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カルガ キゾンバ フェスティバス【ライフ編】

※1「カルガキゾンバフェスティバル」は、スペイン・バルセロナ近郊で行われる、国際的なキゾンバフェスティバル。キゾンバとはアンゴラ発祥のペアダンスで、ヨーロッパを中心に様々な世代に人気を博している。これは、完全な趣味でこのダンスを細々と楽しんでいる、フォロワー女性視点で書かれている。

※2 リーダー=踊りをリードする人。主に男性が多い。
※3 フォロワー=リーダーの踊りについて行く(フォローする)人。主に女性が多い。

フェスティバルのプログラムは、もちろんレッスンとパーティーが主役。
だが、主催してくださる方、舞台になるホテル、食事も、素晴らしい立役者だ。
それらに支えられ、私達は印象的に出会い、絆を深め、そして別れる。
健康的にキゾンバ・ダンスドラマを楽しむために必須なことを含め、踊り以外のことも残しておきたいと思う。

ホテル

日本のキゾンバフェスティバルは、会場のみが決まっていて、後は会場に付随しているホテルか、近くのホテルをどうぞ、というパターンが多かったけれど、ヨーロッパのフェスティバルも似ている所が多い。

ただ、日本のキゾンバフェスティバルよりも、フェスティバルが開催されるホテルとより密接なリンクがあるようで、開催ホテルに泊まったら、実際泊まるよりも割引をしてもらえる。

もしカルガキゾンバフェスティバルが行われた「Evenia Olympic resort」の場合、3泊だと四つ星で今は円安だが、3万5千円〜4万弱位だったと思う。
このホテルは昼も夜もバイキング形式のご飯が食べられるから、ご飯のことを考えたらお得感は、かなりある気がした。

また会場のホテルに泊まっている場合、寝たい時にいつでも眠りに行けるし、寝坊をしても大急ぎで支度をして、途中からのレッスンに間に合うということも可能だった。

近くのホテルから参加している人達は、一度だけだったが豪雨などの時、ホテルに帰ることも出来ず途方に暮れたりするらしく、そういう時はとても大変そうだった。

少し高値だと思っても、開催会場のホテルに泊まるメリットは、なかなか多い。

食事

レッスンはなかなかタイトに詰め込まれているけれど、食事をする時間はしっかり確保されている。

レストランのシェフ、ウェイター/ウェイトレス達は、時間もかなり柔軟に対応してくれていたから、『レッスン編』の所で書いた通り、終了時間になった後でもランチを食べることが出来た。

出されているものは多国籍なものだけれど、アジアンやエスニックはほぼなかった。
対して自国スペインのパエーリャ、トルティーリャ、オリーブは毎日のように並べてあり、楽しみにしていた。
また「本日のディッシュ」のように、メイン料理は日や時間によって、お肉やら魚やらに変身した。

初日、たまたま
「一人で参加してるの?じゃあ僕と一緒に食べようよ!」
と誘ってくれたフランス人とその友人2人、計4人で結局3日間ずっと一緒に食事を楽しんだけれど、みんなこの日替わりメイン料理を楽しみにしていて、すごい量をこんもりとお皿に乗せては見事に平らげた。

そして、チョコレートが美味しくて有名なバルセロナだけあり、デザートもたくさんのチョコレートで溢れていた。
もちろん、全て試したくなる!
特に初日は3皿目、チョコレートスイーツで一杯にして戻って来たから
「日本の女の子のメインディッシュは、チョコレートなの?」
と全員から笑われる程だった。

そういう彼らも、4種類あるゼリーを全て試して私に感想を求めてきたり、朝食の10種類近くある甘いパンを全てトライして、ランキングをつけてみたり、男女ともになかなかの甘党ぶりだった。

どれも相当なカロリーだろうけれど、美味しかったから良しとしよう。

ズークフェスティバルでとても仲良くなったお姉様、Aさんに教えてもらった「カフェ・コルタード」も朝食バイキングで飲むことが出来たが、バルセロナでのピカソゆかりの名店『クワトロ・ガッツ』よりも美味しかった(ごめんなさい、クワトロ・ガッツさん……)。

このように、ずっと同じメンバーで絆を深めて行くメンバーがいる一方で、たまたま居合わせたメンバーで楽しく食事を取る人、一人で一時も無駄にせず、すごい勢いで5 皿以上も食しているメンバーもいた。

私達はといえば、時間も忘れて、フランスと日本のキゾンバのパーティーで流行っている技や、好きなキゾンバ動画、キゾンバに繋がった経緯など、国を超えてキゾンバのことを熱く語り合っていたから、毎回ウェイター達に追い出されるほど、食事時間を大幅にオーバーしてしまった。
日を追うごとに、キゾンバ以外の色々なことに及ぶまで、深く語り、時に不思議がり、時に面白がり合った時間は、踊りと同じ位貴重で楽しい時間になった。

睡眠不足対策は、朝寝、昼寝、夕寝?!

