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映画とテレビの近未来

2年半ほど続けてきた「スクリーン」のコラムが最終回になりましたので感謝を込めて転載させてもらいます。
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最終回です。
『映画とテレビの近未来日記』と銘打っているので改めて映画とテレビの近未来について書こうと思います。

先日日比谷で久しぶりに映画をハシゴ。日本映画の「正欲」とイギリス映画の「哀れなるものたち」。そして思った-やっぱり映画はなくならない!

なぜか?それはスクリーンから「作りたい!」という制作者たちの声が聞こえるから。日本映画もハリウッドも同じ声だ。「この映画を作りたい!」という声がはっきりとスクリーンから聞こえる。

それは「この映画で儲けたい!」ではなくて「この映画で〇〇を表現したい!」という声だ。つまりは『作家性』。何かを伝えようという作り手たちがいて、それを受け止めようとする観客がいる。それは一本一本の映画で違う。僕が受け止めたい映画とあなたが受け止めたい映画は違う。でもそれぞれが渇望を持って受け止めたい映画が間違いなく世界のどこかで作られている。そのことが信じられる。だから映画は無くならない!

日本の映画観客数のピークは1958年。約11億人。日本中の人が毎月映画館に行っていたという数字だ。それが20年後にテレビの影響で減少し1億7千万になりその後50年間ずっと1億数千万人程度である。実はこの1億数千万人の観客数はメガヒット作品が目立つが“人それぞれが違う刺さる映画を見ている”の集積なのだと思っている。人それぞれが自分の人生にとってなくてはならない映画を持っているしこれからも出会うだろうと思っているから映画館に行く。だから映画はなくならない。Netflixやいろんなプラットフォームと共存の形にはなるだろうが映画館というものを残して映画産業はこの規模で続いていくと確信する。


果たしてテレビはどうだ?

日本でテレビが一番見られていたのは1998年。もう四半世紀前のことだ。そこからインターネットとスマホとYouTubeとNetflixの影響で個人視聴率で3/4まで落ちてきている。映画が20年で1/7になったことを考えると下がり方が少ない?ではそろそろ下げ止まる?とは残念ながら行かないしそう思っているテレビ関係者はかなりヤバい。下降曲線がここ数年で大きくなっていること。子供・ティーン・若年層は1998年に比べて半分または1/3になっていることを考えると今後加速して下がっていく。どこまで下がるのか?何をしたら下げ止まるのか?

ここで映画が下げ止まった理由が大切になる。

誰かにとって切実なほど必要だったテレビがあるだろうか?そんなテレビを作ってきただろうか?

ピークだった1998年頃からテレビは「みんな」を掬い取ることに特化し始めた。わかりやすく伝わりやすく誰が見てもどこから見ても入っていけるテレビを作ることが是となった。

それは今考えるとその後インターネットやスマホやYouTubeが出てくることを考えると進まなくてはならない真逆の方向だった。しかしビジネスが大切だったテレビは「みんながまあまあ面白い番組」を作り続け今では「似たような番組ばかりだね」と言われるようになった。もちろんいくつかのドラマやバラエティで“刺さる”ものがなかったわけではないがそれは視聴率という「みんなが見る指標」では高く出るものではなかった。

“暇つぶし”に特化した方が“みんな”を吸い込むのは適していると考えられた。しかしその暇つぶしが手のひらの中のS N Sやゲームに劇的に代わられた。

残念ながらこのままではテレビはこの後も下がり続ける。映画が下げ止まった1/7でも止まらないかもしれない。いや30年後テレビ100年の頃には「昔テレビというものがあってね」となっていてもおかしくない。だってYouTubeは今だって家にあるテレビモニターを占拠しているのだから。映画館という特別な空間を持たないテレビが“昔あったもの”になっても何も不思議ではないのだ。


僕が40年以上もいたテレビ局はどうなるのか?広告収入は視聴者数に比例して激減してそれに従って制作費も落ちていく。お先は真っ暗か?

しかし最後に敢えて言う!実はテレビの未来は明るい!

正確に言えばテレビ→テレビマンなのかもしれないが。
意欲的なドラマが今も生まれ続けNetflixでほぼ同時配信が始まっている。その中から「イカゲーム」が一本生まれれば世界はひっくり返るしそのポテンシャルは十分日本の制作者は持っている。さらにこれほど高いレベルのバラエティ番組を作ってきた国は日本以外にはない!それをまだ世界は発見していないだけだ。大リーグで今はこんなに日本選手が活躍しているがバラエティ番組の世界進出ということで言えば野茂英雄がドジャースに入った1995年の段階もまだ踏んでいないのだから。

だから日本の若きテレビ制作者よ!君が大谷翔平になって1000億を稼ぐプレイヤーになる未来は必ず来る!あ〜20年若かったら僕がなっていたのに!

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