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好きが溢れる悪夢の入り口

これは絶対に行こうと決めていたので、覚悟を決めて行ってきました。
ヒグチユウコ展!

細かな線で描かれる不気味で不思議で美しく繊細でちょっとカワイイイラストは、きっと多くの方がどこかで見たことのあるものだろう。
質も量も圧倒的で、展示の仕方も凝っていて、しばらくうなされそうなレベルでよかった。

イラストの原画は、印刷とは違う発色、存在感が素晴らしく、修正されている箇所や汚れなど、未加工具合も生々しかったし、とにかく物量がとんでもなくて、作者の脳内を垣間見える趣向が興味深かった。

展示の一部は風景として撮影もできた


イラストしかないんだろうな…くらいの気持ちでいたら、立体造形が意外と多く、こちらも非常に見どころぞろい。
特に印象的だったのは、ランプシェードを被ったトルソーが並ぶ部屋。
(こんなに動き出しそうなトルソーは初めてみた)
内臓が見えているぬいぐるみの、グロテスクとカワイイの絶妙な配合具合もクセになる。
(ビーズの縫い付けられている大腸のぬいぐるみなんて初めてみた)


最初はビビったがあまりにもオシャレ…!
こけし?の行列 後ろのデザインも見どころ
和室もある
背面の虎は刺繍になっている
ショッキングなものも不思議と不快ではない


「サーカス」のテーマに沿った世界観の展示がユニークで、のぞき穴的なものや、隠し絵、パタパタアニメーションなど、「こんなところにも!」と見つけながら歩くのも楽しい。

絵本のイラストや表紙、挿絵はもとより、映画のポスターやGUCCI、ブリューゲル、柳田邦夫といったコラボの守備範囲の広さにも舌を巻く。
恐ろしいものも、ヒグチユウコのフィルターにかかると妙にオシャレで美しく、切なくなるマジック。

最後の、作画工程の動画も衝撃的だった。
下絵とかはほぼなく、少しずつ鉛筆で線を描きながら水彩で塗って仕上げていくスタイルで、あっちこっちとほとんど無作為に行き来して、いつのまにか画面が埋まっていた。
(どうりでどこから描いてるかわらかないわけだ)

本当に、好きなものを好きなように好きなだけ描いてる感じが伝わって、その途方もないエネルギーに圧倒されてしまった。
(呼吸をするように描くとはこのことか…)


正直、最初にみたときは「なんだこれは?」くらいにしかおもわなかったのだけど、どうにも心惹かれて見るうちにどんどん気になって…かろうじてかわいいかもしれない…キレイだな…といつの間にかどっぷり深みにハマってしまっていた。
ちょうど、カビとかある種の菌の動きを、恐ろしく不気味なのについつい眺めてしまう心境に似ているかもしれない。
(あれもあれで妙な美しさがある)

デジタル全盛の時代ではあるけども、こういう手仕事の価値や存在感は寧ろ高まっていくんじゃないだろうか。
あまりにもハイセンスで悪夢的な素晴らしさは、今思い出してもため息がでる。


なお、この悪夢、入口はあるが出口は見当たらない。
しばらく帰ってこれなさそうだ。望むところではあるけども。

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