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結婚式にご招待します

2020年12月20日、結婚式を行いました。こんなご時世なので自分たちと家族だけ、たった8人の式。でも少人数だからといって手を抜くことはなく、プロの力を結集し、素晴らしいクリエイターにご協力いただき、私の茶会プロデュース力も思う存分発揮して、1日を作り込みました。
友人やお世話になった人、見知らぬnote読者の皆さまもぜひ擬似体験いただきたい! ということで画面上の結婚式、お楽しみください。

◆下鴨神社

京大時代、何をするにもチャリでうろちょろしてたら自ずと下鴨神社と縁がつながる。糺の森を歩く新郎新婦も幾度となく見たことがあって、自然と「いつか結婚式をするなら絶対下鴨!」と思うようになっていた。
 
古の時代、京を開いた賀茂建角身命。自身が矢となって鴨川を流れ、禊中の玉依媛命を貫いちゃって結ばれるという、日本神話あるあるトンデモストーリー。そんな言い伝えから縁結びの相生社があったりして、結婚式には向いている神社なのかなと思う。

◆白無垢・綿帽子
小さい頃からウェディングドレスにあまり憧れがなくて、むしろ白無垢着たいと思ってた。御所車に葵紋が入った、下鴨神社限定の白無垢。お布団着てるみたいでぬくぬくでした。真夏の京都(≒灼熱地獄サウナ)で着たら絶対熱中症なる。

白無垢には綿帽子か角隠しか、二択を迫られる。調べてみると角隠しってまさに文字通り角を隠して「新郎の家に入り従順な新婦になります」という意味が込められてるらしくて、それは私たちには不適かなと思ったので綿帽子を選んだ。
ちなみに綿帽子の意味はドレスのヴェールと一緒で、顔を隠すためだそう。
 
◆婚儀

婚儀がカッコ良すぎて!! 宗教女子としては胸熱シーン。
葵生殿に入ると笙、龍笛、篳篥の音色に包まれ、儀式の装束をまとった斎主、巫女、雅楽代が迎えてくれる。写真は厳禁。皆の脳裡に焼き付ける。
斎主の祝詞は「イザナギイザナミの二柱の〜」とか「かしこみ〜かしこみ〜」という言葉が混じり、今神様に話しかけてるんや! 感がすごい。真ん中には鏡がかかり、左右の棚にはお米、お酒、立派な果物をお供えしている。神様これら食べるのかな、今日は機嫌良いかな。
誓詞は「かけまくもかしこき」から始まり、すごいかっこよかった。読み上げるのは夫指定やったけど、なんなら私が言いたかったw 賀茂建角身命はきっとメッセージを受け取ってくれたはず。
 
◆高台寺 十牛庵

挙式を終えたらお食事会は高台寺 十牛庵へ。
東山の麓、小川治兵衛のお庭、数寄屋建築。ザ・京都のロケーションで家族にも楽しんでもらいたいなと思って。名前は明らかに十牛図(牛と牧人の絵で真理に到達する道を表した10枚の連作)から来てるはずやけど、どういう由来かははっきりしないそうな。

2階からは京都を見下ろす。

最高級のお料理、素材で勝負されてた。十牛庵のシグネチャーは松坂牛で、試食させてもらったときの感動再来。今回一番印象に残ったのは蕪蒸し。ホクホクやけど柔らかすぎない、凛とした百合根が流石の職人技。大助(キングサーモン)やまなかつおも立派であった……。
京料理大好き人間なので、本物のお料理を堪能できて、目で楽しく、舌で楽しく、五感フル稼働。
私たちのわがままなお願いも全部聞き入れてくださり、大変ありがたい料理長&プランナーさんでした。
  
さて、ここから独自色全開で。
 
◆お軸 created by 南田樹里

「弄花香満衣」
鮮やかな赤、緑、白で和風クリスマスを意識してもらった会場装花と華やかな婚礼衣装にピッタリなお軸。
「掬水月在手」と対になる禅語。

これは毬茶会の時の写真。大学院を卒業する前「掬水月在手」を書いてもらったけど、その時はお金がなくて、十分なお代を渡せなかったし簡素な表具しかできなかった。だからいつか対になっている「弄花香満衣」を作ってもらいたくて……。社会人になって、ちゃんと道具を作ってもらえるまでになりました。
作っていただいた南田樹里さん、心からありがとうございます。
 
◆席札 ACORN PEACE inspired by John Lennon & Ono Yoko

8月15日、終戦記念日生まれの私は世界平和の祈りが身に染み付いている。幼い頃からビートルズやジョン・レノンの曲が家で流れていたこともあって、ジョンとヨーコが結婚したときどんぐりを世界の首脳に送ったことは知っていた。世界平和を祈る、生きた彫刻。

