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農業日誌を進化させて、農業経営に活かす! #会計から見る農業の経営分析

畑会の山田です!
前回は「労働時間の見える化」の重要性をお話しました。
今回は実際に数値を入力するにあたり大事なポイントを話してみたいと思います。

何を入力すべきか

この点について、農業日誌のように日々の記入が必要かと思います。
農業日誌の項目にもよりますが、ここでは数値に関わることに絞って話をします。

主に数字化するものとして大事な部門は
① 生産
② 労働工数
③ 会計

の3つの点です。

①は生産に関する数字で、生産計画、圃場管理、肥料や農薬使用などの管理のために記録します。
②労働工数は、作業に対してのどれだけ時間が要したかを記録し、業務の工程の改善や労働生産性の向上のため記録します。
③会計は、売上、経費、利益をはじめとして、農地、設備、在庫などの資産や負債、税金に関する数字などを記録します。

どれだけの記入をしているかは農家によって変化はありますが、少なくとも③の会計の売上や経費、利益の部分に関してはすべての人が記載しています。
それに①と②を付け加え、③をより精度の高い数値管理をすることで農業経営を向上することが可能になります。

数字管理のジレンマをどう乗り越えるか

すべての数字が明確になることは、経営判断する上ではとてもよいことです。
しかし、すべての数字を記入し管理することは現実的ではありません。
特に少量多品種栽培の農家にとっては、それぞれの品目に関わる数字を記録することは、気が遠くなる作業です。ただでさえ、生産作業で疲れている中、数字の記入、分析をする余裕はあまりありません。
とはいえ、数字を記入しておかなければ、農業経営の改善もできず、効率が悪いままで悪循環になってしまうこともあり、ジレンマを抱えてしまいます。
このジレンマをどう考えるべきか。
いろんな考え方がありますが、「KGI」「KPI」という有名な経営用語を使って考えてみたいと思います。
横文字を見て「うわっ」と思うかもしれませんが、言葉は忘れても結構です。
あくまで考え方を知ってもらえれば大丈夫です。

KGIとは、Key Goal Indicatorの略で、「経営目標達成指標」という意味です。
いわゆる目標とする数字です。
 
先ほどの部門ごとで考えるならば、
① 生産 → 生産量、良品率、味(数値化できるもの)
② 労働工数 → 労働生産性
③ 会計 → 利益

となります。①②③をまとめるならば、③の利益が最終的なゴールです。

次に
KPIとは、Key Performance Indicatorの略称で、「重要業績評価指数」という意味です。
いわゆる、目標とする数字(KGI)に最も影響のある数字ということです。

このKPIについては、一概に決まっているわけではなく、それぞれの農家によって違ってきます。
例えば、生産量をあげるために最も重要なものが、土づくりなのか、適切な播種なのか、農業資材なのか、肥料なのか、農薬の使用なのかは、農家によって違いがあると思います。
特に生産においては、変数が多く、重要なのは当然一つだけではありません。優先順位を決め、2,3の項目があればよいと思います。

労働生産性に関しても、ボトルネックになっているものを見つけて、そこだけ注力してみればいいと思います。生産性を下げているボトルネックが、草取りなのか、調整作業なのか、配達なのか、収穫作業なのか、最初はすべての時間を記入する必要はありますが、最も課題のある生産工程に注目します。改善されたら、また別の数値を見て改善することの繰り返しになります。
ちなみに、この考え方のおすすめの本として、エリヤフ・ゴールドラット氏の『ザ・ゴール~企業の究極の目的は何か~』があります。生産工程管理の本で、物語形式の小説で読みやすく、実践的で感動した名著です。もしよろしければ一読してみてください。(評価503件中☆4.5)
https://amzn.to/3hVEtX1

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エリヤフ・ゴールドラット氏の『ザ・ゴール~企業の究極の目的は何か~』

会計でいえば、主要な生産物の売上や伸びそうな品目に絞ってもよいかと思います。
また会計において生産量はあまり重要ではなく、どれだけ売れて、どれだけ売れなかったかの数値が大事になります。それを表すには、比率という相対的な数値が大事になります。
それは今までも話をしてきました「利益率」についてです。主要な品目がどれだけ売れて、どれだけ売れ残ったのか、どれだけコストがかかったのか、記入して割合を把握しておくことです。そうすることで、利益率の高い品目を増やし、無駄な品目を減らします。

以上が「KGI」と「KPI」の説明でした。
経営用語を使うと少し小難しい話になりますが、ひらたく言うと
目的の数値とその数値に影響のある数値を見極め、その部分だけを数値管理する
ということになります。
経営の話をする場合は、結構使われる言葉ですので、この言葉を聞いたときは思い出してもらえればと思います。

