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親しい仲こそ敬う気持ちを忘れない

 「最近、ちょっと扱いが雑じゃない?」
 「仲良くなるとこうなりがちなんだよね」

 こんなやりとりをしたことのある人は多かれ少なかれいるはず。

 例えば、複数人で他愛のない普遍的な話をしているとき。自分のちょっとした小ボケに対して鋭い言葉を投げてきたりとか、当人はそのつもりはないのだろうけれど、明らかに自分に対してだけ温度感が異なっている(ないがしろにしたり、明らかについでの扱いだったり)とか。話している内容だけでなく、口調が強かったりも。
 自分に対してではなくても、友人同士が上記のようなコミュニケーションを取り合っているところを見たことがあるかもしれない。

 最近「傷ついているかもしれない」「ちょっと考えてほしいな」と感じるようになったので、今日はそのあたりのお話をしようと思う。


 信頼関係というのはそう簡単に築かれるものではなく、時間の積み重ねによって個人的な話を打ち明けられるようになったりとか、相談に乗って乗られてをするようになるのがおそらく普通の過程になると思う。話しているうちに「この人、自分と温度感が近いな」「一緒に話してて過ごしやすいな」と感じるようになったら次のステップへ自然に流れていき、より長い時間を共に過ごしていく中で友人あるいは恋人の関係に発展していく。
 でもここに至るまでに明確に存在しているのは『お互いを尊重し、敬っている』という気持ち。要するに敬意をもって接していることだと思う。

 多くの人は初対面の人に馴れ馴れしい態度で接することはまずないと思う。よほどのコミュ強とかでなければまず無理だろうし、私では考えられない。そんなことをしたら恥で体がねじれて爆発四散してしまう。でも距離感がめちゃくちゃバグっているとかでないのならそれは強みになるので、積極的に人と接するのが得意な人はそのままでいてほしい。ご陽気な人は私も好きです。
 距離感バグについて例を上げるなら「お互い心を打ち明けてないときに内面に踏み込む」が代表的だろうか。突然のタメ口とか、パーソナルな話題(容姿のこととか、内面についてとか)に突然踏み込むとか。このあたりについては人によって感じ方は様々だと思うので、ほんの一例として捉えてもらえたら。

 この距離感バグ、実は親しくなった後にもきちんと存在している。それが信頼できる関係性になったことで敬意を放棄、もしくは信頼されているから「適当に扱ってもいい」と勘違いしていること
 適当に扱うは冗談が通じる間は良いと思う。肘で小突きあって「おまえさ〜w」「んだようるせぇな〜w」ぐらいの温度感で済むなら。これは流石に表現としてコミカルすぎるかもしれないけど。
 けれど一方がきちんと敬意をもって接しているにもかかわらず、もう一方が冒頭に書いたような鋭い言葉や、「バカ」「アホ」とか、「こういうことをする人は頭が悪い」などを言われた場合、当人としては良い心地はしない。それが複数人でいる場での発言ならなおさらだし、一回程度ならまだしも何回も聞かされる側になるとそこそこ疲れる。

 よく「してあげてると考えない方がいい」という言葉を耳にする。でも人付き合いをしていくなかで、少なからず遠慮や譲歩をしたりすることもあるはず。意識的にやっているなら「してあげている」に入るけど、本能的にそうしている人の方が多いと思う。日本人の悪しき習慣。
 けれどそういう無意識下で「その人の意思を大切にしたい」と思っている気持ちを、無碍に扱われたときってどうだろう。私は少なくとも、悲しくなったし、傷ついた。約束していたことを楽しみだねと言いづらくなった。その人のせいにするのはお門違いだけど、なんだか対等でいたと思っていた自分がおかしかったのかもしれないと思った。

 他人に期待をするな。それはそう。私もそう思う。でも、よりよい人付き合いをしていくのなら、目の前にいる人や思いつく限り自分に良くしてくれている友人がいるうちは少し考えてみてほしい。もちろんお互いに難があるのならちゃんと言うなり、話し合うなりしてほしい。もし今忙しくてそんなことを考えている暇がないのなら、一旦立ち止まって深呼吸してみてほしい。

 インターネットの世界はほとんどが文字情報だけで伝わるもの。捉え方次第で人は如何様にもなれる。もし同じように実際にそういう扱いをしてしまっている・されてしまっているという人がいたら、お互いの関係性が破綻してしまう前にすこし考える時間を作ってみるのもいいかもしれない。

 そんなお話でした。


◆追記

 ちなみにこの温度差の話、マイナスな方面をメインに書いたが、あまりにも一個人を持ち上げすぎも良くない、と思う。
 個人間でなら問題ないが(どうせ他人からは見れないところでのやりとりなので)、複数人いる場面においてひたすらによいしょされているところを見るのは、興味がそもそもない人から見てみたらどうでもいいかもしれないけれど、「今ってみんな集まってるのにどうしてその人のことばかり……?」ということにもなりかねない。
 ただ結局のところ、バランスを保ちながら会話をするのって難しいんだなあ、と思い知らされるのでした。人付き合いって大変だ。