クライマーの指は慢性的に痛んでる

 クライミングと指の痛みは、切っても切れない関係にあります。多くの方が経験しているのではないでしょうか。

 クライマーの指の痛みで有名なものは「プーリー損傷」でしょう。いわゆる「パキり」です。

Tendon Injuries in the Hands in Rock Climbers: Epidemiology, Anatomy, Biomechanics and Treatment - An Update より引用

 プーリーは長い屈筋腱の機能を落とさないように滑車のような役割を果たしています。

 ただ、プーリー損傷ほど重症ではなくても、慢性的に痛みがある場合もあります。

 そのような場合に考えられることは、腱組織の変性による組織の脆弱化です。
本来、腱という組織はコラーゲン繊維に富んでおり、引っ張り応力にはとても強い組織です。一時的に急激な負荷を与えられた場合、腱組織は一時的に肥厚(太くなる)し、ストレスに適応しようとします。この段階では、数日の休息で腱組織は正常化しますが、正常化する前に新たな負荷が加わった場合、回復が間に合わずに組織がストレスを受けます。これを繰り返すと・・・

 ストレス→組織がダメージ受ける→不十分な回復→組織はまだ弱いまま→ストレス→組織がダメージ受ける→不十分な回復・・・・

 というような負のサイクルに突入します。

 厄介なことに腱には「ウォーミングアップ現象」と言って、登っているときにはそんなに痛みがない、ということが起きます。そうなると「登れてるからいいか」となりますよね。 ここから脱するには相当な時間が必要ですし、クライマーの腱鞘炎の平均治癒日数は約30週間という報告もあります・・・。

 負のサイクルから脱するには、「しっかり回復させること」です。
腱組織のリハビリテーションでは、基本的に「負荷を与えて徐々に適応させる」ことで、回復と強化を行います。

 回復した組織が破壊されない程度の負荷を与える→その負荷に適応しようとする反応が生じる→組織の強度が上がる→少し時間を置く→負荷を与える・・・

というサイクルに置き換えます。

 では何が有効か。もうこれは本当に、痛みが出たら早いうちにストレッチして筋肉の硬度をしっかり落とすことが大事です。腱は自力で収縮できる(張力を上げる)組織ではありません。筋肉に引っ張られることで、腱の張力が上がります。なのでしっかりストレッチしましょう。

 これは以前にも投稿した内容ですが、指には「固有受容器」が非常に多く存在しています。「固有受容器」は感覚器官であり、手から入った情報を脳に送るセンサーの役割をしています。
 筋肉が硬くなることで固有受容器は働きにくくなり、手から入る情報が減少し、過剰な力み、コンタクトストレングスの弱化、細かなホールディングの低下などに繋がります。
 
 最近は「マッサージガン」が比較的安価に手に入るようになっています。振動刺激は筋緊張を落とすのに有効です。(振動刺激を登る前のウォームアップに使用する方もいますが、パフォーマンスへのプラスの影響がどの程度あるのか、また調べてみようと思います)

 クライマーにとって登れない期間はとても辛いものです。私もケア不足による故障は避けられるように、しっかりケアをしようと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?