詩:きらきらひかるいなびかり

人のいない部屋
亡霊のような埃たち
真夏日の
白昼夢のような高校野球
金属音が切り裂いて
遠のいていく

ぬるい午後
湿った風
べたつく汗
埃っぽい車の排気ガス
あんなに無邪気に
手のひらをくすぐった夏草も
乾きはじめて色が褪せていく
すりぬけていくように消える私の夏

思い出す
何かを思い出す
果てのない海
突き抜けるミントの辛さ
宇宙の心臓が縮んでから
膨らむまでのわずかな間
生まれた命と
消えた命の均衡をはかる

落雷の余韻が
夕方の空気に充満して
暗い部屋の中
スマホの光だけが
意識のそこにしみこんで消えた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?