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隠れユダヤ教徒

昨年6月、長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産がユネスコ(国際連合教育科学文化機関)によって世界文化遺産に登録された。江戸幕府の弾圧下で、「ひそかに信仰を継続した独特の文化的伝統の証拠」と高い評価を受けての登録であった。

ひそかに信仰を継続した例は、九州の隠れキリシタンに限られない。皮肉なことに、キリスト教徒支配下でユダヤ教の信仰を守りつづけた人々もいる。いわば隠れユダヤ教徒である。その説明を15世紀末のイベリア半島にさかのぼって始めよう。現在のイベリア半島にはスペインとポルトガルという二つ国が存在する。この半島の南部は、8世紀から15世紀にかけてはイスラム教徒の支配下にあった。イスラム教徒は少数派の宗教に寛容であり、そこではイスラム文明が輝くと同時にユダヤ教徒たちも繁栄を謳歌した。

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