楽だったので、これは人生の中でも忘れられない音楽体験の一つになった。

大学1年生の頃、たまたま入った古着屋で、とても好きな音楽が流れていた。浮遊感のある音。聴いたことがある声。「愛と笑いが溢れるー」という歌詞が聞こえて、タイトルだけは雑誌で知っていたので、ああこれはサニーデイの新譜かと分かった。そこから、もっと浮遊感のある曲につながる。後から知るところの「週末」。そして続くのは、ラジオで聴いたことがある「サマーソルジャー」だった。
古着はもうどうでもよくて、店を出たその足でCD屋に向かい「愛と笑いの夜」を買った。
これほど耳を奪われる音楽に偶然出会えるなんて、こんな経験なかなか無いと思う。なので、これも人生の中で忘れられない音楽体験の一つになった。

サニーデイや曽我部さんとともに思い出される景色がたくさんある。多くの心象風景をサニーデイの音楽が彩ってくれている。

だから、サニーデイの映画は胸に迫る瞬間がたくさんあった。映画を観ながら、人生を思い返していた。
コロナ禍におけるサニーデイの姿を見ながら、あんなに妙な時間を過ごした割に、あの時の自分ってどうやって生きてたっけと、ぼんやりしか思い出せないことに気づいた。目の前にあった仕事が突然無くなったりして、時代の波にに流されるように生きてたんだろうなと思う。

この映画の監督であるカンパニー松尾が撮ったMVが「家を出ることの難しさ」。
女性と男性、それぞれの「家を出る」姿が描かれる。接点のない2人の姿が、真逆のようでどこか繋がっているような作品。映像の画質の違いもまた2人の違いを引き立て、最後には交わっている感覚になる。
特に男性のパートを見るたび、胸がざわざわする。10代・20代と、あんな感じで悶々としたり、急に出かけてみたくなったりしたな。
40代になったけど、全然その感覚は変わらない。不治の病みたいなもんだと思う。こういう人間が生きてても良い世の中だとは思うけど、身の回りの世間にフィットできない自分もいる。辛い日もある。

サニーデイを聴いて、10代の気持ちを思い出しながら、死ぬまでこのまま生きていくんだなと思っている。
サニーデイが、一生つきまとってくる。いてくれて、ありがたい。



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