データサイエンスの前に、開示側のデータリテラシーが不可欠

データを扱ってきた立場からすると、今の「データサイエンス」や「デジタル化」推進で行われていることは、全く理解できません。デジタル化の前に、正確なデータが存在し、情報が正しく管理されずに何ができると思っているのか。。。それを実感することができる、内容も新型コロナに関する講演を聞いたので、紹介してみることにします。

講演はこちら:2022/6/3

   基調講演・対談 国立情報学研究所オープンハウス2022

注目したいのは、永井良三氏の基調講演です。講演は映像の52分から約33分。基調講演が終わった後のNII(国立情報学研究所)の喜連川所長との対談も、興味深いものでした。(喜連川所長はもうすぐ退任されるとのことで、言いたいことを言っている感じでした)

素晴らしいと思った理由は、データを大事にすることを主張されていることです。そして自治医科大学長、本医師会COVID-19有識者会議 議長で、さらに最近は、新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議(内閣府)の座長もされ、結構影響力をお持ちの方です。そして市中の無症状者のPCR検査実施に尽力され、分析もされたようです。

講演内容概要:
・平成9年以降、保健所数が激減。今回感染症関係すべて保健所
・日本の新型コロナに関する論文発表が少ない。専門家に情報が渡らない。
・研究費も少ない
・感染症対策において医療関係者は、消防団のようなもの
・タイムリーに対応するには情報が大事
・2020年の感染症に対する認識が間違っていた、少なくとも変わってきた
・感染状況によって対策は変わるはず
・状況を把握するには、無症状者のPCR検査が必要
・内閣府で予算をつけてくれた
・モニタリング状況のデータは出てくるが、古いデータが消されてしまう
・データサイエンスの前のデータリテラシーの問題だ
・無症状者のPCR陽性率と陽性者数は相関が高い
・無症状PCR検査と陽性者数を出しているのは東京都と静岡県だけ
・無症状者に対する陽性率は、抗原検査はPCRの半分以下
・Fortuna、統治者は知識、支配者は無知
・今はデータ駆動型の対策が必要(つまりデータに基づき判断すべき)
こんな内容でした。(病院内デジタル化に関する話題もありましたが割愛)

とにかく検査しよう、データを集めよう、専門家の知恵も借りるべくデータをわかりやすく公開しよう。こんな思いが伝わってきました。


関連情報:

日本医師会COVID-19有識者会議
議長、2つ論文あり。

画像1

https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/6570
https://www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp/topic/6954
積極的に無症状者の検査をしようと内閣府を動かし、無症状者のPCR陽性率と、市中感染には相関がることを示しました。無症状PCRがモニタリングに利用できると結論しています。今回のNIIの講演でも、ここで示された資料の一部が使われています。

新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議
座長
2か月ほどで、これまでのコロナ対策のまとめをする会議。すでにいろいろな視点での分析(反省)が述べられています。今回のNIIの講演では、この内容をデータを扱う立場の人たちに紹介した、とのようです。

データ開示側のリテラシー
以前、「データ開示側がデータを大事にしているか 」でも紹介しましたが、注目したいのはデータが、
  ・合理的なフォーマットで
  ・正確な数字が定義と出展と共に
  ・漏れなく
  ・定期的に
  ・常に同じ場所で

公開されているか、です。

今回の新型コロナ関係の情報開示では、これら5項目が1つも達成されていないのではないでしょうか。