ポジショナルアイソメトリックを活用する

  クライミングをする時に「今日は身体が重い」とか「いつも持てているホールドが持てない」とか、その日のコンディションがいつもと違うことってあると思います。
 いつもとコンディションが違う要因は本当に多岐に渡り、それを同定することはなかなか難しいです。選手本人であっても、おそらく感覚的な部分になると思います。
 考えられる要素は「睡眠」「疲労」「ストレス(トレーニングも含む)」「食事」など、さまざまです。
 ここに挙げたものは、ほとんどが24-48時間のうちに決定する因子ですので、いざ「コンディションが悪い」と思った時にはなかなか改善しにくいものです。

 当日のコンディションを変化させることができる要因は、「メンタル」「筋の出力」「筋の柔軟性」などが挙げられます。
 「メンタル」: これはいわゆるセッション効果とかですね。
 「筋の柔軟性」 : これはウォームアップで即時効果を得ることができます。筋の温度や神経系の適応により、身体の柔軟性が向上します。また、日常生活で使うことのない角度で筋力を発揮することがスポーツですので、普段動かすことがない可動範囲までしっかり動かして、脳への認識を向上することも柔軟性を上げる方法として挙げることができますね。

 「筋の出力」 これが本記事のテーマです。
当日の筋出力は、登る前に何をしたかで決まることもあります。例えばストレッチは実施後数時間の筋出力を抑制するという報告もありますし、直前までデスクワークで身体が丸まっていた人は、背部の筋肉が伸長位になって出力が落ちている可能性もあります。

 ポジショナルアイソメトリクスは、筋肉が短くなるポジションで等尺性収縮をすることにより筋肉の張力を向上させるテクニックです。
 「いつもより力が入りにくい」「意識しても入りにくい」「緩い感じがある」といった場合、筋肉の張力が何らかの原因で落ちたことにより出力しにくくなった可能性もありますので、このようなエクササイズをウォーミングアップに取り入れると良いことがあるかもしれません。

方法として、クライミングで利用できるものの一部を以下に紹介します。

①フロアコブラ


②プローンオーバーヘッドプレス


これらのエクササイズは、いずれも動きを伴いますが、フロアコブラの場合、「手を開いて脊柱が最も伸びたタイミングで5秒ほど静止する」と、筋肉が最も収縮したポジションでのエクササイズになります。

クライミングの研究で、「ある程度のウォーミングアップ後に、キャンパシングを行うと、保持力に関係する筋群のパフォーマンスが上がる」という報告があります。これもポジショナルアイソメトリクスを考えると、納得いく結果かなとも思います。

当日のコンディショニングが悪くならないように、この辺りをぜひ活用してください。


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