見出し画像

【人事に効く論文】キャリアプラトーに関する40年分の先行研究をレビューしてみました。

Yang, W.-N., Niven, K., & Johnson, S. (2019). Career plateau: A review of 40 years of research. Journal of Vocational Behavior, 110, 286–302.

キャリアプラトー(career plateau)という言葉、皆さんはご存じでしょうか。プラトー(plateau)には高原や踊り場という意味があり、キャリアプラトーは個人のキャリアが踊り場の上で停滞してしまっている状況を指します。この論文では、Ference, Stoner, and Warren (1977)を端緒に進められた約40年分のキャリアプラトーに関する先行研究論文72本についてレビューが行われました。

1. 5分で分かる論文の概要

40ページ超ある論文の内容を、超サクっと要約すると以下のような感じになります。

キャリアプラトーの概念

  • キャリアプラトーには多くの分類がある。但し、ほとんどの先行研究は階層プラトー(hierarchical plateau) または 職務内容プラトー(job content plateau)に焦点を当てている

  • キャリアプラトーは、本人がどう思っているかが重要であり、客観的というよりは主観的なもの

  • キャリアプラトーが主観的なものであるということは、つまり、キャリアプラトーを防ぐための手段があり得るということ

キャリアプラトーのアウトカム

  • ある従業員が階層プラトーや職務内容プラトーで停滞すると、職務満足や組織コミットメントが低下し、離職意向が高まる

  • 階層プラトーは幸福感の低下と関連している (一方、職務内容プラトーが幸福感に影響するという裏付けはほとんどない)

  • 階層プラトーの主観的測定と職務パフォーマンスの客観的測定を用いた研究では、負の相関が報告されている

  • 職務内容プラトーが自己評価パフォーマンスに負の影響を与えることを示唆する研究もあるが、客観的パフォーマンスへの影響は不明である

キャリアプラトーの媒介因子

  • キャリアプラトーの媒介因子には、組織的支援や上司の支援に対する認識、職務満足などがある

  • 建設的なフィードバックやサポートを従業員に提供し、職務満足を維持する努力をすることで、キャリアプラトーの悪影響を軽減することができる

キャリアプラトーの調整因子

  • キャリアプラトーの調整因子には、昇進願望、組織的施策(例:職務への挑戦の提供)、キャリアプラトーに対抗するための個人的アプローチ(例:コーピング)などがある

  • ジョブローテーションやメンター任命等の組織的施策を通じ、キャリアプラトーの悪影響を緩和することができる

キャリアプラトーの先行因子

  • 積極的な思考・行動、追加的な責務は、階層プラトーと職務内容プラトーの両方と負の相関がある

2. 現場目線の解説/感想

論文の最後の方でキャリアプラトーのフレームワークが紹介されていたので、以下に掲載します。Proactive tendencies and behaviours、Worker's motivation towards promotion、Perceived lack of support from the organization、Individual approaches to couteract career plateauといった本人起因の要素が重要な位置を占めています。誤解を恐れずに言い切ってしまうと、キャリアプラトーに陥るかどうかは本人の気の持ちよう次第なのです。


3. 読後の余談

キャリアプラトーに陥っている社会人は、昭和時代から続く企業には数多く存在することでしょう。キャリアプラトーの悪影響が強く顕在化してしまった人物が、いわゆる”働かないおじさん”と言えるかもしれません。昇進の有無に関係なく、いつでも何事にもプロアクティブに思考・行動できる人材でありたいものです。

あと、本当にどーでもいい余談ですが、Chat GPT4に「キャリアプラトーに陥ったビジネスパーソンのイラストを描画してください」と指示したところ、最初に生成してくれたのが、以下の絵です。

人物が少し若めでしっくりこなかったので、「人物を50代にしてください」と指示したら、サクッと冒頭の絵に修正してくれました。同一人物を萎びさせた感じで、Chat GPT4の優秀さに改めて驚かされました。

2024年1月20日 初稿作成

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?