詩:足首、もしくは母趾球


静かにすいこまれていくように

固く冷たくなっていく日常においては

水底に深く沈んで溜まっていく澱みをすくい取ることが大切で

なぜならそれはそれだけが生きて動く言葉になるから

微細な雨粒が顔中にはりついて

光たちが柔らかくその動きをうねらせ

街の全ては例外なくその姿をさらけ出すことになる


人はうなだれ

足元ばかり見つめ

細やかな日常の出来事に思い巡らせ

男たちの尻や腿はすっかりしなびて重そうで

早く走る事や高く跳ぶ事に焦がれた季節を

とうの昔に忘れてしまったようで


細く光るナイロン糸のような雨と

ぬるく浅い海で何に遭遇するわけでもなく

足元から腐っていくような日常の中で

軽薄さが欲しい

時代の歪な波長にあてられても

平気な顔で笑っていられるくらいの


それなのにあの白いシュウズは淫らに汚れ

そこからは野生的な足首が伸び

尖りながら駆動を支配する足に血はめぐり

硬くふくれあがるふくろはぎに蒼く浮き上がる


母趾球

熱を帯びろ

疼きながらアスファルトを蹴れ

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