高橋和夫(国際政治学者/放送大学名誉教授)アーカイブ

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最近の記事

カシミールとファッション

カシミール地方を巡ってインドとパキスタンの間に緊張が高まっている。 このカシミール地方、かつて世界を席捲する流行の発信地となったことがある。19世紀に、この地域の特産品のカシミアのショールがヨーロッパで大流行した。カシミアというのは、この地域のヤギの柔らかい毛で編んだ繊維である。超高級品として知られる。そして、カシミアのショールの勾玉模様も世界に広がった。古代ペルシアなどで広く使われていた勾玉模様が、ペルシアからインドへ、インドのカシミールからヨーロッパへ伝わった。イギリス

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    • アフガニスタンとカシミール

      インドとパキスタンの間でカシミール地方を巡る緊張が高まっているのは、アフガニスタンでの和平が進んでいるからだ。こう書いたのは、カタールで行われているアフガニスタンの反政府勢力のターレバンと米国の交渉が、進展しているからだ。そして、過去にもアフガニスタンでの情勢の変化が、カシミールに大きな影響を与えた事例があるからだ。

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      • 中国の対イスラエル投資

        船で旅をすると世界各地での中国の港湾投資がよく見える。春に船でベトナム北部のカイラン港を訪ねた。中国に近いせいか、中国資本の進出で中国語の看板だらけである。何年か前にスリランカに立ち寄った。首都コロンボには中国人の姿が多かった。そして地中海では、経済危機に長らく苦しんできたギリシャのピレウス港の管理権を中国資本が掌握している。首都アテネの外港のピレウスは、巨大な客船の集まる東地中海のハブ港である。

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        • キュロス大王の墓に怯えるイラン・イスラム共和国

          ここ何年か、古代アケメネス朝ペルシア帝国の創始者のキュロス大王の墓に人が集まり始めた。 墓は、イラン南部の古都シーラーズの郊外にある。とくに人が集まるのが10月29日である。キュロスは紀元前600年頃に生まれ530年に没した人物である。なぜこの日かと言えば、紀元前539年の10月29日に、キュロスがバビロンに入城したと信じられているからである。 キリスト教徒が旧約聖書と呼ぶ文書によれば、キュロスは、バビロンに囚われていたユダヤ教徒の帰国を許した。そして破壊されていたユダヤ

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          中東を読む/米軍のシリアからの撤退

          トランプ大統領は、師走に世界を驚かすのが好きなようだ。一昨年の12月に突如としてエルサレムに在イスラエルの米大使館を移すと発表した。そして昨年12月にはシリアから米軍を撤退させるとの方針を公表した。 多くの突然の決断と似て、この決断にも兆候があった。例えば昨年春の記者会見でトランプ大統領は「もう、そろそろ米兵をシリアから帰国させる頃だ」と発言している。同大統領の周辺は、米軍をシリアに残留させて影響力を維持すべきとの立場であった。だが、トランプという人物は、そうした発想には、

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          トルコ語世界の広がり と中国

          中国の紙幣をよく見ると、小さな活字で色々な文字が印刷してある。その一つにアラビア文字がある。読んでみると「中国人民銀行」とある。文字はアラビア文字だが、言語はトルコ語である。正確にはトルコ語系のウイグル語である。ウイグル語とトルコ語は近い。 近いはずである。そもそもトルコ系の人々の祖先は中国の北に生活していた。漢籍に匈奴などとして言及されている人々である。こうしたトルコ系の人々の祖先が西へ西へと進んだ。通過した地の人々との混血をくり返しながら、現在のトルコに到達した。イスタ

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          サウジ王家の支配 その歴史と教訓

          将来を見通す際のヒントが過去にあるとすると、サウジ王家の未来を考える際に参考にすべき歴史は何だろう。三つの事件を思い出す。 第1は1960年代のイエメンの内戦である。二つ目は2代目の国王サウードの廃位である。そして三つ目は、3代目の国王ファイサルの暗殺だ。いずれも、サウジアラビアの現状を踏まえると示唆に富む事件である。

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          中東を読む/変わる在米ユダヤ人のイスラエル支持の形

