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何かに誘われてお出汁にさらわれて「追分だんご本舗」 新宿三丁目

新宿三丁目というと、まず思い浮かぶのが伊勢丹だ。しかし、最近では百貨店で買い物することはめったになく、近隣にあるマルイのほうが便利でついつい通ってしまう。マルイでぶらぶらした後に、画材道具などの専門店「世界堂」にもお邪魔する。石膏像をじーっと見ながら、いつか、こんなものを飾ることのできる家に住んでみたいと夢想する。…ブロンズ像と混同しているようだが、気にしない。

ところで新宿三丁目辺り、皆さんお食事はどうしていますか?特にランチ。この近辺、伊勢丹のレストランでご飯を食べるのもいいが、なかなか立ち寄りやすい、そして座ってゆっくり食事のできる店が見つからないことも多い。マルイの一階にあるおいしいパン屋など、劇狭のイートインコーナーの場所取り争いが日常で、まれに座ることができても、後ろでいつ席が空くか観察している鋭い視線を感じて、全く食べた気がしない。塩豚のローストにハニーマスタードのソースを使ったリッチなサンドウィッチが、台無しになってしまう。困ったものだ。

そんな時には早々にマルイを出て、追分団子ビルに行ってしまうが吉だ。追分団子ビルの一階には追分団子の店があって、古風なショーケースに様々な団子が串に刺されて陳列されている。そして、その奥が追分団子のお茶屋さんになっていて、甘味はもちろん、ちょっとした食事ができるようになっているのだ。

甘味処あるあるとして、甘味処のうどんやおこわはかなりおいしい、というものがある。以前、新宿京王百貨店の地階にあった甘味処の麺類は非常においしかった。そして、こちら追分団子のうどんやおこわも例にもれずものすごくおいしい。どうしてだろう。全く不思議だ。

麺ものを単品で頼むのもいいが、たまにお邪魔するのだから奮発してセットを頼むこともある。きしめんとおこわがセットになったものなどもおすすめだ。麺は出汁がきいていてつるりと食べ口もよく、おこわはちょっと濃いめの味付けでこちらもあっという間に平らげてしまう。麵の上に浮かんだシイタケの、ぶれることのないすばらしい甘辛煮加減。東京のあちこちでふと「きしめん」をだす店があるのだが、どういった経緯なのだろう。愛知県と縁があるのかないのか。全くこれも不思議な点である。

追分団子の甘味処も昼時になると客は多いが、ほっとくつろげる雰囲気があってよい。サービスで頂くお茶もおいしい。余力があれば団子のセットを頼むこともある。おなじみのみたらし団子に草団子。そして年に一度くらいは、夏の暑い中、かき氷の宇治金時をいただくのも一興だ。季節を問わずところてんもお忘れなく。

毎年、追分団子の店先では氷柱に花などを埋め込んだものをタライに乗せて飾ってくれる。世知辛い新宿の小さな風物詩といえる。

近隣の有名な花園饅頭の経営が立ち行かなくなった頃のニュースを思い出す。新宿の一等地に店を構えながら、団子一串からの売り上げを積み重ねて頑張ってくれている老舗和菓子店。固定費の負担に負けずに、これからも末永く営業してほしいものだ。


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