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息子よ、アルキメデスとなれ

湯舟に六歳息子と妻が二人。
揺蕩いながら二の段を諳んじている。
「にいちがに、ににんがし……」

本日よりお風呂ポスターが一新した。
ひらがなから九九へ。
「まだ早いよ」と妻は躊躇したが、独断で買ってきた。
何かの折に息子から「ゆう君はもう掛け算が出来るんだよ」と聞いたから。
「教育パパね」
妻はやれやれと笑い、でも協力してくれた。

と黙り込んでしまう息子。
「ママ、意味が分からないよ……」
「意味じゃないのよ。言葉で覚えちゃうの、ニサンガロクって」

私は洗髪をしながら幼少の頃の公文式を思い出す。
あの反復練習が小学校の勉強でも大いに自信になった。息子にも――

「あ、分かったかも!」
突然の大声に振り向くと息子は立ち上がっていた。
「これさ、2っていう数が何個あるかってことじゃない? 2が一個だと2。二個だと4」

キラキラした瞳に息を呑む。
アルキメデスが体積を発見した時もこんな感じだったんだろうか。
親バカな夫婦は手を叩いて喜んだ。


春の星お風呂の壁の九九ポスター

(はるのほしおふろのかべのくくぽすたー)

季語(三春): 春の星、春星(しゅんせい)


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