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今ないものしか作らない

三河湾ネットワークで新番組「蒲郡今昔写真EXPLORER」が始まった。
じつは「こんな番組がやりたい!」と言った訳ではない。
「進め!豊田少年家族」をやっているひまわりテレビの堀井社長が三河湾ネットワークの社長でもあって「土屋さん、蒲郡でも一つ番組やってくれません?」と言われてから考えたものだ。

まず条件を考える。ケーブルテレビだから当然のことながら予算は少ない。30分番組でやっているひまわりテレビの半分。では15分番組。
ひまわりテレビほど社員数もいないので関われるスタッフの数が基本一人だけ。
ここに僕が新番組を作るときに決めていること「今ないものを作る」という条件を足す。

実は制約条件が「今ないものを作る」時に出発点になる。予算がない。人的リソースがない・・・・
じゃあ出演するタレントにカメラ持たせてそれで番組を作ってしまおう!
いっそのことディレクターも現場にいない番組が作れないか?
このコロナ禍の最中、打ち合わせで使いまくったZoomでそのタレントが撮った画面を東京に送ってそれを見ながらディレクションができるんじゃないか?
何をやるか?それは豊田市でやっている「今昔写真」の発展形“写真自体を探すところからロケで始める形”をいつかやりたかったからそれでどうだ?
こうして「蒲郡今昔写真EXPLORER」は僕の頭に中で組み上がっていった。
ちなみにEXPLORERは今僕が大好きな「BLUE GIANT EXPLORER」から頂いた。

『どうやって企画を考えるんですか?』とよく聞かれるので今回の番組企画を考える道筋をあらためて解説してみる。
1、断らない!「こういうのできませんか?」と言われたら即座に何も考えずに「できます!」と答える!
2、無理です!と言わない。条件を聞く。金がない。人がいない。そんな環境で番組を作ったことがない。だから「やらない」ではなく「やる!」
3、頭をグニュグニュに柔らかくする。テレビとはこういうものだ。番組とはこういうものだ。を全部取っ払わなくては「今までにない条件で」「今までにない番組は」作れない!
4、新しいテクノロジーに出逢ったら「いつか番組に使いたい!」と気に留めておく。今回はそれがZoom。
5、そんな条件を「今ないものを作る」という器に入れて攪拌する。熟成する。ひっくり返してみる。遠くから眺めてみる。
6、ある日ひょっこり新番組企画が降りてくる。

こうして「蒲郡今昔写真EXPLORER」は誕生した。

ここまで全く誰にも相談していない。僕一人の頭の中で展開されたものだ。
そして大詰めだ。
僕が何か新しい企画をやるときに技術的に相談をするEATの鴇田さんに
「こういう頭につけたカメラとタレントの一人が持ったカメラをZoomに突っ込んで東京でディレクターがそれを見て指示を出す。その指示はタレントの耳に入る。そんなことできますか?」
鴇田さんは即「できます!」そうこの返事が大切なのだ。このテンポがあるから企画が番組へと進む。
さてその東京のディレクターだ。心当たりに声をかける。蒲郡のケーブルテレビの番組だけど現地に行かない。こういうシステムで東京から演出をする。さらにはそのファイルを伝送で受け取って一人で放送まで完パケにする。
するとそのディレクターが「その指示を機械音声でやりたい!」と言ってくる。それは面白い!AIに指示されているみたいだ。いつか完全なAIでもやりたいね!
これで完成!

だからこの番組のスタッフはディレクター、総合演出、三河湾ネットワークのサポートメンバーの三人だけだ。テレビの裏側でよく出てくるADというのがいない。ディレクターが全部一人でやる。編集所もMA室にも入らない。だから超低予算の中に入る。そしてその中でやらなくてはならなかったから「今ない番組」が生まれた。

僕のここ数年の「今ないもの」の最高の自信作が「NO BORDER」だ

これは3Dスキャナーで当日のお客さんをスキャンしてスクリーンでキレきれの踊りを踊ってもらうという体験型イベントだ。
当時の大崎会長から「大阪に新しい劇場ができる。インバウンドを狙うから言葉を使わないもの。体験型のもの」その条件で考えた。
原型にあったのは空港のある金属探知機。あんな形で劇場に入る時に3Dスキャンできないか?
3DだアバターだVRだ、と色々言っているが正直これ以上の企画を見たことがない。そのくらい先進的だった。先進的すぎて理解されずに終わってしまった。

「進め!豊田少年家族」と同時に始まった「発掘バトル!どらヤバイ店に行ってみりん!」の最初の企画会議で『今ない番組じゃないとやらないから!そうじゃないなら僕は降りる!』と宣言してその時にいたスタッフ全員をドン引きさせた。

まあそんなことでいつまでこんなことをやっているのか?
でも次の面白発注を待っている!


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