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お天気カメラ

携帯の気象情報アプリで自宅周辺地域の天気予報を見ていると、近隣市のライブカメラがあることに気づいた。

そこは大阪の郊外で、遠景に生駒山が見え、以前の勤めていたビルから見える懐かしく慣れ親しんだ風景だった。

映像は、定点観測で1分毎の静止画像がコマ割りのフィルム形式で、昔の活動写真のようなカタカタとした動きで面白く、30分経つと新たな映像に切り替わるタイプだった。

暇な時間に見ては空の移り変わりも楽しく、特に急な天気の変化などはより時間の経過が気晴らしになった。

2013年の初秋、その年は台風が連続して接近し私の住む地域にも珍しく警報が出た。

ふと夜中に気になってライブカメラを見ると、強い雨粒が打ち付け強風で小刻みに揺れるカメラの映像がコマ送りのように動く。

まもなく、ビルの端から白い点が近づいて果物が高所から落ちて潰れるように画面を覆い、何か果物が潰れたような感じに見えた。

何かがぶつかった?

そのままでは小さすぎて見えず、アプリ画面下のボタンで拡大すると、スマートフォンの画面いっぱいに拡大された映像から白く発光した線がはっきりわかる年老いた男の姿が映っていた。

怒りながらわめき散らし、すごいスピードでカメラのレンズにぶつかり、文字通り【グシャっと潰れて】映って消え、すぐに、何度も何度も何度も何度も人がぶつかり、潰れる様子が再生される。

気味が悪くなり、夫に確認してもらった。夫は「何何?これどこの恐怖映像拾ってきたの?」と聞かれて、「いや、これ、お天気アプリのライブカメラなんだけど」と言ったら驚き、もう一度だけ、と確認したが、それ以降はサンドストームの画面に白い字で「調整中」と表示されで映らなくなってしまった。

あの後、
何度かライブカメラを確認したが、あの日以来、昼間は天気を映すが、夜になると調整中の文字が出る。

「何か怖い話ない?」

怪異好きの友人が興味を持ったので話したところ、暫く考えてから「それはおかしいよ」と説明を受けた。

「ライブカメラはそもそも小型のものが多い。時々お天気カメラでハトが画面一杯に映ることはあるけど、人の姿がぶつかるということは体長数センチの小さな人でないとあり得ないじゃないか」

では、あの画面に映った人は何だったのか?

あれ以来、定点観測のお天気カメラは以前とは違う場所を映している。

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