『清く正しい危機管理講座③』プロフェッショナル編 困った家族を叩きのめす驚愕の精神科医療偏向報道!マスコミ関係者も必読!その詳細とからくりを押川流に徹底解説!

2019年4月6日(土)の東京新聞に、『医療保護入院「まるで誘拐」』と題する記事が大々的に掲載された。執筆した中澤佳子記者からは、俺のところにも取材依頼があったが、「医療保護入院のための移送」制度について純粋に考える意図が感じられなかったため、「現時点では、私はコメントする立場にありません」と回答した。そのやりとりについては、先日のnoteに詳細を書いた。

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このケースをもってして「移送の実態」というには、あまりに偏りがある

一読者として東京新聞の記事の所見を述べる前に、「精神障害者移送」に関する議論は1990年代から繰り返し行われてきた。当時、民間の移送会社による強制拘束移送は水面下で常態化しており、それを防ぐために、1999年の精神保健福祉法改正で、行政による移送制度「第34条(医療保護入院のための移送)」が制定された。

東京新聞の記事では、この「第34条」が機能していないことにも触れている。これに関しては、条文が制定された当初から、その対象は身寄りのない人や生活保護世帯に限定され、それすら民間の移送会社に委託されてきた。つまり最初から「行政による」とは名ばかりで、形骸化していたのである。今でも、行政には移送業務を担えるだけのノウハウもなければ人材も育っておらず、必要なだけの予算もついていない。大局的にみれば、地方分権をたてに見て見ぬ振りをしてきた厚労省の怠慢である。

中澤記者の記事は、その実態を飛び越えて、移送制度の担保となる「医療保護入院」自体の是非まで問うている。しかし、医療保護入院制度については、厚労省も「自らが病気であるという自覚を持てないときもある精神疾患では、入院して治療する必要がある場合に、本人に適切な治療を受けられるようにすることは、治療へのアクセスを保障する観点から重要」としている(2017年1月「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」より)。

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検討会の議事録なども合わせて読めば、識者たちが「患者さんの人権をどう護るか」と、「病識のない患者さんをどう医療につなげるか」の狭間で議論を繰り返しながら、「医療保護入院制度」を継続させていることが分かる。医療保護入院制度はつまり、「精神障害という病気のために認知機能が影響を受け、判断能力の低下を招いている患者の医療的利益」に関わる制度なのである。

これを踏まえて、記事中で「入り口」として上げている高橋さん(男性)の事件を見てみる。

医療保護入院は、精神疾患患者の医療的利益に関わる制度である以上、(入院前の)男性の病状がどのようなものだったのかが、非常に重要になってくる。しかしこの記事からは、そういった情報が得られない。あえて隠されているようにさえ思える。

たとえば東京新聞の記事には、

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