「出来るだけ、フェスティバルのプログラムは全て参加したい!」
「そしてご飯も食べたい!」

そうすると、スケジュールはこんな感じ。
09:30〜09:30朝ご飯(絶対延びる)
11:00〜レッスン(14:00まで)
14:00〜14:30ランチ(絶対延びる)
16:00〜20:00 レッスンもしくはプールパーティー
20:00〜20:30ディナー(絶対延びる)
23:00〜レッスン
00:00〜06:00夜のパーティー

「ということは、睡眠は3時間位……?!」
そう。3日間はナポレオンになることを、覚悟しよう!
更に女性は、アクセサリー決め、ヘアースタイル決め、ファッション決めから、長く多い髪を洗う時間、そしてメイク落としの時間も必要になって来る……。

体力に自信があるなら、徹夜も覚悟して臨むのもあるかもしれない。

体力があまりない私は、フランスの仲間達に助言してもらい、2日目からはよく仮眠をとった。
10:00〜10:55 朝寝
15:00〜16:00昼寝
22:00〜01:00夕寝
これを実践したことで、なんとかフェスティバル終了後も、風邪も引かず元気に過ごせている。

ナポレオンスケジュールが心配なら、たくさんの仮眠で対策が吉かと思う。

主催者様との連絡は、マスト

ホテルの予約、フルパス(全日の通し券のようなもの)の予約……予約の途中がスペイン語でしか表示されなかったり、ホテルの支払いが一発で上手く行かなかったり、バルセロナ郊外にある会場までの行き方まで……遠い日本から行くのに、スペイン語が分からない私は戸惑ったこともあった。

そんな時、キゾンバフェティバルでは主催者で素晴らしいダンサーのNunoが、ホテルの重鎮のメールアドレスを教えてくれたり、ベストなバスをスクリーンショットで送ってくれたりした。

思い切ってNunoにコンタクトを取って、どれだけ助けられたか分からない(スペイン人の彼がこの記事を読むことはほぼないと思うが、心からMucias  Graiciasである)……!

メッセンジャーやワッツアップでしかコンタクトを取っていないのに、予約が完了した時に一緒に喜び合ったりした所で既によい絆が生まれていたのか、実際にNunoに会えた時は
「Finally arrived!! Welcome to Karga!!(ついに到着出来たんだね!!カルガへようこそ)」と満面の笑みで、温かいハグをしてくれた。

誰も知らなくても主催者のNunoと仲良くなれていたから、始めから何らかの安心感があった。
これは、ズークフェスティバルの主催者Xabiも、全くもって同じだった。
二人のお人柄とサポートには、どれだけ助けられたか分からない。

どのフェスティバルでも、その主催者様とは必ずコンタクトを取りたいと思う。
その人は、色々な時に必ず味方になってくれる。

出会いと絆の深まり、そして別れ

参加者とは大抵、レッスンで顔を合わせることになる。
レッスン編で詳細を書いているけれど、休憩時間はカルガフェスティバルではあまりなかったから、レッスン中の何気ない会話や踊りを通じての会話で、参加者達は互いを少しずつ知ることになる。

食事、そしてパーティーでの踊りの会話によって、その絆はみるみる深まって行く。
ここが、ペアダンスのフェスティバルならでは面白みだろう……!

一度食事を共にしたら、翌朝はもうハグをして、両頬のキスで挨拶をする。
人によってはそれ位、仲が深まるのが早い。
私が仲間になった子達は、全員南フランス人だったというのもあるかもしれないけれど……。

そしてズークフェスティバルでも共通していたけれど、2日目の午後位、つまり後半に差し掛かった辺りからは、ホテルですれ違っただけで、とても優しげな眼差しや愛らしそうな眼差しで、参加者達から手を振られたり、声をかけられるようになった。
あるグループにはなぜか、「○×⬜︎、トロピカーナ OX⬜︎!」と拍手で讃えられたりした(スペイン語なのかもいまいち分からなかったが、褒められているのは分かり嬉しかった)。

レッスン中も、「Hola!」や「Hi!」とコネクションを組む前に、ハグをして来る人が増えて来る。
こうやって、一つのフェスティバルに参加している一体感がメンバー達から出て来るのが、とても好きだ。
世界各国の言語が、軽快に宙を浮き交う。

せっかく出て来る、フェスティバルが作り上げる一つの空気感だが、それは3(正確には4)日目で一旦終了になる。

絆が深まった分だけ、たった4日間なのに別れが辛くなる。
4日間といっても、普通の人の4日より相当濃厚だからかもしれない。
だって、レッスンもパーティーも、もし食事も一緒だったら、ほぼ24時間一緒なのだ。

