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【人事に効く論文】360度評価の結果レポートを渡すだけで行動変容につながると思ったら大間違い

Seifert, C. F., Yukl, G., & McDonald, R. A. (2003). Effects of multisource feedback and a feedback facilitator on the influence behavior of managers toward subordinates. The Journal of Applied Psychology, 88(3), 561–569.

1. 80秒で分かる論文の概要

360度評価のフィードバック・ワークショップについて、米国の地方銀行のマネージャー(中間管理職)を以下の群に分けて実験し、360度評価の結果が行動変容につながったかどうか、その効果が検証されました。

実験群(7名):ワークショップを開催の上、360度評価の結果レポートを渡す
対照群(7名):360度評価の結果レポートを渡すだけ
比較群(7名):360度評価の対象だが、結果レポートを渡さない。ワークショップは開催する

具体的にはワークショップ前後の360度評価結果の推移および本人へのアンケート結果などから、以下の内容が統計的に示されました。
・フィードバックの正確性認識について、3群間で有意な差はなかった
・フィードバックの有用性認識およびパフォーマンス改善効果について、実験群のマネージャーは対照群よりも有意に高かった
・実験群のマネジャーは、部下に対する影響力行使行動を有意に増加させた。対照群では有意な変化は見られなかった

360度評価を実施しても、結果レポートを本人に渡すだけでは意味がなく、しっかりとしたワークショップを開催することで初めて効果が出るといってもよい結果になっています。
ちなみに3点目の事前事後変化を図示したのがこの↓グラフです。


2. 私的な解説/感想

この研究では「360度評価結果のフィードバックの際、ワークショップを開催することがとても重要」であることが示されました。研究の際、研究者がファシリテーター役となり、7時間のワークショップを開催したそうです。どのようなワークショップだったのか、気になる方のために補足としてプログラム(全4部)の概要を紹介しておきます。

第一部:マネージャーとしての影響力行使スキルに関して講義(ビデオ教材等も使用)
第二部:結果レポートを渡し、内容の読み方・解釈方法について詳しく説明&質疑応答
第三部:シナリオ演習を行い、銀行のマネジャーが直面しそうな具体的状況において、影響力行使スキルをどのように使うことができるか、個人ワーク&グループワーク
第四部:個々の参加者が結果レポートに基づく行動改善に向けた計画を立案

3. 読後の余談

360度評価は、結果レポートを本人に渡すだけでは意味がありません。また、Antonioni (1995)によると、上司との面談を通じて本人に結果レポートを確認させる場合でも、行動変容にはつながらないそうです。皆さんの会社では360度評価の結果を本人にどのように返却していますか?

2024年3月31日 初稿作成

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