グルテンを摂取できない話

幼少期から、自分はおなかが弱い人間だと思って生きてきた。

冷たい牛乳は当たる時とそうでない時があってもなるべく温めるようにしてきたし、ヨーグルトを食べたり乳酸菌の薬を飲んだりしてきた。
それでも週に2〜3日はおなかを壊し、それがデフォルトとなっていたからもはや何も思わなくなってきていた。おなかのせいで外出できないわけではなかったし、それほど不便は感じていなかった。

2018年の夏頃、事態は急変した。
アルバイト先でご飯を食べた後、もれなくおなかがピーヒャラするようになった。さすがにこれは何かがおかしいと思い始めた。セブンイレブンの雑穀入りサラダ、レンジでチンするパスタ、普通のお弁当、全てでおなかを壊していた。アルバイトは内勤も外回りもあって、パワハラセクハラがとにかくすごかったけどめちゃくちゃ働いていたから、そのストレスのせいで胃腸がおかしくなったんだと思った。
外回りのある日、住宅地で腹痛に襲われて動けなくなってこれはもうだめだと思った。奇跡的に近くにトイレがあって助かった。
助かったはいいが、これはどう考えてもおかしいと思ってインターネットで調べまくった。糖が分解できないのか?と思ってブロッコリーやさくらんぼなどを避けてみたがいまいち効果がわからないしそもそも糖が含まれている食べ物もわからない。私はとにかく検索しまくった。そして「セリアック病」にたどり着いた。

セリアック病とは、小麦や麦やライ麦に含まれるグルテンを摂取することで小腸の粘膜に異常が起こる自己免疫疾患らしい。要するに麦の類を摂取するとお腹を壊す。お腹を壊すだけでなく、湿疹が出たり、栄養を吸収できないせいでビタミン不足になったり、疲れやすくなったり不妊になったりするらしいことがわかった。

え、小麦…?

言われてみればパスタを食べた後劇的に悪くなったような気がした。
もっと精神的なものだと思っていたから軽い気持ちで小麦を摂取するのをやめてみることにした。
すると、おなかが壊れなくなった。会社のストレスは変わらないのに、おなかが壊れない。ストレスのせいじゃなかったんだ…と安堵する一方で不安がよぎる。もしかして、小麦をずっと食べられない……?

そう、セリアック病には治療法がない。
多くのサイトの治療という項目には"生涯にわたりグルテンを摂取しないことで小腸に異常をきたさなくなる"とある。いや、食わせてくれよと思いつつ、私のグルテンフリー生活が突然始まった。

わかりやすくグルテンが含まれる食品だと、パスタやパンやラーメンが思いつくだろう。
でも十割でない蕎麦にも、市販のコーンポタージュにも、さらには大豆のイメージが強い醤油にも小麦が含まれている。
そして盲点なのが"麦芽糖"だ。コンビニにあるような安い和菓子に含まれがちであるが、これは小麦ではないからアレルギー表示からは除外される。油断して食べると当日〜次の日動けなくなるのだ。

といった具合で、どこにでもグルテンがいる。
食べたいと思ったものではなく、食べられるものの中から比較的マシなものを選ぶようになった。お寿司屋さんに行く時はマイ醤油を持参し、友人にはグルテンフリーメニューが多いタイ料理屋に行こうと提案…と、いう感じで常にグルテンを意識して避けるのは根気がいる作業だ。友人たちは優しいからこの面倒極まりない作業に付き合ってくれるが、近い人ほど疲弊している気がしてならない。気をつかってくれたはずの店に入店してから小麦を含む食品しかないことに気がつくと、摂取するのを覚悟でこれは小麦だと言わずに注文することもよくある。
これは完全に私の性格の問題だが、人に付き合わせているのに入った店を退店するくらいなら自分が後で辛い方がマシなのである。でもつらいものはつらい。
別の時には、店員にアレルギー表を出してもらったらデザートしか食べられるものがなく、食事にきたつもりがお茶会みたいになった。
小麦が含まれているか訊くだけで店長が出てくることも多々あり、しかも最終的によくわからず「この客めんどくせえな」という態度を出されて、一緒にいた母が苛々しているのを見ていたら泣いてしまったこともあった。(これはどちらかというと共感性が高すぎるせいだが)
さらには、こんなに食べられるものがないなら自分で食事を作ってくればよかったんじゃないと言われたこともある。(これは店員ではない)

そんな感じで過ごしていたら、人と食事をした次の日は小麦を摂取していなくても落ち込みまくって寝込むようになった。
元々疲れやすかったのはビタミン剤を飲むことで解決できたし、グルテンを避けることでおなかを壊すことはかなり減ったのに、このつらさは…と思ってこの記事を書くことにした。

おそらくセリアック病だと思ってグルテンの摂取をやめているが、病院で診断されたわけではない。病院に行っても治療法がなく食事指導されるだけなのはわかりきっているからである。
グルテンフリーダイエットが流行っているおかげで代替え品で食事はだいぶマシではあるが、割高だったり代替え品ゆえにおいしくない率が高い。

ただ対応が優しいという理由でビーガンの店に行くことがある。これは小麦は含まれているかどうかを丁寧に問い合わせてくれる。でも私はビーガンではないから肉も食べないと栄養バランス的によくない。でも他の場所で冷たくされてきた身にはその対応がしみるのだ。

グルテンを摂取できないというだけで、食べられるものがほんとうに少ないのだが、それでも友人と外で食事はしたいし問い合わせて冷たくされたら落ち込んでしまう。普通に食事がしたいだけなのにこんなに落ち込まなくていいはずだ。

具体的には原材料表記を徹底してほしいし、わざわざ問い合わせなくても普通のメニュー表に書いておいてほしい。これは他のアレルギー患者にも役に立つだろう。

セリアック病について私も知らなかったし、知らない病気がまだまだ沢山ある。知ることはもちろん大事だけど、病気自体の苦しみからくるつらさを和らげるのは周囲の理解と工夫だと思う。

少しでも知って欲しくて書きました。
どんな状態の人でもあまり悩むことなく食事が、そして生活ができる社会になってほしいです。


追記

診断を受けろ、事前に問い合わせをしろと言われていますが、
治るようなものなら私だって診断を受けます。ちなみに花粉やハウスダストなどで困っていることもあり、アレルギー検査を受けて投薬をしています。さらにADHDでもありますが、診断を受けて投薬を始めました。治るようなものは全て診断を受けて治すようにしています。セリアックに関しては診断を受けてもグルテンフリー生活をするしか方法がないのです。

事前に問い合わせの件は、お祝いや旅行などで予約するような時はもちろん伝えています。
少し例を出すと、京都のゆば泉さんは小麦を使用している料理は代わりの物を出してくれましたし、下北沢のおむかいさんは持ち込んだ米粉のスパゲティーを使って料理をしてくれました。本当に感謝しています。
この記事で私が言っているのは、予約や問い合わせをしないような突発的な食事のような時にも食事を一緒にする相手にできるだけ嫌な思いをさせたくないということです。他の人が当たり前にできていることを病気の為に諦めなくてはいけないのでしょうか。症状でも他人の対応でも疲れ切っているのに、また嫌な顔をされるんじゃないかと思いながら原材料を訊きたくないのであらかじめ原材料表記をしてくれれば結構楽になるという話をしているだけなんですが…。

この病気になってから症状も対応も本当に死にたいと思うようなことが多すぎてこの記事を書いたのですが、伝わらないものですね。

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