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タンシチューの不思議「食堂やまと」岡山

岡山県岡山市の中心街にやまとがある。昔から変わらぬ人気店であり、何度訪れても満員御礼だ。

こちらは、ラーメンが主力選手と言ってよいと思うのだが、一昔前には物議を醸しだしたとんこつ醤油に近い。お店によると、げんこつや豚の皮などをよく煮込み、これに昆布やカツオ節をあわせたブレンドスープを使用しているとのこと。私的な話だが、以前私がお世話になった方(老紳士)がとんこつ醤油スープを苦々しく思っており、それはなぜかと尋ねると、「とんこつは白くあるべきだ」と沈痛な面持ちで話してくれた。なるほど、豚骨スープの白いやつは捨てがたい。しかし何だろう、そういった良識人こそ、やまとのラーメンを食べるべきだ。できれば五目ラーメンを。うまいから。

「五目、麺かためで」と注文するのがかっこいい。五目そばというと野菜の炒めた奴なんかが大量に入っているのかと思うかもしれないが、チャーシューやゆで卵、かまぼこなどの「具」が入っているという意味。やまとの特徴としては、この具にきくらげを細く刻んだ奴が入っていて、旨いスープに息つく暇もなく麺を啜っていると、こりこりのキクラゲの食感が遠くから楽しくやってくる。やまとの醍醐味、それは細めの麺とうまいスープとこりこりのキクラゲが奏でるハーモニー。上手く表現できないが、一見人当り柔らかに見せて実は何とも頑固な岡山らしい逸品なのだ。

一時期のブームは去ったが、いわゆるソースかつ丼ぶりもよい。卵なしのソースじゃぶじゃぶ。可愛い丼の上にカツと、クリーミーな茶色いソースと、色鮮やかなグリンピースが。よくあるウスターソースを片栗粉でとじたような乱暴な味付けではない。岡山くんだりまで来たならば、ぜひ一口お食べいただきたい。なぜだかわからないが、岡山の中心街は岡山駅から少し遠いので。新幹線の乗り継ぎ時間、ほんとにわざわざ出かけないとやまとでお食事などできようもないのだから。

前々から不思議だったことがある。数十年前には、やまとには「タンシチュー」?確かそう呼ばれていたような気がするのだが、、びっくりメニューがあった。何がびっくりかというと、大振りのタンをゆでるか蒸すかしたものを1、2センチほどの厚みにスライスして、やはりゆでたキャベツの上にのせて、醤油かソースで食べさせていたと記憶している。

それ、タンシチューじゃないから。

まだ若く、物を知らない私でさえそう怪訝に思っていた。一二度試しに食べてみたのだが、全くおいしいのか何なのかわからない。ふにゃっとしてぷりぷりっとした食感。味はあまりない。もしかしたら「タン」でさえなかったのかもしれないです。なぞだ。

最近のやまとではタンシチューはメニューに載っていない。とうとう淘汰されたようだ。

所詮この世は弱肉強食だ。しかし「あいつ」を今でも忘れていないということは…試合に勝って勝負に負けたということか…

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