見出し画像

船で行けない国には、もう一生行けない。

21歳のとき、はじめて新幹線でパニックになった。

"この空間から自分の意思で出ることができない"という現実に耐えられなくなって、トイレに駆け込んだあの時が、僕に取っては人生で一番死ぬかと思った瞬間だ。

動悸とか発汗とか身体的症状ひどくなるというよりかは、ただ純然たる「耐えられなさ」に襲われる感覚で、苦しいとかじゃなくて(もちろん苦しいんだけど)ただただ耐えられない感覚。
例えるなら、酸素じゃなくて肺を取られたような。

専門的には「広場恐怖」と言って、逃げ出したり、自由になれないと感じる場面で不安が極端に高まるらしい。

まさに僕はその症状が顕著に現れるタイプで、新幹線とか飛行機とか、自分の意思で出られない状況に置かれるとパニックになる。

でも、船みたいに外気にさらされていたらなぜか平気で(自由を感じるから?)、人によっては新幹線のドアの隙間から流れるわずかな外気に手を当てて心を落ち着かせるといったこともあるらしい。

だから僕は、もうずっと、飛行機にはもちろん、各駅間の長い新幹線には絶対に乗らないようにしている。

多分死ぬまでそうするつもりだ。

みんなあんまり意識していないけど、乗り物は許諾を得た監禁だと思う。
あんなちっぽけなシートに座ったまま、せいぜい数メートルしか動けない環境で「よし!」と言われるまで何時間も拘束されている。

飛行機で窓の開け閉めが自由なら話は別だけど、例えファーストクラスでも超頑丈な多重構造に変わりはなく、風にそよられながらメロンソーダのストロー咥えてフライトを堪能できるなんてことはない。

なんというか、心と体が自由を欲するせいで、逆にすごく不自由だ。
東京に行くには青春18切符みたいなので鈍行列車に乗る必要があるし、出張には一世一代の覚悟が必要だし、旅行に行くとなったときも、飛行機でしか行けない国ははじめに選択肢から外れてしまう。

まあだけど、幸運にも内勤の仕事をしているので、今のところ支障があるとすればアナザースカイを見ると少し憂鬱になるくらいだ。
ロサンゼルスにマドリード、ヴェネチアにニューヨーク。船で行くには、ちょっとハードルが高そうな気がする。

先日の田中みな実の回も、とてもキラキラしていて羨ましかった。

船で行けない国には、もう一生行けない。というのは少し残念ではあるけれど、でもまあ、鈍行列車に乗って東京に行くのは、結構楽しい。
(あとは港から歩け!自分!!)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?