          米国で今、一番「シュン」な政治家を上げるとすれば、アレキサンドリア・オカシオ・コルテスだろう。 昨年11月の中間選挙で連邦下院議員に当選し、今年1月に29歳で史上最年少の議員に就任した。ニューヨークのクイーンズ区やブロンクス区を選挙区としている。 コルテス議員は、国民皆保険、州立大学の授業料の無料化など進歩的な政策を訴えてリベラル派からは喝采を受けている。逆に保守派からは罵倒の対象とされている。就任したばかりの1年生議員としては異常なほどの注目度である。

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          中東を読む/変わる在米ユダヤ人のイスラエル支持の形

          アレキサンドリア・オカシオ・コルテスの「ユダヤ性」

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          アレキサンドリア・オカシオ・コルテスの「ユダヤ性」

          アレキサンドリア・オカシオ・コルテスの「ユダヤ性」

          中東では木曜日に戦争が始まる

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          カショギ殺害と日本のメディア

          10月はじめにサウジアラビアの反体制派ジャーナリストのジャマール・カショギが殺害された。この事件の黒幕は、同国の皇太子ムハンマド・ビン・サルマンと広く報道されている。この事件で筆者が最も驚いたのは、その殺害の残虐性ではない。何に驚いたのか、それは、その残虐性に日本人が驚いた点である。というのは、皇太子の乱暴振りは、事件の前から広く知られていたからだ。

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          隠れユダヤ教徒

          昨年6月、長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産がユネスコ(国際連合教育科学文化機関)によって世界文化遺産に登録された。江戸幕府の弾圧下で、「ひそかに信仰を継続した独特の文化的伝統の証拠」と高い評価を受けての登録であった。 ひそかに信仰を継続した例は、九州の隠れキリシタンに限られない。皮肉なことに、キリスト教徒支配下でユダヤ教の信仰を守りつづけた人々もいる。いわば隠れユダヤ教徒である。その説明を15世紀末のイベリア半島にさかのぼって始めよう。現在のイベリア半島にはスペインと

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          ニッキーとアレキサンドリア/トランプに挑む二人の女性

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          ニッキーとアレキサンドリア/トランプに挑む二人の女性

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          イスラム教徒はなぜ豚肉を食べないのか

          子どもの頃に読んだ『アリババと40人の盗賊』という物語に豚に言及している場面があるのを思いだす。アリババとカセムという2人の兄弟の物語である。弟のアリババは貧しく、森で木こりをしている。兄のカセムは金持ちである。 さて、アリババが森で盗賊の宝の隠し場所を見つけ、そこから多くの金貨を持ち帰る。それを数えるためにアリババの妻は兄のカセムの妻のところへマスを借りにいく。なぜマスが必要なのだろうかと不審に思ったカセムの妻は、マスの底にラード(豚の油)を塗りつけて貸す。アリババは油で

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          ノルウェーの〝金メダル〟

          日本人は、2020年の東京オリンピック開催の決定で盛り上がっているのだろうか。 ヨーロッパでは、ノルウェーの首都オスロの2022年の冬季オリンピックの誘致立候補からの辞退が評価されている。14年秋に辞退を表明したノルウェーだが、過去2回オリンピックを主催している。それに冬のオリンピックでは一番多くのメダルを獲得している。にもかかわらず13年秋に成立した保守党と進歩党の連立政権が立候補の辞退を決定した。最有力候補とされていたノルウェーの首都オスロの辞退で、立候補している都市は

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          テロ対策とテロ〝後〟対策

          海外でテロがあるたびに、日本でもテロがあるだろうかと質問される。そしてテロ対策に関しても聞かれる。 忘れてはならないのは、日本という国では1995年にサリンが地下鉄でまかれるという事件が起きているということである。こんな国は、世界に日本以外にはない。さかのぼると1974年には三菱重工本社が爆破され、多数の死傷者がでている。現実は、日本人の自己認識とは異なる。必ずしも日本が安全な国とは言い切れない。 すでに日本でもテロが起こったという現実を踏まえると、テロを未然に防ぐ対策も

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