やがて染まる色彩についての戯言

これは、しずくだうみの戯言というか、小説のような気持ちで読んでほしい。

外では雨が降っていて、疲れた身体は低気圧に負けて散りたがっていた。かつての師の言葉は毎日反芻され、よく知らない町のベランダでもそれは鮮やかな色を保ったまま、私の耳で木霊した。

私が初めて発表した楽曲は「オーカー」というタイトルで、絵の具のイエローオーカーからきている。発表していないが初めて作った楽曲は「ウルトラマリンブルー」。画材屋で働いていた両親からうまれた私にとって、音楽よりも絵の具や筆の方が身近な存在だったことがタイトルからうかがえる。

「オーカー」を作った高校1年生の時、ボーカルスクールの先生に「この曲の中で見えている街並みはどういう街なのか」と訊かれた。私は「千葉の中では都会、みたいな都市」と答えた。先生は、「将来夜のベランダで外を見ているあなたは音楽をしているかな?」と言った。今から考えれば結構いじわるな発言だった。私は、10年後も音楽をしていたい、できれば音楽で生活していたい、と思う反面、普通に主婦になっているのではないかと不安になった。私はその言葉にとらわれ続けることになる。

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