きたろうさんとブルースブラザーズ

本日はバイトがお休みで外は小雨である。こんな日は刺激をそんなに欲していない。
労働日にやりそびれていた家事を済ませる。バイト先へ向かう多摩モノレール車中で、そういえばきたろうさんが「僕、(家は)多摩の方だから」と言っていたことを思い出していた。もう10年以上ご無沙汰している。最近、きたろうさんは元気にしてらっしゃるのだろうか?

近況を確認すべく、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」公式Youtube動画 大竹紳士交遊録コーナー、水曜レギュラーゲスト・きたろう回 きたろう氏が見つけた面白い本『世界のふしぎな色の名前(城一夫)』をプレゼン! (14:59)を拝聴することにした。※PodcastQRに放送アーカイブスあり

メインパーソナリティ 大竹まことさん、パートナー 壇蜜さん、紳士交友録コメンテーター きたろうさん、3人のおしゃべりが始まる。
「何かわいいTシャツ着てるの~?」と、きたろうさんが壇蜜さんにいじられ半分で褒められている。ラジオ収録現場に〝鬼たちが地獄巡りをしている図がプリントされたTシャツ〟を着用して行ったようだ。「かわいいだろ?」と自慢げなきたろうさんに、「かわいい~」をくり返す壇蜜さん。そこには入っていかない大竹さん。Tシャツの鬼の絵は地獄絵巻日本画系かファンシー系か、いったいどんなテイストなんだろうか? みうらじゅんさんのカテゴライズでいうと、いやげ物的な(もらっても全然うれしくない土産物=いやげ物)?? しかし、きたろうさんは自分で購入した模様。見えないラジオの歯がゆさが余計に笑いをそそる。
そのTシャツを買ったという別府のワニ園に昨年行った話を、きたろうさんが大竹さんと壇蜜さんに話し始める。ご存知のように、きたろうさんは声を張らない。多くの芸人みたいに面白い話するでぇ! というモードの前のめりなしゃべり方とは真逆、聞き取れないほどではないが、大きくない少しくぐもった声で抑揚も控えめなミニマルミュージックに近いおしゃべりをされる。その声に耳をすませてしまう。しばらく聞いていると、ちょっと変な話をミックスしている。

私は妙縁でシティボーイズのきたろうさんと、何度か公演後の飲み会、普段の日のお茶、一度は遠出、をご一緒させてもらったことがある。きたろうさんとのおしゃべりが一番盛り上がった時はなんであんなに笑ったのだろう。

ある夜、下北沢にある洞窟のような店での4人呑みの席、日本テレビ「踊る!さんま御殿!!」のアンケートは回答するのが毎回なかなか大変なのだそうで、「友達と一緒に出る回に、誰と出るか考えなきゃいけないんだよ」きたろうさんがぽろりと話し始めた。きたろうさんは当時よくさんま御殿に出演されていた。「ばばさん、出る?」ときたろうさんが突如、私に矛先を向ける。基本的にきたろうさんとお話するときは、主に拝聴側に回って、たまに僭越ながら感想を述べるという感じだったので、虚を突かれた。「知名度的に無理ですし、友達じゃないですし」と私は言った。「ひどいなぁ。お腹大きいとき、俺ばばさんのお腹触ったし、今もこうやって会ってるんだから友達でしょう」私が失礼なのか。よくわからないが、きたろうさんは全く偉ぶらないフラットな人なのだ。話はここで終わるかと思いきや、さらに「ばばさんを友達として出すには」とプランを練る流れになっていく。酒の席のありえない話とわかっていながら、少し浮かれて耳を傾けていると、きたろうさんの冷静な大人の部分で、〝売れてないイラストレーターではキャラが弱い〟と、痛いところも突かれた。
真顔でひとこと、「ばばさんは、おなべっぽいところがある」。私は既に子持ちであったし、というか人の性別に関する発言はLGBT的にはNGかもしれなかったが。きたろうさんは常に否定的な意味でものを言うようなことがなく、基本ポジティブで愉快、たまに哲学的思考回路で会話する方だ。おなべ発言もきっと下げる意図も上げる意図もないのである。それをわかっているので、私は過去に言われたことがない初指摘ではあったが、そのまま話についていくことにした。

ばばさんはもろもろをおなべな感じにしていったほうが良い、という急流に飲まれ、私は「じゃあ、どうすればいいでしょうか?」ときたろうさんに具体的なポイントを聞いた。「ちょっとおしゃれしてるでしょう、ダメだね。まず服装を変えなきゃ」と厳しい。「たいしてやれてないですけども…」そう答えたが、多くはないきたろうさんとの呑みの機会ということで、一張羅のドリスヴァンノッテンの青いカットソーを着て来ていた。滅多にスカートを履かないので、その日も下は黒かグレーのパンツだったと思う。
「私がおなべ化するとしたら、一体どんな服装ですかね?」と聞くと、「スーツだね」ときたろうさん。「というと、ブルースブラザーズみたいな?」と私。「そう、あの方向」きたろうさんはうなづく。みんなが、それぞれの頭の中で、ブルースブラザーズの上下黒のスーツとネクタイと黒いサングラスを私に被せて、笑った。「ジャケットなしで、サスペンダーってのもアリですよね」私は加速した。笑いの峠がきた。
なくなったお酒に気づき、お代わりをオーダーする。私はアルコール全般が飲めないので、氷が溶けて薄まったグレープフルーツジュースを飲み干し、何か別のジュースを頼んだ。「まぁ(ばばさんの)息子が嫌がるか」急に常識人に戻って、きたろうさんが言った。

御殿の出演は単なる妄想トークで終わった。懐かしいなぁ。きたろうさんはとても素敵な大人だ。
余談になるが、私はブルースブラザーズを1秒も見たことがない。コメディが苦手で、どうも見る気にならず、今後も見ない予定だ。適当な方が面白いことってある。「シティボーイズは完璧を目指さない」ときたろうさんは言っていた。気がする。


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