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名古屋の鉄道乗りつぶし(市営地下鉄桜通線、名城線、名鉄常滑線、空港線、築港線)

会社を定時で上がった木曜日、その足で東京駅を18時過ぎに出るのぞみの自由席に乗り込んだ。翌日は夏休みで名古屋に前泊している妻と娘と合流してレゴランドに行くが、今日は仕事が休めず別行動。宿泊先も別で、安いビジネスホテルを予約した。この時間帯ののぞみは出張帰りのビジネスマンで混雑している。恒例行事である「柔らかカツサンド」とビールで乾杯。

名古屋駅には20時前に到着。普段はやっと仕事が終わり、帰りの電車を会社の最寄り駅で待っている時間帯だ。このままホテルに行ってもいいが、せっかくなのでちょっと寄り道をする。と言っても、私の場合それは、名古屋名物の手羽先で一杯というわけではない。

新幹線の改札口のすぐ近くにある地下街への入り口の階段を下りて、名古屋市営地下鉄の桜通線のホームへ行く。この路線は名古屋市営地下鉄の中でも、沿線に用事がない限り乗らない路線だ。起点も名古屋駅ではなく、一つ先の太閤通というところまで飛び出していて、乗りつぶし泣かせである。地下鉄であれば夜も昼も基本的にトンネルの中だから、夜に乗っても構わない。

まずは太閤通行きに乗って1駅飛び出た区間を乗り、いったん改札を出てすぐに折り返す。徳重行きは太閤通ではガラガラだったが、名古屋から帰宅ラッシュが始まり、駅に着くために人が乗り込んでくる。しかしそれも束の間で、市営地下鉄東山線との乗換駅である今池を過ぎると、一転して下車客が多くなっていく。再び車内に空席が目立つようになって、終点の徳重には40分ほどで到着した。再び改札を抜けてすぐにまた改札を通り、折り返しの電車に乗る。さすがにこの時間から名古屋の都心に向かう客は少なく、車内に人の姿はまばらだった。

このまま桜通線でホテルのある伏見方面に戻ってもいいのだが、それではつまらないし、もったいないので新瑞橋で市営地下鉄名城線経由で帰ることにした。名城線も乗りつぶしにはやっかいな路線で、環状線であることに加え、金山から名古屋港までの間に「名港線」と呼ばれる支線を持っている。東京で言えば都営大江戸線に似ていて、熱田神宮や名古屋大学、ナゴヤドーム、名古屋城など、名古屋の名所をたどり、市営地下鉄を含め他路線との乗換駅も多いが、名古屋駅には乗り入れていないため、私のような乗りつぶし目的の客にとっては悩ましい存在だ。実際にこれまで名港線と一部の区間は乗ったことがあるが、それ以外の区間をどう効率的に乗るかを何度かシミュレーションしつつ、これといった妙案が出ないまま長く未乗区間を多く残した状態になっていた。

この中途半端な未乗区間のある名城線を新瑞橋から栄まで乗れば、すでに乗ったことのある区間と多少の重複はするが、環状線の半分は乗ったことになる。それ以外の区間をどう乗りつぶすかはまた別日に考えることにした。ところが、電車に揺られていると会社から片付けた仕事の確認でメールが入り、パソコンを開いてデータの確認をして回答しているうちに、気が付くと電車は乗り換えるべき栄を過ぎていた。反対の電車で戻るのも癪なので、毒食わば皿まで、私は読みかけの文庫本を開いた。ホテルに向かうのは1時間ほど遅くなるが、環状線なのだし、このまま1周してしまおうと思う。

名古屋の雑居ビルを観察するのは楽しい

翌日、5時に目覚まし時計が鳴り、体のスイッチが入る。仕事と昨日の名古屋市営地下鉄攻略の予想外の長期戦で疲れているが、気持ちは昂っている。時間にゆとりがあったので、名古屋駅まで地下鉄で約1駅分を歩いていくことにする。明け方に雨が降ったようで路面がぬれていたが、空には晴れ間が広がっている。東京ではあまり見掛けないような独特の雑居ビルの看板を横目に歩いていくと、もうすぐ名古屋駅というところで歩道に発砲スチロールの山が築かれている。柳橋中央市場の入り口だった。こんな名古屋駅のすぐそばに市場があるとは知らなかった。平日朝とあって活気がある。

家族との待ち合わせは9時半なので、それまでに名鉄の未乗区間をちょっと乗りつぶしておきたい。そこで今回選んだのは常滑線と築港線。特に常滑線の大江から分かれる築港線は、わずか1.5キロの枝線ながら朝の7時台から8時台、夕方の17時台~19時台にしか列車が走らない。しかも土日は平日の半分以下に本数が減るので、こういう機会でなければまず乗れない。

名鉄名古屋駅を6時に出る中部国際空港行きのミュースカイでスタートする。ミュースカイはミューチケットという指定券を買わなければならないが、券売機から座席選択画面を見るとほぼ席が埋まっていた。ミュースカイは名古屋を出ると、金山、神宮前に停まり、次はもう終点の中部国際空港。所要時間はわずか30分だ。常滑線に入る神宮前を出るころには、大きなスーツケースを抱えた乗客で満席となった。そんな中に1人、空港に用のない人間が紛れ込んでいる。車両の仕切り扉の上には先頭の車窓を映したモニターがあり、走行速度も表示されている。太田川で知多半島の先端へ向かう河知線が分岐すると、さらに速度を上げて120キロを出した。

中部国際空港に着いてもとんぼ返り

常滑に近付くとまだ雨が降っていた。どうやら雨雲に追いついてしまったらしい。常滑焼の名物である招き猫のオブジェが至る所に見える。常滑の港をかすめるようにカーブし、海を渡った先の人工島にある中部国際空港には定刻通りに到着した。空港の搭乗手続きに急ぐ人の波を尻目に、踵を返して3番線にいる準急新可児行きに乗る。常滑から多くの高校生が乗り込み、名古屋へ向かう朝のラッシュが始まったようだ。家と家の間から海が垣間見える。

大江で下車して、少し離れたところにある築港線のホームへ。こ線橋の途中に中間改札があった。似たような構造は東武鉄道の大師線が分岐する西新井駅など、ほんの1駅しかない路線でよく見かける。終着駅に改札を設けなくても、ここでチェックすれば効率的なのだろう。ホームにはすでに通勤客が列をつくっていて、4両の電車でもかなり混んでいた。そのほとんどが男性だ。電車の運転席には、わざわざ大きく「大江←→東名古屋港」と書かれた行先表示板が掛けられている。

大江駅に着く築港線の電車

右にカーブするとすぐに工業団地の中を進み、途中で十字に別の線路と平面交差した。この辺りには貨物線が張り巡らされている。こうした線路が直角に交わる「交差点」は全国的に珍しい。東名古屋港に着くと、乗客は駅の周りにある三菱重工の工場に吸い込まれていった。すぐに折り返しの電車で大江に戻る。1本の電車が行ったり来たりするピストン輸送をしている。人も電車も、この工場の部品の一部のようだ。大江駅のホームには、先ほどよりもさらに多い客が次の列車を待っていた。

さて、そろそろ名古屋に戻り、待ち合わせまで、喫茶店でモーニングでもして、久々にゆっくりとした朝の時間を過ごそうと思う。

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