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ちくちく言葉はちくちく言葉っていうマイルドな概念にしちゃダメだろっていう話

皆さんこんにちは、津島結武です。

今回は、ちくちく言葉についてお話していきたいと思います。
皆さんはちくちく言葉という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

ちくちく言葉とは、相手の心をちくちくと刺すような言葉で、教育現場では「バカ」「アホ」「死ね」といった暴言を指します。

さてここで皆さんこう思ったと思います。
「これ、侮辱罪や自殺教唆に抵触するんじゃね?」と。

というわけで今回は、ちくちく言葉と刑法について考えていきたいと思います。


ちくちく言葉と侮辱罪

まずは皆さん、侮辱罪をご存じでしょうか?
近年侮辱罪は人を自殺に追い込む犯罪として問題になっています。

侮辱罪(刑法231条)とは、具体的な事実の摘示をしないで、不特定または多数の人が見られる中で口頭や文書を問わず、他者を侮辱することを内容とする犯罪です。
この法律における「侮辱」とは、他人の人格を蔑視する価値判断を表示することをいいます。
たとえば、「バカ」や「アホ」といった言葉が侮辱に含まれます。
この時点で、人前でちくちく言葉を他人に投げかけることは犯罪になりうるということになります。

侮辱罪の簡単な歴史

この罪で有罪になると、「1年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」が科せられます。

ちなみに侮辱罪は最近改正され、厳罰化されました。
改正されたのは2022年6月13日であり(施行は同年7月7日)、それ以前の量刑は「拘留(30日未満)又は科料(1万円未満)」でした。
つまり、侮辱罪で有罪になっても、30日間捕まっているだけか、1万未満を払うだけで済まされていたんですね。

どうして人を自殺に追い込むほどの力をもつ犯罪がこの程度の量刑に収まっていたかというと、そもそも侮辱罪は制定されたのが1907年(明治40年)であり、2022年まで改正されたことがありませんでした。
つまり、2022年まで侮辱罪の量刑は、インターネットがなかった時代に作られた法律のまま放置されていたんです。
広場で他人に「バーカバーカ」と言うのと、インターネットで他人に誹謗中傷するのと量刑が変わらなかったんですね。

それで、さすがに明治時代の条文のままじゃいけないだろうと、2020年に発生した自殺事件も踏まえて改正されることになりました。

子どもでも侮辱罪は適用されるか?

では、子どもも誹謗中傷を行う、言い換えるとちくちく言葉を用いると侮辱罪が適用されてしあうのでしょうか?

ここについては法学者にでも聞かないと確かなことは言えないと思いますので、付け焼き刃の知識で言うんですが、子どもにも侮辱罪は適用されないと思います。
というのも、刑事責任が問われないからです。

まず、侮辱罪の定義は上述したとして、犯罪の定義は「刑罰法規に規定される、構成要件に該当する、違法で有責な行為」です。
要は、刑法に違反していて、正当性もなく、責任を問えるという3つが犯罪の成立条件なんです。
子どもの場合は、3つ目の有責性がありません。
より厳密にいうと、14歳未満の者の行為は罰されないことが刑法41条によって定められているんですね。

ただし、少年法によって、犯罪に該当する行為を犯した14歳未満の者は「触法少年」として処理される可能性があります。
触法少年は、犯罪行為が発見されると、児童相談所や家庭裁判所に通告・送致され、その後、児童自立支援施設や少年院に送致されることがあります。

ただ、結局子どものやる誹謗中傷はちくちく言葉と矮小化されるように、たかが知れています。
そのため、学校や家庭で教育するという形に留まるのが現実だと思いますね。
家庭裁判所で審判されることがあったとしても、どこかに送致されるようなことはないと思います。

名誉毀損罪

侮辱罪は「具体的な事実の摘示をしないで、不特定または多数の人が見られる中で口頭や文書を問わず、他者を侮辱すること」だから具体的な事実で侮辱すれば犯罪じゃないかというとそうではありません。
侮辱が具体的で事実だったとしても、それは名誉毀損罪(刑法第230条)になります

刑法第230条の条文によれば、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。

そのため、「Aは社会科のテストの点数が2点だったぞ~」と触れ回ると、それは名誉毀損罪に該当する行為になってしまいます。

ちくちく言葉と自殺教唆罪

ちくちく言葉には「死ね」も含まれます。
これは、自殺教唆罪(刑法第202条)を犯す行為に該当する可能性があります。
刑法第202条の条文には、「人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する」と規定されています。

教唆とは「他人をそそのかして犯罪実行の決意を起こさせること」です。
つまり自殺教唆とは、「自殺を決意していない者に自殺を決意させて自殺させること」を指します。

この罪には未遂罪も存在し、被害者が教唆されて自殺未遂で済んだとしても、自殺教唆罪は成立します
逆に言うと、自殺行為が行われなければ自殺教唆罪は成立しないことになりますので、「死ね」などと言うだけでは自殺教唆罪は成立しないようです。

自殺教唆罪が成立するかどうかを考えるには、実行行為性もあるかどうかが問われます。
実行行為性とは、犯罪が成立するために必要な行為が、その結果を引き起こす現実的な危険性を有するかどうかを判断する基準です。
つまり、自殺教唆罪における実行行為性とは、被害者が自由な意思決定により自殺を決意する危険性があるかどうかです。
それじゃあ自殺教唆罪の実行行為性はどうやって判断するねんっていうと、実際に自殺を実行してしまうかどうかになるんですが、実際は因果関係があるかどうかで考えることになりそうです。
つまり、明確に「死ね」と言ったから「死んだ」っていうふうにならないと自殺教唆罪は成立しません。
それこそ、遺書に「Bに『死ね』と言われたから死んでやったぜ」って書かれていないと実行行為性の立証は難しいでしょうな。

まとめ

今回の記事では、ちくちく言葉って呼ばれているものは、ちくちく言葉って言葉で片付けていいのかって話をしました。
結論は、「子どものうちは刑事責任は問われないけど、大人(14歳以上)になったら罪に問われちゃうからね」です。
大人になったらちくちく言葉で収めることができなくなるっていうことを子どものうちからきちんと教育していないと、ろくな大人にならないぞと警鐘を鳴らす記事でした。

いやほんとにね、世の中ろくでもない大人が多いです。
今思えば、犯罪ってどういうものがあるのか子どもの頃は教わらないですよね。
漠然と、「他人にされて嫌なことはしてはいけない」って言葉で片付けられているような気がします。
じゃあ他人にされても嫌じゃなければいいのかっていう話をすると、そんな屁理屈言ってないで常識的に考えろって反論が出てきちゃう。
いやその屁理屈を本気で思っている大人も結構いると思いますがな。

子どもに向かって「○○すると牢屋にぶち込まれるぞ」って言うのは倫理的にグレーって言われるでしょうけど、脅しでも何でもないので、別にいいんじゃないかと思っています。
むしろ何も教えずに将来平気で犯罪しちゃう大人になるのを見過ごすほうが非倫理的と思っているワシです。

というわけで、身近な子どもがちくちく言葉(実態は侮辱や自殺教唆)を言っているのを見たら、「それ大人になっても言っていたら捕まるよ」と注意してあげましょう。

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