朝早く経つ参加者とは、ホテルのロビーで。
隣国以外や飛行機を使って帰る参加者とは、空港へ向かうバスや、一番最後に別れる人は空港のターミナルになるだろう。

美しい別れの数々

空港へのバスに乗り込む時、ブルガリアの美しいマダムとダンディーなドイツおじ様が、まるでドゥサー(動きの少ない、とても遅いテンポの踊り)を踊るように、別れを惜しんでいた。

そこだけ時間が止まっているかのように、彼らは両手を握りしめ、互いを感じ、囁き合い、次に会えるフェスティバルを確認し合っているようだった。

ダンスで結ばれている関係なのだろう。
それ以上の行動には、大人になり過ぎたのか、家庭の事情があるのか、二人は走らなかった。
少なくとも、人前では。

そのダンスで結ばれた清く美しい絆と「See you」に、私は何だか心が打たれた。
ダンディーなドイツおじ様はしばらくその場を動けないようだったが、それを見ていた私の存在に気付き、少し照れ笑いをした。
おじ様とはレッスンやパーティーでも楽しく踊ったことがあったから、私のことを信用してくれているようだった。

「ごめんなさい、見るつもりはなかったんですけど……。聞いて良ければ、このフェスティバルであの彼女と出会ったんですか?」
「ううん、彼女とはだいぶ前に別のフェスティバルで、知り合ったんだ」
「そうだったんですね。彼女は親友……というか、特別な表情で、あなたを見ている気がしたので……。やっぱり長い絆だったんですね」
「そうだね。僕らは……ベストフレンズで、ベストダンサーだから……」
「良いですね。彼女、あなたに魅了されてましたね」
「うん。そして僕も彼女に魅了されているんだ。そして既に、彼女が恋しい……」

なんだか、ここはザワザワしたバスターミナルなのに、海辺で美しいフュージョンキゾンバが流れているような感覚になった。

「恋しさ……。ますますキゾンバが上手くなれそうですね。次に会えるのは、だいぶ先なんですか?」
「3週間先さ……。長いだろう?」
「(笑)親友で、ベストダンサーだったら、確かに長いですね」
「また次のキゾンバフェスティバルに向けて、毎日過ごして行こうね。君もまた、ヨーロッパのフェスに来る?またこうやって、会いたいね!」
「また来たいですね。今は明日にでも来たいほど、情熱に満ちています……!でも、私の本業はダンスじゃないし、何せ地球の反対側に住んでるから、何とも分かりません」
「僕だって、趣味だよ?」
「そっか。確かに趣味でも、また来たらいいですよね。頑張って、稼ぎます」

私自身も、数時間前の温かく、思い出しただけでも涙が出そうな美しい別れを思い出し、目頭が再び熱くなっていた。

ドイツ人おじ様は、日本とヨーロッパとの遥かな距離に私が落ち込んでいると勘違いしたのだろうか。
「大丈夫だよ。また君だって、絶対ヨーロッパに来れる。それまで、僕らみんなのこと忘れないでよ」
と励ましてくれた。

「おーい、バスが出発するよ!」
運転手の声で、脳裏で流れていたフュージョンキゾンバは消え、バスターミナルの喧騒が戻ってきた。
「危ない、バスに乗ろう乗ろう!」
「そうですね!」

バスの半数は、キゾンバフェスティバルのメンバーだった。
バスの出発時間が遅れ、搭乗に間に合うかハラハラしているチェコのタクシーダンサー。
毎晩踊りすぎて疲れたのか、バス走り出した途端にイビキをかき出した、ポルトガルのタクシーダンサーとその友人。
友人?娘?とバスに乗り込むも、ドイツダンディーおじ様との余韻に明らかに浸っている、ブルガリアの美人マダム。
既にインストラクターの動画を見て、復習に余念がなさそうなマダムの友人(娘さん?)。
バスの荷物の出し入れをずっと助けてくれた、タラショがとても楽しいスペイン人リーダー。
少し前にいて、恐らく数席後ろのブルガリア人マダムに想いを馳せている、ドイツ人ダンディーおじ様。

3日前は何も知らなかった人達のことを、踊り(+英語etcが話せる人は会話も)によって知ることが出来て、なんだか不思議な一体感が出来ていること。
バスの中で、それをとても嬉しく感じた。

空港ターミナル1で降りたメンバー達は強く抱き合って別れ、そしてターミナル2へとバスに乗るメンバーに向かって思い切り手を振った。
窓から、動画に夢中だったはずのブルガリアのマダムの友人(娘さん?)や、寝ていたはずのポルトガルのタクシーダンサーが、大きく手を振りかえしてくれる。
見えなくなるまで、ずっと。

別れも絵になる、カルガキゾンバフェスティバルだった。

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