「どんぐりを植えたなら、木は育つ。爆撃したら、そうはならない」John Lennon

どんぐりを紙で包み、麻紐で結び、ユーカリの葉に名前を書いた。結婚式が終わってそれぞれの自宅に帰ったら、庭に埋めてください。
席札を自然に還すインスタレーション、ACORN PEACE.
父には「自然に還れ、ルソーか?」とつっこまれた。高尚な家族や。

実はどんぐりが足りなかったので、2人分は榮太郎の飴が入ってました。飴が当たった新郎父と新郎妹には胃に返していただきます。笑

(もう一つの意図……結婚式に参列した時、たくさんペーパーアイテムを貰うけど捨てるに捨てられず心苦しくないですか……結婚式もペーパーレス推進しようぜ……)
 
◆お菓子 supported by 京菓子司 金谷正廣
真盛豆という苔玉や毬藻のようなお菓子を作られている金谷正廣さん。京都の定宿・むげんの近くで通りかかった(堀川下長者町というなかなか行かないエリアにあり、知らない人が多いのではなかろうか)。


その後、京都市京セラ美術館のカフェのお菓子を作られていることを知り、秋にむげんに泊まったときに店頭で「すみません、お菓子作ってもらうこととかできるんですか?」と軽く聞いたことからお菓子作りが始まった。
最初は2人の生い立ちと出会いをお伝えし、金谷さんが案を作ってくださり、その案を見て私がインスピレーションを受けてさらに提案し……というやりとりを繰り返した。やばい、めっちゃ楽しい! 私の頭の中の考えを汲み取って形にしてくださる。こんなのいつ振りやろう?
メールのやりとりを重ねた結果、できたお菓子がこちらです。

銘 エメ 製 金谷正廣

こちらから見たら水色が桃色を支え、あちらから見たら桃色が水色を支え、2つの力が合わさって、種から芽が出るようにこれから何かが生み出される。そんな予感や期待を織り込んだお菓子。
中にはパートナーの出身地である千葉県市川名産の梨、秋月のドライフルーツが練り込まれている。しっかり梨の味がして、初めての口当たり。
2020年12月20日にしか存在しない、唯一無二のお菓子。これぞ本物のお菓子作り! そうそう、こういうのやりたかった。
 
銘は最後まで悩みに悩み、万葉集や百人一首を参照してみたり考えあぐね、悶々と頭を抱えており……
 
挙式数日前、ふと脳内にフランスミュージカル版・ロミオとジュリエットの曲が流れた。

Aimer
Aimer c'est ce qu'y a d'plus beau
愛すること それはこの世で一番美しいこと
Aimer c'est monter si haut
愛すること それはこんなにも高くのぼること
Et toucher les ailes des oiseaux
そして 鳥のつばさに触れること

Aimer c'est voler le temps
愛すること それは時を奪うこと
Aimer c'est rester vivant
愛すること それは真に生きること
Et brûler au cœur d'un volcan
そして 熱く激しく胸を焦がすこと
Aimer c'est c'qu'il y a de plus grand
愛すること それはこの世で一番偉大なもの
Aimer c'est plus fort que tout
愛すること それはどんなものより強い
Donner le meilleur de nous
そして私たちの一番よいものを与えること
Aimer et sentir son cœur
愛すること そして心を感じること
Aimer pour avoir moins peur
怖れる心を和らげるために

Aimer c'est brûler ses nuits
愛すること それは彼(女)の夜を焦がすもの
Aimer c'est payer le prix
愛すること それは代価を払うこと
Et donner un sens à sa vie
そして 人生に意味を与えること

嗚呼、何度聞いても好き。自分たちをロミオとジュリエットに見立てるのは少し抵抗もあったけど(少年少女が恋に突っ走った感が否めない)、エメの曲は2人の結婚のシーンで使われてるし、青系と赤系の配色はモンタギュー家とキャピュレット家を想起させるし、良いかなと思って。
まさかエメが和菓子になるとは、シェイクスピアも小池修一郎も考えへんかったやろうな。ミュージカルキャストの皆さまに食べていただきたいくらい。

 
◆最後に
結婚式の朝、スマホのアラームを止めると4件のLINEの通知があった。驚くべきことに、訃報だった。東京で少し通っていたお茶のお稽古場の方がまだ40代なのにがんで亡くなった。実はこの1週間前にも別の方が心筋梗塞で倒れられ突然死していた。その人もまだ50代前半だった。
私はスマホの通知を全て切った。
 
人はいつ死ぬかわからない。明日死んでも後悔しないよう、昨日より今日が良い日になるよう、良く生きたい。1人でも良く生きることはできるけど、2人だとより良く生きることができる気がする。幸せが1日でも長く続くことを祈って。

≪終わり≫

……と見せかけて、結婚式の企画にあたり悩んだ思考回路を知りたい方はこちらへどうぞ。

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