集計方法の変更報告遅れはどう伝えられたのか:毎月勤労統計

「毎月勤労統計、集計方式の変更公表せず 厚労省」というニュースがありました。2018年末に発覚した、調査サンプルの復元問題とは全く別の話です。まだあった、またあった。。。どこまでこの国は劣化しているのだろうか。今回は、内容はともかく、この内容をどう捉えるべきか、どう伝えられたのか、記事を比べて気が付いたことを書いてみます。

今回の指摘は、
・ボーナスなどの計上を別の月に行っていた
・2021年夏まで少なくとも15年以上にわたり行われていた
・2021年10月、地方自治体の指摘を受け、黙って変更
ということのようです。

昨年12月に発覚した「建設工事受注動態統計」の不正は2重計上でしたが、こちらは計上時期が違っていただけのようです。それでも修正を勝手に行い、公表しなかった。そして2018年末に発覚した大問題の後に行われた見直し等でも出てこなかったし、さらに黙って変更もやってしまった。その結果、少し上振れしていた可能性があるらしい。
(2018年発覚の統計不正問題は規模が大きく、「調査結果をもとに支払われる、雇用保険や労災保険。それが不正によってゆがめられたことで、10年以上にわたって本来より少なく支給されていました。総額は530億円余り。対象は延べおよそ2,000万人」、2000万人もの人が、失業保険などを受け取るべき額より少なく受け取っていた。)


いずれにしても、統計データは連続性が担保できないと全く意味がなくなってしまう場合もあるほど、その収集に関しては気を使うべきものです。集計や計上方法を変更するなど、決してやってはいけないことのはずです。


内容はここまでにして、これに対する椿広計委員長のコメントが、記事によって大きく異なる点が気になったので紹介します。

一番気になったのは時事通信。

画像1

厚労省は、国土交通省の建設工事受注動態統計で行われた二重計上には当たらないとしている。統計委の椿広計委員長も「不適切とは言えない」との見解を示した。

この部分だけ読むと、この問題は大したことがない、とまとめたい意思を感じてしまいます。しかし統計の専門家がこのような発言をするとは思えず、別の記事を探しました。

NHKです。

画像2

締めくくりは、

しかし、こうした事実を公表せず、統計委員会にも報告していなかったことから、厚生労働省は、26日の委員会で「統計の利用者に対する配慮が足りず、反省している」と陳謝しました。
統計委員会の椿広計委員長は、記者団に対し「変更した時に報告せず、報告が遅れたのは問題だ。遅れて提出されたデータの扱いについても、統計委員会で議論していく必要がある」と述べました。

これならば統計の専門家の発言として納得できます。最終的な結論は内容を確認してからだ、というニュアンスなのだと思います。

続いて日経も紹介します。

画像3

最後の方で、

厚労省は国土交通省による建設工事受注動態統計の不正問題を受け、総務省に対応を相談し、統計委に事後報告した。統計委の椿広計委員長は会合後、記者団に「報告が遅れたのは問題だった」と指摘した。「相談機能が働き、自主的に出てきたのは評価している」とも述べた。


実際の発言がどのようなものだったのかわかりませんが、記事から、
・変更した時に報告せず、報告が遅れたのは問題
・建設工事受注動態統計の問題を受け、自主的に出てきたことは評価
・データは統計委員会で継続して議論していく
という意味のことを言ったのだと思います。
そしてもしかしたら、内容的には計上時期のずれだけなので、2重計上ほどは大きな問題ではない、くらいは言ったのかも知れません。

そして、椿広計委員長の発言を伝えている部分だけでも、これほどニュアンスが変わってしまうのが記事なのだ、伝聞には注意が必要だと改めて実感しました。