どのツールで数値を記入し管理するか

では次に、どのツールがいいかを考えてみたいと思います。
今までの話も踏まえて考えると
・農業経営全体の数値が管理できること
・入力作業に極力負担がかからない
・数値をしっかりデータ分析ができること

以上のような要件が満たせるツールであれば、よいかと思います。
農業日誌アプリを使っている人は、答えはでていますが、改めて考えてみたいと思います。

まず手書きのノート。ノートは、入力が手書きでデータにならないため分析ができないこと。
また記入はメモ程度の入力は負担が少ないですが詳細や長文の情報だと負担が大きくなります。
次にPCでの入力管理。PCはデータのため分析が容易ですし、入力自体もタイピングが慣れれば手書きよりも早くなります。
しかし、入力は事務所に戻ってからの入力になるため、現場の情報の漏れやミスが起こりやすいという難点があります。

その二つのツールの課題をカバーできるようになったのが、スマホです。
その場でデータを簡単に入力でき、クラウド上(PC上にも)残るため、分析もできます。
ただ厳密にいえば、雨、風、泥などがある中で、すぐにスマホの操作ができるわけではなく、手を拭くなどの手間やタイムロスあるため、少し課題が残ります。
スマートスピーカーなど機能も付加されましたが、まだ課題が残ります。
とはいえ、それらを差し引いても、現時点ではスマホが圧倒的なツールであることは間違いありません。

次に農業アプリについてです。
農業日誌アプリを使って数値を入力することが、現時点では最適解だと思っています。
沢山の農業日誌アプリがありますが、ここでは3つみ提示します。
アグリハブ、アグリオン、アグリノートです。
こちらの説明に関しては、私がよく参考にさせていただいている農業系Youtuberの松本直之さんの動画で、アグリハブ、アグリオン、アグリノートの3つの特徴を分かりやすく教えてくれていますので、そちらをご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=XCju-tyK8O4

農業アプリ

あと、農業アプリを使う上で補足する点があるとしたら
それは、会計ソフトの連携をどうするかという点があります。
会計ソフトとしては、「Freee」や「ソリマチ」などが有名ですね。

農業日誌アプリは、先ほど話した①農業生産や②労働工数の部分が多く
③の会計の部分はあまり強くなく、あるとすれば販売管理になります。
ここで、
農業日誌アプリと会計ソフトの間に隔たりが生まれているので、うまく連携できることによって、農業経営の分析が向上することになります。
その連携をうまく助けるのが、CSVという表計算形式のデータです。

農業日誌アプリから、CSV形式でデータを出力し、そのデータを会計ソフトに挿入することが可能になります。
農家によっては、販売の情報を手書きで書いて、改めて会計ソフトに入力するところもあり、それだとミスが多く、二度手間になっているのでおススメしていません。
数値に関わることは、すべて一度スマホから入力をしてデータとして会計ソフトやPCに取り込むことをおススメしています。
細かな話については、それぞれ違うるため説明はできませんが、個別相談していただければそれなりにお答えできるかと思います。

あと最後に補足ですが
さきほど否定した手書きノートとPCですが、場合によっては価値があります。
ノートのメリットは、思考の整理や、アイデアを生み出すためにも非常に有効的なツールです。私個人も考えるときはA4用紙の紙を用意して、ひたすら手書きしており、現時点では、電子系のツールよりも仕事がはかどります。

PCのメリットは、やはり分析になります。
スマホのアプリでも十分できますが、アプリだと決まった切り口の分析しかできないので、新しい視点から分析する場合は、表計算ソフトを使っていろんな視点から情報を切り取り分析することでいろんな発見があると思います。
その点も個別相談がありましたら、お答えしたいと思います。
以上のように、それぞれのツールの特徴を把握しながら使い分けることをおススメです。

今回の話は以上です!
もし農業日誌アプリなどで記録をしていなければ、今回を機に使ってみてはいかがでしょうか?より意思決定のしやすい農業経営ができるようになると思います。

次回以降は、話を最初の方に再び戻して、農業簿記についての話をしてみたいと思います。
大変だと思いますが、ぜひついてきて下さい^^

【自己紹介】
非農家でありながら、東京の八王子で農業系サービス事業を展開。
専門分野は都市農業の経営、都市部での小さな農、コミュニティ農業、農のある生活、キャリア視点から見る農などで幅広く農業を語っています。

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 https://tokyo-c-farm.com/
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ZOOMによる講座を中心として
東京八王子を中心に現場での農業体験も行っています。

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