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「山中カメラ現代音頭集 Shall we BON-DANCE?」福岡未来編~美術館音頭の誕生

皆さんこんにちは。
現代音頭作曲家の山中カメラです。

ついに最終回となりました「山中カメラ現代音頭集 Shall we BON-DANCE?」。
ここまでご覧いただきまして、ありがとうございます。
各地の皆様のおかげで、こうして私は現代音頭作曲家として制作をしております。その一端を少しでも感じていただけたでしょうか。

それでは最終回!

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シリーズ「山中カメラ現代音頭集 Shall we BON-DANCE?」
福岡未来編~美術館音頭の誕生

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2015年5月30日、前日から続いていた意識が遠退きそうな腹部の激痛で別府の国立病院に緊急入院をした。開腹手術ギリギリのタイミングで、1日遅かったら命にかかわるところであったのが不幸中の幸いだった。
血管の疾患で、体中の毛細血管、特に内蔵、胃腸管が出血する厄介な病気であった。
退院しても症状は続き1年間はほぼ寝たきり、食事も激痛のため1日3本の栄養剤しか飲めない生活が続き、体重も激減。
本当に「このまま死んでしまうのだなあ」と思っていた。
しかし、親しい友人からの励まし、過去に音頭を作った各土地からのお見舞いのお陰で徐々に生きる気力を取り戻していった。

退院してちょうど1年ほどたった2016年の7月末、福岡県にある福岡市美術館の学芸員、正路さんから電話があった。
「福岡市美術館がリニューアル工事の為、8月いっぱいで閉館する。その時の閉館イベントで踊る音頭を作ってもらいたい」という依頼だった。
やっと固形物が食べれるようになって体重も少し戻っていた時期ではあったが、体調は相変わらずで(当時は対処療法である西洋薬をやめ、東洋医学での治療を模索していた時期で、1週間3万円の自費購入の漢方薬/西洋薬を飲んでいた。)体調に自身が持てなかったので一度は依頼を断った。
しかし、正路さんの情熱に負け、依頼を承諾し、恐る恐る真夏の福岡に向かった。

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結果的にはとても良い選択だった。
大都会福岡の活気と「仕事が出来ている」という実感が1年間全く忘れていた「生きる、そして音頭を作る」というプロセス、そして喜びを思い出させてくれた。

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閉館のイベントなので、音頭の主語を美術館、美術館で働く方々に決めた。
学芸員やボランティアの方々に取材をし、福岡市美術館ならではの物事を歌詞に落とし込んでいった。

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音楽はすごく悩んだのだが、福岡市美術館が建っている大濠公園はかつて黒田藩の福岡城があった場所なので、福岡の民謡である「黒田節」のメロディーを引用している。
また、当時福岡市美術館では「ゴジラ展」が開催されており、私も公開中だった「シン・ゴジラ」を映画館に観に行き、大変興奮して帰って来た。
劇中でゴジラが東京を焼き尽くすシーンで流れる鷺巣詩郎の音楽がすごく印象に残ったので、ピアノを弾きながら曲を分析してみると、スタンダードの「白い恋人達」と同じコード進行(転調しながらのⅡ→Ⅴ進行の連続)であった。
開館当初から美術館で働くボランティアさんの話で「開館当時は美術館内の喫茶店をお見合いに使う方が多く見られた」という逸話と「白い恋人達」が私の中で合致し、偶然にも黒田節のメロディーと違和感なく調和した。
よってこの音頭のサビ部分は
・美術館存在以前の「黒田節」
・美術館開館当初の「白い恋人達」
・美術館閉館時の「ゴジラ」
が同時に存在している。

振り付けは福岡市美術館が世界に誇る名画、彫刻のコレクションのポーズの中から引用した。(写真はマティスの「ジャズ イカルス」)

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そして、学芸員の皆さんを呼び出して、歌と合いの手を録音させてもらい福岡市美術館音頭が完成したのだった。
聞き所はリードボーカル、中山副館長(現:館長)の超美声です。

そしてこの時、思いもよらない再会があった。
2006年、私が初めて音頭を作曲した取手アートプロジェクト2006に当時学生でインターンとして参加していた長津結一郎君が大変出世なさって九州大学の助教として福岡に赴任して来ていたのだった。2006年の「取手マルトノ音頭」の音源同様に、長津先生が演奏しているピアノ演奏も聞き所の一つです。

短い製作期間の為、粗い部分は残っているが、中山副館長(現:館長)の歌唱力も合わせて大変良い音頭になった。いつかまた美術館で、フルオーケストラで演奏出来れば良いなあと思っている。

それでは2016年8月31日の世界初演の模様と合わせてお聞きいただこう。
「福岡市美術館音頭」

舞台、会場装飾は美術家の加藤笑平が担当。
写真撮影:山中慎太郎。
※今回出版されるCDブック作品集にはこの2016年録音の2018年リマスター版を収録しております。

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2006年、ひょんなことからから音頭制作を始めて、今年で14年も経ってしまいました!
困難や大変な事もたくさんあったが、今、続けてこれて良かったと思っています。

先月2020年2月27日に発売されました私の作品集「山中カメラ現代音頭集 Shall we BON-DANCE?」ではこの連載の内容をさらに掘り下げて、制作秘話や歌詞・楽譜・振付、そして各地の現代音頭の音源を収録しております。
ぜひぜひ、お買い求めいただけますと幸いです。

好評発売中!豪華付録付CDブック仕様!
「山中カメラ現代音頭集 Shall we BON-DANCE?」(タバブックス)

これからも日本で世界で、健康で、皆様にたくさん楽しんでもらえる良い現代音頭を作れるよう精進します。各地でお会いしましょう!


現代音頭作曲家
山中カメラ

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